日本クリティカルケア看護学会誌
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2 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
第 2 回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 会長講演
シンポジウム
パネルディスカッション
原著
  • ―ICU サバイバーの体験とその影響―
    木下 佳子, 井上 智子
    2006 年 2 巻 2 号 p. 35-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    [研究目的] ICU から退院した人々の生活に,ICU 入室中の体験がどのような影響をもたらしているのかを明らかにし,社会生活へ適応するための看護支援を検討する.
    [研究方法] 対象:ICU に 4 日以上滞在し,退院後 1 年以上経過した 25 名.データ収集方法:「ICU 入室中の体験」と「ICU 入室中の体験がもたらす現在の影響」について半構成的面接を行った.分析方法:ナラティブ・アナリシスの手法を用いる.
    [結果] ICU 入室中の体験を現実的な体験ととらえた記憶が鮮明な対象者と記憶が不鮮明な対象者に分類された.前者は,ICU 体験の影響はなかった.後者の非現実的な体験や記憶消失をした対象者は,真実を確認する作業やその体験に対する理由づけという努力を行い,その成否により,非現実的な体験によるとらわれや混乱,記憶消失によるとまどいを起こしていた.また,非現実的な映像や音が残存し再現している人もいた.
    [考察] ICU での非現実的な体験の予防,体験の語りを促す,記憶の再構築のための情報提供など,その体験を乗り越える努力とそれを支える家族の支援,さらに,退院後の支援体制確立の必要性が示唆された.
  • 佐藤 憲明, 寺町 優子
    2006 年 2 巻 2 号 p. 45-54
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患,chronic obstructive pulmonary disease(以下 COPD とする)患者の急性増悪後の回復期における患者 5 名を対象とし,一連の入浴過程における循環動態,呼吸機能および呼吸困難感を明らかにするため,専用リフトによる全介助入浴を行い,水位の相違による検討をした.剣状突起レベルの水位における入浴では,PRP が入浴直後に一時的に有意な増加をきたし,その後入浴中は有意な増加を認めなかった.SpO2は入浴中に一時的に下降したが,出浴までに回復した.また,ETCO2は入浴直後に下降し,入浴中は低値のまま推移したが,出浴とともに回復し,RR は入浴中わずかに増加した.腋窩レベルの水位における入浴では,PRP は入浴直後に増加したのち,入浴中はその数値を維持し,出浴時に下降した.SpO2は入浴中に顕著な下降を認め,剣状突起群に比べ有意であった.ETCO2は,剣状突起群同様に入浴中は有意な下降傾向を示した.COPD 患者の剣状突起レベルの水位における入浴は,PRP,酸素化能を著明に悪化させることなく,また,炭酸ガス排泄能を改善し安全であることが判明した.入浴に関するケアにおいては,患者に対し呼吸負荷がかからず,快適であるように常に配慮することが大切である.
研究報告
  • ―臓器提供施設看護師を対象とした調査―
    新田 純子
    2006 年 2 巻 2 号 p. 55-61
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,「脳死容認」と「脳死の実践的説明」「脳死の科学的知識」「脳死患者のケア経験」との関連について検討し,看護師の脳死容認への示唆を得ることである.
    岩手県内脳死臓器提供施設全 6 施設の看護師 716 名を対象として,質問紙を用いて無記名自記式留め置き法による調査を行った(回収率:85%,有効回答率:81%).
    脳死容認と脳死の実践的説明が有意(p<0.01)な関連を認め,脳死の実践的説明ができると回答した看護師は脳死容認に肯定的であった.また,脳死の実践的説明の可否が,脳死容認に対する態度決定と関連することが示唆された.
  • ―初発乳がん患者により語られた内容の分析から―
    若崎 淳子, 掛橋 千賀子, 谷口 敏代
    2006 年 2 巻 2 号 p. 62-74
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    患者の語りをもとに,ガイドラインに沿った乳がん診療を受ける周手術期にある乳がん患者の心理的状況を明らかにし患者心理に基づく看護援助への手がかりを得ることを目的に,乳房手術を受ける初発乳がん患者 9 名を研究参加者として半構成的面接調査を実施した.
    質的帰納的手法により面接内容を分析した結果,周手術期にある乳がん患者の心理的状況として,【がん罹患の自覚と動揺】【生への希望】【逆境の中の前向きさ】【周囲の支えによる安心と感謝】【がん治療を引き受ける心の覚束無さ】【役割遂行困難による心配】【乳房への愛着】【がん医療への要望】の 8 カテゴリーが抽出された.看護援助の手がかりとして,手術前後を通じて発せられる患者の生きたいという気持ちへの応答,他者との関係における乳房への思い出に起因する乳房への愛着と未練への支援,患者が担う役割の把握および患者自身が治療過程を見通せる説明と治療に伴う身体的自己像変化の気がかりへの対応,患者の奮起を促す言葉かけ,乳がん体験により変化した心境や人生観を踏まえた関わり,が得られた.また,困難な状況にあっても容易に屈することなく乗り越え精神的に自ら回復する力としての,患者の中に在る逆境の中の前向きさに注目し,患者の肯定的心理に着目した看護の検討が示唆された.
  • 相浦 桂子, 黒田 裕子
    2006 年 2 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,生命危機状況にある患者の家族が,患者の代理として行う決断の状況を明らかにすることを目的とした.救命救急センターおよび集中治療室で自分の意思が表明できない患者の家族を参加者として,半構成的面接を実施し質的に分析をした.参加家族は 7 家族であった.
    分析の結果,「決断の仕方」「決断の影響要因」「決断に対する評価」「決断後の家族関係の変化」という 4 つのカテゴリーと,それぞれに含まれるサブカテゴリーが見いだされた.家族は医師の説明を理解したかどうかにかかわらず,患者を助けたいという思いから,家族の話し合いを経ずに提示された治療に同意していた.決断時には患者の配偶者の気持ちが優先されることが多かった.また,決断を委ねられた家族は,成員の間で考えや感情の違いが表面化することで迷いや葛藤を経験していた.決断には影響を与える要因が存在し,決断後,時間の経過や病状の変化に伴い家族は決断を肯定したり,その是非を問い直していた.また,家族はお互いの存在を再認識し,とまどいながらも支えあっていた.
総説
  • ―我が国における研究の動向―
    高橋 美奈子, 小林 優子
    2006 年 2 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,我が国におけるクリティカルな状況にある患者の家族のニードに関する研究の動向を知り,今後の研究課題を明らかにすることを目的とした.過去 15 年間(1990~2005 年)で 68 件の文献が抽出され,そのうち原著論文 40 件を対象に研究の動向を検討した.その結果,研究数は,2002 年以降急激に増加していた.研究場所は ICU が多く,緊急入院という状況の研究が多かった.逆に,予定手術を扱った研究は少なかった.介入後のニードの変化や介入に対する評価の研究では,対照群を設定するデザインの研究は半数であり,介入の評価を正確に行うためには,対照群を設定した研究を進めていくことが必要である.家族のニードの把握を目的とした研究が多く見られ,使用されていた測定ツールは,Molter のニード項目のうち,日本人の文化・習慣などになじまない内容を除去して用いた研究が多かった.我が国における測定ツールの開発は山勢らによる CNS-FACE があり,これを用いた研究は 1 件あった.日本独自の測定ツールの必要性,CNS-FACE の有用性を検討していく必要性が示唆された.さまざまなツールが用いられることで,結果の比較はしにくかったが,今後共通したツールを用いることにより,他の研究で得られた結果との比較が可能であると考えられる.
事例報告
  • ―突然に発症したくも膜下出血患者の配偶者の一事例に基づく探究―
    榑松 久美子, 黒田 裕子
    2006 年 2 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 2006年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    突然に発症し,意識障害に至った患者の配偶者の心理社会的な体験を記述し,看護支援を探求することを目的とし,一事例に基づいて探究した.
    参加者は,くも膜下出血で集中治療終了後も GCS8 以下の意識障害が続いた 50 歳代女性患者の配偶者(夫)50 歳代 1 名であった.参加観察法,半構成的面接法に加え,診療録・看護記録から得たデータをもとに,患者の病状が変化した時点,および配偶者の言動が変化した部分に注目し,配偶者の体験の意味を解釈した.
    分析の結果,配偶者の心理社会的体験は,第 1 段階:妻が生き抜くことをひたすら望む,第 2 段階:意識が障害された妻を受け入れることに葛藤する,第 3 段階:意識が障害されてしまった妻の存在とは何かを考え,今後の人生をどのように生きていくかを模索する,の 3 段階に変化することが明らかとなった.この中で配偶者は,身近に存在する他の家族や状況を理解する医療者に支えられ,意識障害となった妻を受けとめていたと考えられた.各段階の特徴を読み取り,配偶者の安寧を目指した適切な看護支援を行う必要性が示唆された.
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