本論文は,フロンティア費用関数という手法を利用して,わが国の銀行業の非効率性を推計している.先行研究と比べて本論文はTFAとDFAという比較的新しい推計方法を採用して,推計結果を比較しているという特徴をもつ.分析対象は1989~1996年度の都銀・地銀•第二地銀である.本論文の結論は以下のように要約される.
①TFAとDFAの非効率性の水準はほぼ等しく,順位にも正の相関関係が観察された.ただし,外部指標や計量経済学の理論との整合性を検討すると,TFAの方が優れていると考えられる.
②先行研究と同様に,規模の経済性が観察されたが,Scale Inefficiencyは期待された符号を取らなかった.
③範囲の経済性について考察すると,フィー・ビジネスでは観察されず,その一方でフロー・ビジネスについては観察期間の前半で範囲の不経済性が,観察期間の後半では範囲の経済性が観察された.
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