このほどスタートした, 日本の協会における資格認定事業をさらに充実したものにする上での示唆を得る事を目的として, ドイツにおけるダンス・セラピーおよびセラピスト養成の現状について調査・検討を行った結果, 以下の知見を得た。
ダンス・セラピーとしての名称, 概念の整理はアメリカで行われたが, ダンス・セラピー創始第1世代へのドイツ語圏の心身文化の影響は大きく, ダンス・セラピーはその源流をドイツに求めることができると考えられる。
ドイツ国内に設立されているダンス・セラピー推進組織は, 連携関係を持っている8つの団体と, それ以外に大きく分かれている。しかしこれらの位置づけは全て並列で, 日本における関連組織の縦並び化傾向とは異なり, それぞれに自由に活動をしている。活動領域は主に病院, 福祉施設等で, 個人開業は困難である。国内には少なくとも100人の認定ダンス・セラピストが存在するが, 詳細な情報はまだ取りまとめられていない。
ドイツにおけるダンス・セラピスト職能団体BTDでは資格認定事業を行っており, アメリカの資格養成プログラムを参考とした規定を設けている。資格養成課程に対する基本的な要請は規定に明確であるが, 年限をはじめその実際の運用には推進団体ごとにかなりの多様性が認められた。特に, DGTではゲシュタルトセラピー, ZTTでは家族療法, DATITではユング派の象徴と分析など, 基盤とする臨床心理学派によって, 履修される各論には違いが見られる。また, 臨床実習は共通に重視されて, 丁寧にとりくまれている一方, 個々人のダンストレーニングについては, 後で証明を求める程度から毎週のプログラムの中できちんと組織化しているところまで, 格差が認められた。
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