本稿の目的は,保健室利用の秩序について,養護教諭の語りから,養護教諭,生徒,教諭の相互行為に焦点を当て考察することにある。インタビューデータを分析した結果,保健室利用の秩序が,これら三者間で状況の解釈を共有する過程で生成されると考察された。具体的には,「許可・承認」「評価」「対応」の一連の行為連鎖として,保健室利用が秩序化されていた。保健室利用の可否を判断する科学的根拠となる検査データが十分でないことから,「評価」と「対応」においては,解釈的,即時的,状況依存的に行われる側面があった。また,生徒指導上の課題を有した生徒の保健室利用に際しては,保健室利用の秩序がゆらぎやすいことがわかった。そこで,保健室利用の秩序を維持するために,〈カード〉の使用による教諭の「許可」の可視化,常に教諭の監視があるような装い,保健室利用ルールの徹底などの対策がとられることがあった。
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