宝石学会(日本)講演会要旨
平成19年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 若槻 雅男
    セッションID: S1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    ダイヤモンドと石墨(またの名を黒鉛)は共に100パーセントの炭素(正確に言えば単体としての炭素)で出来た固体である。これまでに解っているダイヤモンド合成法には、超高圧・高温下に溶媒(金属)を介在させて石墨をダイヤモンドに変換する溶媒法、爆薬を使った衝撃加圧法、メタンなどの炭素を遊離してダイヤモンドとして沈積させる気相法がある。原理的に理解しやすく、技術的にも容易なものは溶媒法である。
    人類最初のダイヤモンド合成は1955年米国GE社が実現し、それは溶媒法であった。GEは合成の原理や方法を数年間伏せた後1959年に溶媒の正体を、続く1960年に超高圧高温装置(ベルト型)を、論文として公表した。それ以後わが国を含む多くの国で研究開発が始められたようである。GEの公表は、講演者が東芝に就職した翌年に当る。また「中央研究所ブーム」といわれた当時の企業の旺盛な研究開発意欲のほか、上司の興味や関連会社の事業展開方針、瓢箪から駒のような偶然にも押されて、ダイヤモンド合成の黎明期からその開発に立ち会う幸運(?)を得た。
    東芝におけるダイヤモンド合成も溶媒法であり、その成功は1962年に発表し、本邦初演、少なくも発表はわが国で最初のものであった。しかし当時東芝以上に本気で注力していた企業も勿論あった。ともあれ当時は超高圧高温装置にせよ溶媒の性質やダイヤモンド生成機構にせよ、全てが新しい概念と技術であった。米国で発達した近代的な超高圧あるいは超高圧高温技術を取り入れた研究室が東大物性研究所に発足したのも1962年である。例えばベルト装置の形状は論文に描かれた図面からデッドコピーするにしても設計パラメターがどうなのかわからないし、プレス(油圧機)への取り付けや精度調整の方法と実現させるべき精度の許容限界はわからない。発生圧力を検定する圧力校正の原理は1950年頃からBridgmanの論文から判ってはいたが、それに使う検圧素子(ビスマス、タリウム、バリウムの細線)はどうやって作ればよいのか。素子から取り出す電気信号のどのような状態が検定圧への到達に対応しているのか。装置に内蔵するヒーターに加熱電流を供給する時、発生温度がふらついたり振動したりしないようにする方法は何か。原理的には解っていてもノウハウは無く、指導もアドバイスもどこへ行っても受けられず、一つ一つ手探りで積み上げて行く状態であった。
    ベルト型超高圧装置と、溶媒になると判った元素はすべてGEが特許として押さえていた。GEが合成法の正体(溶媒)やベルト装置を4年間も伏せた理由は特許の網を完全にするためという穿った見方もあるほどである。今でこそこれらの基本特許は切れ、新たな開発がし易くなったのかも知れないが、当時はGEの特許を回避した技術や方法、新しい溶媒の探索などが課せられた。 浅学で不器用な技術者たちが経験した研究開発には裏話として表には出ない話題も多い。当学会の要請により、そういう話題をまじえながら黎明期におけるダイヤモンド合成研究開発の事情を解説する。
  • 森 孝仁, 奥田 薫
    セッションID: 2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    面積678,330平方キロメートル(日本の1.8倍)、人口約52,000千人のミャンマー連邦(The Union of Myanmar)は、宝石の産出国として世界でも類を見ない国です。
    西洋・東洋において、それぞれ最も人気のあるといわれるルビー・ジェイダイトの最高品質は、いずれもミャンマーで産出されます。両者の生成には、全く異なる地質条件が必要であり、それを満たす土壌が同じ国内に共存するということは、大変不思議なことです。また、ミャンマーでは、それ以外にも、ブルーサファイア、レッドスピネル、ペリドット、アイオライト、ジルコン、アクアマリン、シリマナイト、カイヤナイト、ブルーアパタイト、イエローダンビュライト等、様々な宝石が産出し、いずれも品質の高いものが見られます。また、宝石質のダイヤモンドもわずかに産出します。それぞれの宝石の簡単な特徴について紹介するとともに、このような多種の宝石を産出するミャンマーの土壌に関して、ミャンマー現地に宝石研究所を有する当社が得た情報を報告します。
    また、同研究所では、過去5年間に持ち込まれた全てのルビーについて、採掘された地域、外観特徴、拡大検査、可視分光吸収および成分分析のデータを蓄積しています。今回、今まで得られたデータを整理することで、ミャンマー産ルビーの特徴を明らかに、他の産地におけるルビーとの判別方法について報告します。
  • ウィジェセカラ チャンダナ
    セッションID: 3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    2007年3月1日から3月16日までの間16日間、スリランカ産ギウダの分類と特徴、そしてその他の宝石の産地情報を収集する目的で、スリランカの宝石鉱山を訪問した。宝石の島と呼ばれるスリランカでは、コランダムの他に数多くの宝石類が産出する。ギウダと言えばまず浮かび上がってくるのはスリランカである。35年程前、砂利として現地の庭園などに敷き詰められていたギウダだが、熱処理技術の発達によって価値のあるものとなってきた。
    一般的にギウダは白濁もしくは乳白色のコランダムとして知られているが、現地ではもっと細かく分類されている。透過光での見え方、外観特徴、そして熱処理に対する反応によって、(1)シルキーギウダ、(2)ミルキーギウダ、(3)ディーゼルギウダ、(4)オットゥ ギウダ、(5)スモーキーギウダ、の5種類に分けられているのである。ギウダの分類そして他の産地情報を加えて報告する。
  • 林 政彦, 民谷 晴亮, 小松 睦美, 堤 貞夫, 山崎 淳司
    セッションID: 4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    アメシストを加熱することによりシトリンの色調に変化させることはよく知られている。そこで、次の4つの産地の天然アメシストと1つの合成アメシストをそれぞれ加熱実験し、色調の変化を追ってみた。
    (1)ブラジル、リオ・グランデ産:Iai, Rio Grande do Sul, Brazil
    (2)ウルグアイ産:North Cantera mine, Artigas, Uruguay
    (3)メキシコ産:Ras Begas mine, Mexico
    (4)ロシア製合成アメシスト:Synthetic amethyst, Russian Academy
    これら加熱実験結果から、ブラジルのリオ・グランデ産、ウルグアイ産及び合成アメシストは、420~450度で脱色し、その後に黄色あるいは黄褐色のシトリン(黄水晶)の色調を呈するようになった。
    今回の加熱実験結果で着目すべき点は、メキシコ産アメシストについては、脱色はするがその後の色調の変化は見られず、最終的に白色(不透明な無色)になったことである。
    以上の結果をふまえて、加熱によるアメシストのシトリンへの変化について、CL像の観察・化学分析・IR吸収スペクトル測定などを行った結果から、次のような結論を得た。
    ・カラーセンターによって生じた可視領域の吸収(550nm付近)が、420~500度の加熱によって消滅した結果、紫色は消失した。
    ・黄色に変化するというのは、分光特性において可視部から紫外部にかけて徐々に吸収が大きくなることを示している。
    ・黄色に変化しないものは、カラーセンターによって生じた可視領域の吸収(550nm付近)が、加熱によって消滅した後、さらに加熱温度を上昇しつづけても、その他の吸収の変化が可視領域になかったことを示している。
    ・アメシストを加熱することによりシトリンの色調に変化させるには、H2O分子の存在と450~500度という温度が必要である。
  • 藤田 直也
    セッションID: 5
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    最近分析する機会のあった石について報告する。
    ・サンセットクォーツについて
    2006年に新しく発見されたサンセットクォーツについてはGIAが発表したとおりである。今回サンセットクォーツのサンプルを入手したので紹介する。
    ・チャイニーズアマゾナイトとロシアンアマゾナイトについて
    最近チャイニーズアマゾナイトと呼ばれる石が市場に出回るようになった。主にアクセサリーストーンとして出回っているため、ただ外観がアマゾナイトに似ているということからつけられた名前なのであろう。今回はそのチャイニーズアマゾナイトと呼ばれる石がどのような石なのか、分析した結果を報告する。また、ロシアンアマゾナイトと呼ばれる石についても同様に分析した結果を報告する。
    ・ブルーサファイアに類似したキュービックジルコニアについて
    今年に入って、ブルーサファイアに類似したキュービックジルコニアが数点、鑑別依頼で入ってきた。それらの石を分析した結果、分光性に共通した特徴的な吸収がみられた。
    その他の分析結果とあわせて報告する。
  • 江森 健太郎
    セッションID: 6
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    ベリリウム(Be)拡散加熱処理を行ったブルーサファイアの鑑別については、昨年度の宝石学会で発表したとおりである。しかし、LA-ICP-MSを用いた最近の研究で天然でもベリリウムを含むインクルージョンを持つものの存在が明らかになっている。
    今回の発表では、そういったベリリウムを含むインクルージョンを持つブルーサファイアや、元々ベリリウムを微量元素として含むブルーサファイアについて観察、分析を行った。本研究で用いたベリリウムを含むインクルージョンを持つブルーサファイアは、カンチャナブリ産のラウンドミックスカットされた0.321ctのもので、ガードル部分に近いところにベリリウム(Be)を含むインクルージョンが発見された。このインクルージョンは結晶内部のものであったので切断し、京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室鉱物学研究室の走査型電子顕微鏡「S-3000H(HITACHI)」とエネルギー分散型X線検出装置「EMAX-7000(HORIBA)」を使用して、分析した結果、モナザイト(Monazite)であることが判明した。Monaziteは主成分としてベリリウム(Be)は含まないが、微量成分(Be)として、ベリリウムが検出されている。
    天然非加熱の状態でベリリウムを微量元素として含むブルーサファイアはマダガスカル産のサファイア原石である。この原石をLA-ICP-MSで分析した結果、ベリリウムは検出されるが、ベリリウムの濃度は0.5ppmより低い値を示す。
    以上の結果等を踏まえ、鑑別に際する注意点などをまとめる。
  • 阿依 アヒマディ, 小林 泰介, 北脇 裕士, 岡野 誠
    セッションID: 7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年、スリランカ、タンザニア、マダガスカルなどから産出された紫、赤、青色味を帯びたターフェアイト(Mg3Al8BeO16)とマスグラバイト((Mg, Fe, Zn)Al6BeO12)はレアストーンとしてコレクターの人気を集めている。両者は同じ鉱物グループ(MAGNESIO TAAFFEITE)に属する宝石であり、化学組成や結晶構造や宝石学的な特性値は酷似しているため、標準的な鑑別方法では判別が不可能で、粉末回折X線分析、EMPAによる正確な定量分析、ラマン分光分析などのような先端的な分析法が必要である(Schmetzer et al, 2000; 2005 a,b; 2006; Kiefert and Schmetzer, 1998)。
    しかし、粉末回折X線法は破壊検査であるため宝石鑑別としては理想的な手段とは言えない。ラマン分光分析検査は非破壊で両者を識別する有効な方法となるが、結晶度の程度によって結晶構造に応じたラマン分光を捉えない場合がある。EDXRFによる半定量分析から2価の元素(Mg,Ca,Mn,Fe,Zn)と3価の元素(Al,Ti,V,Cr,Ga)比を求めて比較することにより両者の識別が可能であるが、軽元素による誤差が生じるので、精度の高い分析が要求される。
    岩石学や鉱物学の分野においては、組織を詳細に観察するためには、粉末X線回折法が最も有利な手段として利用されている。EDXRF装置は主に蛍光X線分析法を用いているが、単結晶である宝石鉱物を分析する際には、ある結晶面や領域の回折条件に満足した回折X線が出現する。入射X線に対して試料を360°回転できる特殊試料ステージと傾斜ステージを取り込み、この制御ステージを駆動し、注目する宝石を回折条件に合わせることによって結晶方位を得ることも可能となる。
    本研究では、X線回折法を行えるように特殊試料ステージを搭載し、六方晶系であるターフェアイトと三方晶系であるマスグラバイトの異なる結晶面の回折X線の反射を、試料ステージのある一定の回転角度によってより短時間で制御できることが分かる。試料ターフェアイトとマスグラバイトの{0001}面を入射X線に対して垂直にセッティングし(傾斜角度τ=0°)、θ軸をそれぞれ0°,60°回転したときに、異なるエネルギー値に以下のような結晶面の回折X線が得られ、両者を容易に区別することができる。
    0°位置の場合;ターフェアイトの{4030}
    0°位置の場合;マスグラバイトの{4067}、{4070}、{4073}、{4076}
    60°位置の場合;ターフェアイトの{1114}、{1116}、{1118}
    60°位置の場合;マスグラバイトの{1130}、{1133}、{1136}、{1139}
  • 北脇 裕士, 阿依 アヒマディ
    セッションID: 8
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    1990年代に入って、高温高圧法による合成ダイヤモンドが宝石市場に流通するようになった。これらのほとんどは2ct以下の黄色のIbタイプであるが、一部はHPHT処理によりIaタイプの緑黄色にされている。また、少量ではあるがIIaタイプのカラレス、IIbタイプのブルーも存在する。最近では照射と熱処理によりピンク~レッドもしくはパープルにされたものもある。
    従来、宝石用に合成されるダイヤモンドは主にロシアの技術を用いたものであったが、近年はアメリカのGemesis社がロシアの技術を独自に改良した方法でイエロー・ダイヤモンドを量産しており、Chatham社はロシアと異なった技術で製造されたピンク、ブルー、イエロー等を販売している。また、合成ダイヤモンドに付加価値を期待した新たな販売戦略が現れ、遺灰や髪の毛からの合成を謳った販売者が複数存在している。
    さらに最近ではメレサイズの合成イエロー・ダイヤモンドが加工された宝飾品に混入しており、鑑別を煩わせている。
    高温高圧法による合成ダイヤモンドは金属溶媒を用いることから、天然とは異なった晶癖を有している。また、溶媒金属を内包物として含有することがあり、天然との識別の根拠となる。
    一般鑑別においては、内包物、紫外線蛍光、カラー・ゾーニング、歪み複屈折の観察が重要である。
    ラボラトリーの技術においては以下の手法が有効である。
    _丸1_FTIRによる分光分析
    窒素の含有量と存在の仕方を知るのが鑑別上重要な指針となる。GAAJラボではすべてのグレーディング対象石の赤外分光を測定している。特別に設計されたサンプル台上でのモニター測定で1石あたり数秒の短時間で検査を行うことが可能である。また、セッティングされたメレダイヤモンドであっても赤外顕微鏡にて正確に分析を行うことができる。
    _丸2_紫外-可視領域分光分析
    合成イエローにはしばしば天然には見られないNi-N関連の吸収が認められることがある。
    _丸3_EDXRFによる元素分析
    Fe、Ni、Coなどの金属フラックスを検出できることがある。GAAJラボではモニターで分析位置を確認し、0.05mmの局所分析を行うことができる。
    _丸4_カソード・ルミネセンス法(CL)による観察
    CL法は結晶成長履歴の相違から天然と合成の識別に極めて有効である。DTC製のダイヤモンド・ビューは操作性に優れているが、蛍光像のイメージはCL法が優れている。天然ダイヤモンドのCL像には種々のものがあり、個体識別にさえ応用できる。合成ダイヤモンドはセクター・ゾーニングが明瞭で、熟練したオペレーターにとっては結晶原石の形態が容易に想像できる。
    _丸5_フォト・ルミネセンス(PL)分析
    PL分析においてある種の金属フラックスや天然特有の蛍光ピークを捉えることができる。
  • 神田 久生
    セッションID: 9
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、カソードルミネッセンスの奇妙な模様を紹介する。
    カソードルミネッセンスとは、試料に電子線を照射したときに発生する発光のことで、テレビのブラウン管がその例である。結晶の種類によって発光が異なるが、同じ結晶でも不純物など欠陥の種類によって発光の色が異なる。ダイヤモンドでも青、緑、黄色、赤など多彩な発光が観察されている。
    実際のダイヤモンド結晶の断面のカソードルミネッセンス像を観察すると、いろいろな模様がみられる。その模様は、成長過程やその後の環境における変動により、不純物など欠陥の分布に不均一が生じるために生じたものである。その模様からダイヤモンドの履歴を知るヒントが得られる。
    その模様の中でよく知られているのは、成長縞とよばれる木の年輪のような模様である。
    結晶が成長中に温度など成長環境が時間的に変動するために不純物の混入が変動することで不純物の分布が不均一になる。それがカソードルミネッセンス像において縞模様として観察される。このような仕組みで縞模様が発生するわけであるから、この縞模様は、結晶の外形が成長や溶解を繰り返しながら、時々刻々どのように変わっていったかを示す指標となる。
    いままで多くの結晶についてこのような縞模様が観察され、数多くの報告が行われている。その模様を見ると、結晶が、核発生した後、全方向に相似的な形態を保って成長したものもある。また、初期に立方体であったがその後八面体に変わっていったもの、成長中に樹枝状の突起の発生がみられるもの、など報告がある。
    今回、いくつかの結晶を観察したところ、ルミネッセンス像の模様が結晶外形を反映すると考えるには不自然な例があった。その例を紹介する。
    観察した試料は、2 mm程度のダイヤモンド原石を研磨した、その断面である。観察装置は、走査型電子顕微鏡に分光装置が接続されたものである。電子顕微鏡の電子銃から発生した電子線( 20 kV, 50 mA )を試料に照射し、発生した光を分光器を通して、特定の波長の発光強度分布を観察した。
    断面のルミネッセンス像を観察したとき、木の年輪のように縞模様が結晶表面に平行に見られる場合が多く、その場合、結晶は同じ形を保ったまま成長していった、と理解できる。このように単純に理解できない次のような例がみられた。
    1)年輪に相当する筋が櫛型になっている場合: この筋が、成長中のある時期の結晶外形を示しているとすれば、それは深い溝をもつ奇妙な形を考えねばならない。
    2)矩形の模様が見られる場合: 断面の一部に矩形が独立してみられた。この矩形がある時期の結晶の外形であったとすれば、この結晶が成長中に他の結晶に取り込まれたと考えねばならない。多核での成長ということになる。
  • 勝亦 徹, 狩野 夢美, 中山 千栄子, 相沢 宏明, 小室 修二
    セッションID: 10
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    サファイア、スピネル、ガーネット結晶を育成する際に、TiやCrなどの遷移金属イオンや希土類金属イオンを添加することにより、蛍光を発する結晶を得ることができる。これらの結晶は、蛍光強度や蛍光寿命が温度によって変化するため、蛍光を用いた温度計(蛍光温度計)のセンサとして使用できる。
    集光加熱型の帯域溶融法(FZ)を用いて、Cr添加ガーネット(YAG)、Cr添加スピネル、Ti添加サファイア、希土類元素を添加したガーネット(YAG)などの結晶育成を行った。得られた結晶を切断研磨し、蛍光測定試料とした。作製した結晶試料を用いて、励起・発光スペクトルの測定、蛍光スペクトルの温度変化の測定を行った。
    Cr添加YAGおよびCr添加スピネルは、波長700nm付近に複数のピークを持つ発光が、Ti添加サファイアは、波長725nm付近にピークを持つ発光が観察された。希土類添加YAGでは、Euは波長590から709 nmの範囲に、Erは波長540から559 nmの範囲に、Tbは波長491から617 nmの範囲に、Prは波長555から636 nmの範囲にそれぞれ発光ピークが見られた。試料温度の上昇とともに発光ピーク強度が低下する現象“温度消光”が観察できた。これらの評価結果から、発光ピーク強度やピーク強度比の温度変化を利用して温度計測が可能であることがわかった。
  • 渥美 郁男, 矢崎 純子
    セッションID: 11
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    現在、市場に出回っている中国産の淡水養殖真珠は、その色調、テリ(光沢)の多様性に特徴があるが、それを逆手に取った様々な処理も存在する。なかでも染料による着色処理が施された真珠は真珠表面を拡大し、それを観察する人の経験に頼った官能検査で看破しているのが現状である。しかし近年、真珠にバフ研磨等が行われるようになりそれらの痕跡がはっきりと確認できない場合や、また明らかに外観や色調に違和感を持ちつつも着色の痕跡すら発見できないこともある。そこで官能検査を補う為の一つの方法として真珠の分光反射率に改めて注目した。今回はこれらの中でバイオレット系淡水養殖真珠に的をしぼり、ヒレイケチョウ貝等の貝殻および未着色、染料による着色処理の各資料の分光反射率を体系的に比較し判別の線引きを模索する。
  • 森 真奈美, 田中 美帆
    セッションID: 12
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    白色光を反射と透過の干渉色に分けるフィルターがダイクロイック・ミラーであり、真珠層にも同種の性質があることが最近判明した。
    本研究はアコヤガイ、シロチョウガイ、クロチョウガイ等の貝殻真珠層から薄片を作りそのダイクロイック・ミラー効果を確認した。次にその反射、透過の干渉色がそれぞれ反対になる数種の薄片を選び出し、その結晶層の厚さをSEMで測定、多層膜干渉式から算出された色と実際に観察された色との相関性を確認した。
    なお市販されている真珠箔(合成マイカパール顔料)をガラス板等に塗布し、それらのダイクロイック・ミラー効果も観察した。
  • 小松 泰子, 矢崎 純子
    セッションID: 13
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    中国産淡水真珠(ヒレイケチョウガイ産出真珠)の一部に“メタリック”と称されている極めて「てり」の強い真珠がある。この現象については真珠層のSEM分析により、結晶層が0.2ミクロン前後という一般の真珠層の1/2程度の厚さに起因することが最近明らかにされている。
    本研究ではこれらの真珠の成因を解明するための第一歩として、次のような貝殻真珠層の結晶層分析を行い、その成因との関連を考究した。
    _丸1_貝殻真珠層の部位と結晶層厚さの関連性について
    _丸2_結晶層の厚さと成長との関連性について
    なお海水産のマベについてもその貝殻真珠層について同種の分析を試み、淡水産との関連性を比較検討した。
  • 吹田 眞輝江, 小松 博
    セッションID: 14
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    ピース貝の外套膜外面上皮細胞の分泌機能特性は、移植後の真珠袋に並び変わった後も維持されることは、1969年和田浩爾氏によりアコヤガイの黄色色素分泌で実証されている。
    本研究は3種の色素(緑褐色、黄褐色、赤褐色)を持つクロチョウガイの場合、その分泌機能の遺伝的特性がどのように維持されるのかを検討した。
  • 原口 義信, 小松 博
    セッションID: 15
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/06/01
    会議録・要旨集 フリー
    アコヤガイの体内細胞とイオン交換を利用し、有機系有色元素化合物を直接アコヤガイ体内に注入することによって異色真珠を得る方法を述べる。
    異色真珠の物性、とりわけ鑑別法に重要な分光特性や耐久性との関連での日光堅牢度などについて測定結果を述べる。
feedback
Top