本稿は、きもの産業を事例として、伝統産業の組織が硬直化した原因を探ることを目的とする。伝統には多様な価値があり、それが制度化しうることを前提として、衒示的価値、記号的価値、真正的価値、創造的価値などの理論系譜を整理し考察した。結論として、きもの産業は、衒示的価値を共有化、制度化していくことで、消費者の意識を無意識的に縛るだけでなく、きもの産業の組織自体を硬直化させたという関係が明らかになった。
本稿は、今日の美術工芸を対象分野に、地域中核の芸術系大学(以下「芸大」)と関係する教育研究機関との組織間や帰属的人材の継続的な社会連携活動を動態分析して、多様な価値が創出される成果を検討する。具体的には、京都や金沢の伝統を象徴する美術工芸の革新と継承を先導する芸大の多様性と専門性に富んだ社会連携が、①芸術家個人、②作品資料、③教育研究プログラムを媒体に、創造環境の革新や発展に寄与する過程を解明する。
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