目的 人口の高齢化に伴い骨粗鬆症予防の重要性が認識されているが、知的障害者は加齢による骨量低下が健常者より著しいことが懸念されるにも拘らず骨評価を受ける機会は少ない。そこで施設利用者の踵骨の音響的骨評価値(OSI)を測定し、性別、入所・通所施設別の現状と課題を探った。方法 都内の知的障害者入所5施設の利用者217名(男性143名、女性74名)と、通所5施設の167名(男性100名、女性67名)計384名を対象とした。2007年8月に各施設を巡回し、身長・体重・体脂肪率・ウエスト周囲径・血圧のほか踵骨の骨強度を測定するため超音波骨評価装置(ALOKA社製AOS-100NW)を用いて踵骨の音響的骨評価値(osteo sono-assessment index:OSI)を算出した。一部の施設では障害の程度・内容も調査し、SPSS(Ver.17.0)を用いて統計処理した。結果 踵骨OSIの男女別平均値は、男性2.834±0.503、女性2.766±0.609で有意差はなかった。一方、入所・通所別では男女とも差があり、左踵骨OSI平均値は通所(男2.916±0,571、女2.891±0.609)の方が入所(男2.776±0.442、女2.653±0.592)よりも有意に高かった(p<0.01)。右踵骨OSIも、有意差はないが、男女とも通所(男2.835±0.563、女2.825±0.591)の方が入所(男2.723±0.486、女2.675±0.563)より高い傾向があった。骨強度に体重が影響を及ぼすことや、居住形態の違いも関連していることが示唆された。結論 高齢化が進む知的障害者において、健常者同様、骨粗鬆症予防のためには早い時期から減量を図り、運動量を増やして、一般に20歳代後半にピークに達すると報告されている骨強度の低下を出来る限り抑制することの重要性が改めて浮き彫りになった
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