現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
20 巻
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
論文
  • Nai-Fu Chen, 小林 孝雄, 佐井 りさ
    2006 年 20 巻 p. 3-36
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    近年のフィナンシャル・イノベーションは,貸出債権を市場に売却することを可能にした.これによって,銀行は貸出債権の大部分を広範な投資家層に移転し,情報レントと信用リスクを凝縮したレジデュアル部分だけを保有すればよくなった.

    われわれの試算によれば,商業用貸出債権ポートフォリオを証券化するにあたって,銀行が留保するべきレジデュアル・トランシェはわずか3%前後である.これこそが,市場の論理から決定される銀行の自己資本比率である.この仕組みに加えて,決済システムの安全性を確保できれば,銀行システムは従米の金融仲介機能を果たしながら,完全に安全なシステムに生まれ変わることができる.

    かつてIrving Fisherが主張した「100%マネー」の銀行システムは,新しいフィナンシャル・テクノロジーの登場によってその実現可能性を飛躍的に高めた.この新体系は,預金保険の利用に起因する銀行行動のモラル・ハザードに苛まれ続け,しばしば危機に晒されてきた従来の部分リザーブ型銀行システムより明らかに優れている.

  • 董 晶輝, 飯原 慶雄
    2006 年 20 巻 p. 37-49
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    この論文では,原資産の価格に対して一定率の配当がある場合について,通常のアメリカン・オプションのコールとプットに対応する永久イスラエリ・オプションの価格について分析し,売り手と買い手の権利行使限界が満たすべき条件を求める.さらに,無リスク金利と配当利回りの大小が権利行使領域の性質と関係があることを明らかにする.これらの性質は原資産に対する利子・配当の支払いがない場合,有限期間のイスラエリ・オプションの売り手の権利行使領域がプットとコールで非対称的であることを理解するのに役立つ.解析的分析の結果を明示するために,数値例でオプション価格を求めるとともに,権利行使領域と各種のパラメータの関係を示す.最後に,イスラエリ・オプションのモデルのコーポレート・ファイナンスヘの応用例を示す.

  • 嘉本 慎介
    2006 年 20 巻 p. 51-68
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は,ライバル企業の潜在的な影響を考慮したリアルオプション・モデルを応用し,不完全競争のもと,先発の優位性が不確実性下における市場参入の意思決定に与える影響を分析する.本稿のモデルでは,二企業がそれぞれ先発と後発になる逐次参入と二企業による同時参入が均衡として生じる.逐次参入において,先発の優位性が企業間の市場参入の競争を激化させ,市場参入が先発の優位性がない場合より早くなる.そして,市場参入から短期間のうちに,高い確率で市場参入の価値が投資費用を下回るリスクに直面する.また,先発の優位性をめぐる市場参入の競争によって,非効率な同時参入が均衡として生じる.そして,非効率な同時参入において,市場参入から短期間のうちに,高い確率で市場参入の価値が投資費用を下回るリスクに直面する.本稿の結果は,先発の優位性が参入企業にもたらすリスクを示唆する.

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