日本クリティカルケア看護学会誌
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8 巻, 3 号
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原著
  • 益田 美津美
    2012 年 8 巻 3 号 p. 1-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,未破裂脳動脈瘤(UIA)により血管内手術を選択した患者の療養過程における不確かさの構造およびそのレベルと経時的変化を明らかにし,看護支援を検討することを目的とした.研究対象者21名に対し,面接調査,質問紙調査を併用したMixed Methodによる縦断的調査を行った.その結果,UIA患者が長期療養生活の中で起こる出来事に対して認知した様々な不確かさは時間を追うごとに変遷し,その受止め,対処の結果もたらされる内面の変化の様相が明らかとなった.そして,次々に変わりゆく不確かさに対し「排除を試みる」「排除できない不確かさ」「不確かさがあっても見通しをもてる」という段階を経るにつれて,不確かさレベルは徐々に低下するとともに,患者は現実をありのままに受止めることができるようになっていた.このように,不確かさを文脈に沿って捉えることで全体的構造が見え,その時々で必要な支援やその位置づけが見通せるだろう.また,時間軸における不確かさを特定することが可能となり,本研究結果は,その実状,局面に即した看護支援を導く根拠になったと考える.
研究報告
  • 杉田 久子
    2012 年 8 巻 3 号 p. 15-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,クリティカルケア看護師のexpertiseの概念分析を行い,クリティカルケア看護実践領域への活用に示唆を得ることである.1983年~2007年までの看護学,医学の領域から43文献を分析対象とし,Rodgersの概念分析法を参考にした.
    結果,属性に〔プランニングプロセス〕,〔ケアリングプロセス〕,〔アドバンスプロセス〕,先行要件に〔動機・資質〕,〔リソース〕,〔文脈上の制約〕,帰結に〔治療の成功〕,〔ヒューマンケア〕,〔ケアの質の向上〕が抽出された.定義には「初期の推論,熟考された明敏な意思決定,および状況的文脈に基づく判断とともに,患者および医療者との相互作用を伴う優れたケアリングを実践し,反省的な実践を繰り返して蓄積される実践的知識の修得プロセス」が導かれ,よりよい患者アウトカムを導く看護師の継続的な態度を表す動的概念として説明された.結果は,クリティカルケア看護師のexpertiseを観察可能な現象として捉えることを可能にし,看護師の実践活動における客観的指標を提供することに貢献するが,実践現場での精錬と検証が課題である.
  • 梅林 かおり, 白田 久美子
    2012 年 8 巻 3 号 p. 26-35
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,急性期医療におけるさまざまな改革などにより,看護師長の業務もより繁雑となったことが推測されることから,急性期病棟の看護師長の職務満足度を把握することである.研究対象者はA県内の100床以上を有する規模の病院37施設の急性期病棟を管理する看護師長の任にある者234名,調査内容はStampらによって開発され,尾崎・忠政により翻訳された職務満足度を使用した.分析は単純集計後,基礎統計量の処理を行い,調査の得点と対象者の属性をt検定にかけた.結果,回収は152名(回収率は65.0%),急性期病棟の看護師長の職務満足度の平均は170.9±25.6点であった.また年齢が46歳以上の者,看護経験年数が24年以上の者,職位経験が6年以上の者は職務満足度が高かった.人員配置基準7:1の導入は,職務満足度全体としては影響していなかったが,構成要素である「医師と看護師間の関係」,「看護管理」においては,影響していることが示唆された.
  • 吉川 有葵
    2012 年 8 巻 3 号 p. 36-48
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,手術室におけるExpert Nursesの言動を分析し,何を考え,何を判断し,何を実践しているのか,術中の看護実践を明らかにすることを目的とした.研究参加者は8名で,手術中の参加観察とインタビューによりデータを収集し,J.P.Spradleyの示す手法を参考にして分析を行った.
    分析の結果,手術室におけるExpert Nursesの術中の看護実践は≪手術の進行を操る≫≪患者の人間としての尊厳を保つ≫≪患者の安全を確保する≫≪センスを働かせて場を捉える≫≪新人・後輩看護師を育む≫≪リーダーシップを発揮する≫≪病院の経営に貢献する≫≪手術看護の発展に寄与する≫が見いだされた.それは手術を受ける患者を取り巻く総合的な状況から患者の問題を導き,経験と感性を活かした判断と行動が繰り返されて成り立つホリスティックな看護実践であった.手術室看護師がExpert Nursesの看護実践ひとつひとつの知見を議論し経験を深めることができれば,経験と感性を活かした判断と行動を伴う看護実践に発展するのではないかと考える.
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