現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
42 巻
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
論文
  • 太田 亘
    2020 年 42 巻 p. 1-35
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/15
    [早期公開] 公開日: 2020/04/24
    ジャーナル フリー

    証券市場において大口投資家は,流動性および価格発見に影響を与える.大口投資家が発注するとき,他の投資家および私的情報を保有する情報投資家も同じタイミングで発注することで,売買が活発になり,価格発見が行われてボラティリティが高くなる,という集中仮説,および大口投資家がしばらく発注しないと予想されるとき,情報投資家が発注することで価格発見が行われてボラティリティが高くなる,という締切仮説が考えられる.本稿では,日本銀行を大口投資家として,REIT購入前後の取引について,公表情報を用い,2つの仮説を検証した.分析結果は2つの仮説と整合的であるとともに,大口投資家が発注するとき流動性が向上し,しばらく発注しないと予想されるとき流動性が低下することがわかった.大口投資家の発注は,他の投資家の戦略的行動を通じて,発注時のみならず非発注時にも流動性および価格発見に影響を与えている.

  • 山田 徹, 後藤 晋吾
    2020 年 42 巻 p. 37-69
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/15
    [早期公開] 公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー

    財務データベースにある全ての項目を用いて財務シグナルを生成するデータマイニング法を用いて,現行の日本株ファクターモデルの説明力を検証し,今後のモデル改良への示唆を得た.検証対象は主にFama–Frenchファクターモデル群とした.収益性ファクターと低投資ファクターを含む新しいファクターモデルは,これらを含まない3ファクターモデルに比べて財務シグナルのポートフォリオ・リターンをより良く説明する.しかし,ブートストラップ法による検定により,偶然(偽発見)の可能性を勘案した後でも現行のファクターモデルでは十分に説明できないアノマリーがあることがわかった.これら頑健なアノマリーの中には,企業の無形資産投資や経営者の内生的な意思決定を強く反映すると解釈できる財務シグナルが複数見つかった.これらは今後のファクターモデルが織り込んで発展していくべき方向を示唆していると考えられる.

  • 瀬之口 潤輔, 小畑 崇弘, 酒本 隆太, 倉橋 節也
    2020 年 42 巻 p. 71-89
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    計量モデルを用いた株価予測は多くの研究者や実務家によって行われているが,計量モデルによる株価予測が可能かについては依然として結論は出ていない.予測変数が持つ長期的な情報と短期的な情報がそれぞれ株価に反映される可能性があること,株価と多くの予測変数の関係は単純な線形ではないことなどにより,株式市場の構造をモデル化することが困難であることが理由として挙げられる.本研究では,このような株式市場の複雑な構造を捉えるために,多重解像度解析により複数の要因で異なる周波数特性の変化を抽出したものを説明変数とし,非線形非連続な関係を表現できるxgboostをモデル作成手法として株価予想モデルを作成し,比較的高い予想精度が示されることを確認した.また株価予想モデルが株式市場の局面変化に合わせて変化している様子を示すことにより,大局的な株式市場の構造変化を認識することも可能にした.

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