日本クリティカルケア看護学会誌
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13 巻, 3 号
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原著
  • 稲垣 美紀, 藤原 尚子, 竹下 裕子, 石澤 美保子, 高見沢 恵美子
    2017 年 13 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,心臓外科手術を受ける患者の意思決定に影響する要因について明らかにすることである.循環器専門病院の外来及び病棟で,心臓外科手術を受けた患者19名を対象とし,面接調査を実施し,内容分析を行った.結果,患者の意思決定に影響する要因は,【心不全や狭心症の症状による日常生活の制限やカテーテル治療の苦痛による心臓外科手術の必要性の理解】【心臓外科手術を受けることで症状や日常生活が改善するという期待】【今までの手術経験からの心臓外科手術への思い】【医師の説明から生命の危険性の認識と心臓外科手術を受ける時期の判断】【今までに受けた治療や看護による医療施設や医療者に対する信頼・安心感】などの8カテゴリーが抽出された.患者の意思決定をサポートする看護援助として,初診時から手術までの継続的な看護援助の重要性が示唆された.また,個々の患者の治療経験や心理社会的背景を踏まえたサポート,多職種によるシームレスなサポート体制の促進等が重要であることが示唆された.
  • 坂木 孝輔, 高島 尚美
    2017 年 13 巻 3 号 p. 11-20
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     本研究はICUにおける看護師にとってのベッドサイドの写真の意味を明らかにし,看護介入としての写真活用の示唆を得ることを目的とした.ベッドサイドに写真のある重症患者の受け持ち経験のある看護師を対象に半構造化面接法を用い,修正版グラウンデット・セオリー・アプローチを参考に分析した.
     その結果,看護師にとっての写真の意味は,《個人的背景や病棟文化から影響を受ける写真に対する捉え方》《生命の危機に瀕している患者の体験そのものに関心が寄る見え方の変化》《複雑な影響を考慮しその人らしい生活を尊重しようとする思考》《写真が触媒となる生活者としてのその人を尊重した看護行為》《引き起こされる悲喜交々》の5つの局面が抽出された.ICUにおける看護師にとってのベッドサイドの写真は,看護師の患者に対する見え方を変化させ,患者中心のケアが家族とのパートナーシップを築きながら実現できる意味を持っていた.写真は用い方により,善いものにも,悪いものにもなる諸刃の剣であり,家族の危機の段階や家族システムによって異なる写真の意味を認識し,意図的に写真を用いることの重要性が示唆された.
研究報告
  • 三木 珠美, 五十嵐 愛子
    2017 年 13 巻 3 号 p. 21-28
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     急性期における鎮痛・鎮静管理は,危機的な状況にある患者を精神的・身体的苦痛から保護し,治療を円滑に行ううえで重要である.本研究では,鎮痛・鎮静に関する看護介入の基礎資料とすることを目的に文献検討を行った.その結果,該当する論文は18件であり,「鎮静・鎮痛アセスメントツールの導入」「鎮静・鎮痛プロトコールの導入」「看護師の鎮静における認識や判断」「鎮静患者の家族の思い」の4つのカテゴリに大別された.患者の安全・安楽を考慮した看護師の判断は,鎮静薬の減量より増量に働き,目標レベルより過鎮静で維持する傾向にあった.今後の展望として,鎮静管理の質の向上のためには,浅い鎮静の有益性を理解し,過鎮静を予防する取り組みが優先課題であると考える.また,鎮静患者や家族への看護ケアには,鎮静と鎮痛管理の両方を合わせた介入的研究の蓄積と検証が必要であることが示唆された.
  • 有澤 舞
    2017 年 13 巻 3 号 p. 29-38
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     クリティカルケア領域では,初診時エイズ発症患者を対応する機会が多い.看護師がエイズ看護に関してどのような感情を抱いているのか,その感情に関連する要因は何かを明らかにすることを目的として本研究を実施した.
     東京都とその近隣県のエイズ拠点病院(11施設)のクリティカルケア領域の看護師(413名)に「エイズ看護に対する感情」と4つの要因「疾患の知識」「支援法の知識」「性の捉え方」「職場環境」の39項目で構成した無記名自記式質問紙を用いた調査を行った.回答の割合を算出し,相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて分析した.
     抱きやすい感情には,「エイズ患者に対して血液や体液を取り扱う処置を行う際はいつもより厳重に感染予防策をとりたい」等の4項目があった.
     [エイズ看護に対する感情]と[疾患の知識][支援法の知識]は負の相関関係にあり,曖昧な知識であるために,患者との信頼関係の始まりを躊躇し,患者から距離を置いてしまう可能性が考えられた.[性の捉え方]とは正の相関関係にあり,看護師は自分自身の感情や性の捉え方を自覚し,患者と関わる事が重要だと言える.
  • 田村 直美, 勝山 貴美子, 柏木 聖代
    2017 年 13 巻 3 号 p. 39-47
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
    【目的】急性期病院に勤務する看護師に着目し,看護実践環境と看護師の自律性との関連を,多変量解析により明らかにすること.
    【方法】一施設の看護師360名を分析対象とした.自律性測定尺度([認知能力][具体的判断能力][抽象的判断能力][自立的判断能力][実践能力])をそれぞれ従属変数とし,基本属性,職務満足,看護実践環境(PES-NWI日本語版)から独立変数を選定し,多重線形回帰分析により検討した.
    【結果】二変量解析では,看護師の自律性と関連のあった要因は,PES-NWI(日本語版)では,「病院全体の業務における看護師の関わり(高い)」のみであった.他に,「経験年数が長い」「CNS/CN有」「職業継続意思有」「職務満足(高い)」などの要因が関連していた.集中治療室勤務か否かは関連がみられなかった.多変量解析では,PES-NWI日本語版の「ケアの質を支える看護の基盤(高い)」と「病院全体の業務における看護師の関わり(高い)」,それ以外の要因としては「職務満足(高い)」,「頼りにされていると思う」,「学生指導経験有」が看護師の自律性を高めた.
    【考察】一施設内における看護師の自律性は,勤務部署や看護実践環境による影響は少ないと考えられた.
  • 江口 秀子, 明石 惠子
    2017 年 13 巻 3 号 p. 49-60
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は救急部に勤務する看護師の臨床判断の実態および救急経験年数と救急医療体制との関連を明らかにすることである.独自に作成した質問紙による5段階評価の実態調査を行い,663人から回答を得た(有効回答率44.7%).【臨床判断内容】は『緊急性に関する判断』『ケアや治療に関する判断』の実践頻度が高く,『連絡調整に関する判断』『患者心理と家族に関する判断』は低かった.【判断に用いる情報・手がかり】では『患者情報』『他者からの情報』が高かった.臨床判断と救急経験年数の比較では,チームリーダー群・スペシャリスト群がビギナー群・スタンダード群と比較して【臨床判断内容】【臨床判断の局面】【臨床判断に必要な能力】得点が有意に高かった.さらに救急医療体制と関連では,二次救急施設が全次型・三次救急施設と比較して,【臨床判断内容】の『ケアや治療に関する判断』『緊急性に関する判断』得点が有意に低かった.スタンダード群の臨床判断の向上と二次救急施設に勤務する看護師の緊急性に関する判断能力の育成が課題である.
  • 合田 恵理香, 城丸 瑞恵, 仲田 みぎわ
    2017 年 13 巻 3 号 p. 61-69
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     ICUに入院中の患者のストレス緩和にBGMを活用している施設があるが,患者と同じ空間・時間に同じBGMを聴く看護師に,自分自身や患者へのBGMの影響をどのように感じているか明らかにした研究は充分ではない.そこで本研究は患者と同じ空間・時間に同じBGMを聴くICU看護師が,BGMの影響をどのように感じているか明らかにすることを目的とし,ICU看護師10名に半構造化面接を行った.その結果,看護師が実感した患者への影響は【BGMによってもたらされる患者の日常性と心身の回復】【患者に対するBGMの効果への疑問や否定】の2カテゴリー,看護師自身への影響は【患者へのBGMによってもたらされる看護への活力】【BGMに対する不快ではない感覚】【BGMの存在に対する気にならなさ】【患者の反応から芽生えるBGMの効果への期待】の4カテゴリー,BGMによって引き起こされる患者と看護師の関係は【BGMによって引き起こされる患者-看護師間のやりとり】の1カテゴリーが生成された.
  • 山本 伊都子
    2017 年 13 巻 3 号 p. 71-82
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,ICU看護師は看護実践においてどのような困難さを感じているのか明らかにし,看護実践に対する困難さと職務継続意思との関連を明らかにすることを目的とした.
     ICUで働く看護師199名(平均年齢31.8歳,ICU経験年数56か月)を対象に自記式質問紙調査を実施した.調査内容である看護実践に対する困難さ,職務継続意思については,ICU看護師33名からのインタビューデータから質問項目を作成した.因子分析を行ったところ,看護実践に対する困難さは5因子,職務継続意思は1因子となり,Cronbach αはそれぞれ0.8以上が得られた.
     対象者の74.9%は自分の1つ1つの行為が患者の命を左右していることにこわさを感じ,71.3%は瞬時の判断が求められることに難しさを感じていた.また,重回帰分析の結果,看護実践に対する困難さの1因子である「緊迫した状況に身を置きながら看護を続けることの難しさ」とICU経験年数は職務継続意思に負の影響を及ぼしていた.
  • ─神経学的重症度grade Ⅰ - Ⅱに焦点を当てて─
    竹山 美穂
    2017 年 13 巻 3 号 p. 83-92
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,くも膜下出血患者のスパズム期における体験を明らかにすることを目的とした.神経学的重症度がgrade Ⅰ - Ⅱの破裂性脳動脈瘤術後の患者5名に対し,半構成的インタビューを行った.得られたデータは現象学的アプローチを参考に分析した.
     その結果,対象者のスパズム期の体験は何が起きたか【わからない】ことから始まり,脳血管攣縮によりいつ麻痺症状が起こるか【わからない】中,破裂部位と痛みの不一致感によって自分の身体ですら【わからない】状況となっていた.また,脳血管攣縮などを予防するための治療上の制限や「殺してくれ」という程の壮絶な痛みで【動けない】状況であった.さらに,考える力が停止し【考えられない】様子や【考えられない】自分の状態について考えるという俯瞰している様子を語っていた.一方で,自然に回復するのを待つだけでなく,【努力して徐々につかんだ回復の感覚】を得ていたことが明らかとなった.
  • 冨田 亜沙子, 井上 智子
    2017 年 13 巻 3 号 p. 93-101
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
    【目的】胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(以下TEVAR)を受けた後期高齢者の治療体験を通して療養生活を明らかにし,TEVARを受ける高齢患者への看護支援の示唆を得る.
    【方法】75歳以上で調査期間中に外来受診し研究の参加に同意を得られた者に,半構造的面接調査を行い,得られたデータを修正版グラウンデットセオリーアプローチに基づき分析した.
    【結果】対象は13名,平均年齢78.3(± 3.9)歳だった.対象者は治療前に低侵襲治療に期待を持つ一方で,手術か天寿全うか葛藤を抱き,治療後は体の負担の軽い手術と感じる者と楽ではないと感じる者がみられた.退院後は「治療と老いの双方の影響で生じた日常生活上の困難」がある一方で,「治療と老いに対して抱いた前向きな価値観」を見出していた.
    【結論】後期高齢患者が治療を受けるが故,療養生活において治療の影響だけではなく老いに伴う変化がみられた.そのため,治療後も自立した日常生活が維持出来るような看護援助が重要である.
  • 手島 正美
    2017 年 13 巻 3 号 p. 103-111
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,循環器疾患患者に焦点をあて,集中治療室に入室した患者の支えとなった体験を明らかにすることを目的に,5名を対象にした半構成的インタビューにより質的記述的研究を行った.本研究は,医療者との関わりからリラックスや安心が得られた〈医療者の対応が支えとなる〉,〈身近な人,会社,家族が支えとなる〉,医療者の話声や,やり取りから,集中治療室の「和やか」で「穏やか」な雰囲気を感じ取り安心を得ていた〈集中治療室の環境が支えとなる〉,患者が自分の身に起きていること,自分なりの感覚や周囲の反応で回復を実感し〈自分自身で回復を感じることが支えとなる〉の4つのコアテーマと12のテーマが導かれた.
     患者は,自身の体内で何が起きているのか,自分の体と照らし合わせて考えることで,回復しているという確信となり,患者自身の支えとなっていく.看護師には,患者が回復過程の中で起きる事を意味付けできるような支援が求められる.
  • 小林 礼実
    2017 年 13 巻 3 号 p. 113-122
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,心臓の緊急手術を受けた患者の回復意欲の構造を明らかにし,回復意欲を支える看護援助の示唆を得ることを目的とした.心臓の緊急手術を受けた患者10名を対象に半構成的面接を行った.得られたデータはグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析した.その結果,心臓の緊急手術を受けた患者の回復意欲とは,《良くなることを期待してできることから挑戦する》,〈予期せぬ緊迫した事態に身をおく〉,〈判断指標をもとに自分の体調を把握する〉,〈健康への願望と不安が混在する中で命を守る生活を志す〉,〈逃れられない現状に苦悩する〉,〈命がつながること・回復を実感する〉,〈家族や友人・職場からのサポートを拠り所にする〉,および〈医療者から提供される適切な治療・親身な態度を励みにつなげる〉8つカテゴリーから構成されていた.回復意欲を支える看護援助は,回復の実感および安心感が得られるような教育的かつ情緒的な支援が重要であることが示唆された.
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