現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
45 巻
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
論文
  • 夷藤 翔, 牧本 直樹
    2022 年 45 巻 p. 1-29
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,近年金融分野で注目される非対称tコピュラと他の代表的な多変量コピュラである正規コピュラ,tコピュラを用いて,コピュラの違いがテイルリスクを考慮した最適資産配分に与える影響について研究する.分析対象は実務の資産配分で重要な債券,クレジット,株式,不動産(REIT)とし,(1) コピュラの違いがCVaR制約付き期待収益率最大化問題やCVaR最小化問題の最適投資比率に与える影響,(2) コピュラ毎のCVaR最小化ポートフォリオのパフォーマンスに関する特徴を考察する.分析結果から,正規コピュラやtコピュラはAIC規準で選択された非対称tコピュラに対して,分布の裾での分散投資効果を大きく評価,CVaRを小さく評価し,相対的にハイリスクな株式等の最適投資比率を高めることを示した.また,債券,クレジット,株式,不動産(REIT)の4資産での実証分析の結果,非対称tコピュラを用いた場合の下方リスク対比のソルティノ・レシオやカルマ―・レシオでのパフォーマンスが,正規コピュラや tコピュラに比べ改善することが示された.

  • 伊藤 昌哉, 金 瑢晋
    2022 年 45 巻 p. 31-58
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/05/31
    [早期公開] 公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    本研究は,J-REITにおけるスポンサーの定義の曖昧さを解消するために,メインスポンサーとサブスポンサーの定義を明確にしたうえで,2001年から2019年の間にIPOを行った79社の日本の不動産投資法人に対するIPO時点のスポンサーの追加出資(IPO時の親引け)に注目し,当該スポンサーがIPO時の過小値付けとIPO後の企業価値にどのような役割を果たすかについて分析を行った.まず,過小値付けに関しては,IPO時のスポンサーの追加出資と過小値付けに正の関係があること,過小値付けがIPO後の公募増資を早めることがわかり,概ねシグナリング仮説を支持し,過小値付けの程度が大きい一般事業会社のIPOとは異なる結果が得られた.不動産投資法人と投資家との間の情報の非対称性が限定的になるIPO後の企業価値に関しては,IPO時のスポンサーの追加出資はIPO直後3年間の企業価値と正の関係があり,スポンサーと投資家間の利益相反問題を軽減する役割を果たしていることが確認された.以上を踏まえると,J-REITのIPO時におけるスポンサーの追加出資は,IPO時には不動産投資法人の質の差別化を図るシグナリング手段としての役割を,IPO後には,オーナー経営者であるスポンサーと投資家との利害を一致させるコミットメントとしての役割を担うという,二重の役割を果たしていることを示唆する.

  • 金 鉉玉, 藤谷 涼佑
    2022 年 45 巻 p. 59-87
    発行日: 2022/05/31
    公開日: 2022/05/31
    [早期公開] 公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,長期負債の返済のタイミングにおける雇用水準の変化を分析することで,企業が資金調達を目的として雇用水準を変化させるのかを検証する.2000年度から2018年度までの45,630企業/年を用いた分析の結果,長期負債の返済と雇用水準の変化は負の関係にあることがわかった.具体的には,次期に長期負債の返済を迎える企業はそうでない企業と比較して,当期の雇用水準が減少しているもしくはその増加が抑制されていることが確認された.このような傾向は,財務情報の質が高いほど,また銀行企業間関係が強いほど弱くなることも確認された.さらに,長期負債の返済と雇用水準との間の負の関係に財務情報の質が与える影響は,銀行企業間関係が弱い企業で強くなることも明らかになった.これらの発見は,代替的な資金調達のコストが高い企業ほど,雇用水準を変化させることで資金調達を行う傾向にあるという仮説と整合する.そして,この資金調達を目的とした雇用水準の変化に与える影響という点において,財務情報の質と銀行企業間関係とが代替的な関係にあることを示唆している.

feedback
Top