日本女子体育連盟学術研究
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30 巻
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原著論文
  • ─リオデジャネイロ市のJ幼稚園の授業パターンに基づいて─
    細谷 洋子
    2014 年 30 巻 p. 1-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    アフロ・ブラジル文化カポエイラは,アフリカ系奴隷によってブラジルで創造され,近年ブラジル社会,歴史,文化の象徴としてブラジル国家によって認められた民族スポーツである。本稿はこのようなカポエイラの,幼児を対象にした教授内容を明らかにし,授業構成の観点とその鍵となる概念を考察することを目的とした。
    その結果,授業パターンにおいて,幼児の心身の発育発達段階を考慮して,多様な動きの体験が優先された。そしてカポエイラの独特の世界観が重視されない「ジョゴ」(カポエイラのゲームを意味する。以下「ジョゴ」と略す)が行われていると考察された。
    授業構成の観点として「行為の意味を重視する」ことが重要であることが明らかになった。つまり,技の完成度よりもジョゴを行う二人の間で技が行われることで生じる「問いかけと返答」という意味を重視する傾向が考察された。
    更には,「問いかけと返答」の意味生成において,即興性が基軸となる「ジョゴ」概念が授業構成の観点として重要であり,この「ジョゴ」概念はカポエイラ特有の文化的特性であるという知見が得られた。
  • 八木 ありさ
    2014 年 30 巻 p. 17-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,即興表現を中心素材とするダンス・セラピーワークショップが参加者の気分を改善する効果を持つこと,また気分変化の様子を色名の記述によって把握することができることを検証しようとした。保育士資格養成課程で,実技科目「基礎技能ID(ダンス・セラピー)」を受講する者に対して,「気分調べ」の評定ならびに「色名記述」を求め,その変化を検討した。
    その結果,ダンス・セラピーワークショップの体験前後で,「気分調べ」では,疲れ,抑うつといった否定的な気分や緊張が減り,明澄で,リラックスした,あるいは活力あふれるといった肯定的な気分が増加したことが,「色名記述」では「不安」や「孤独」が低減し,「明るさ」や「活発さ」「情熱」にみるエネルギー感が増進したことが確認された。また,「活動の満足度」の低い参加者においても,青年期の傷つきやすさと関連すると考えられる気分の改善が見られた。
  • 伊藤 美智子
    2014 年 30 巻 p. 29-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,2000年4月に結成され,現在も活動を続けている知的障害者(n=8)とその家族をメンバーとするダンスグループの母親(n=8)を対象として,活動の長期継続の要因,意識,メンバーへの影響等を明らかにするために,半構造化インタビューを行った。その結果,1.グループの活動が子どものコミュニケーションの好機であると母親が思っている。2.母親,知的障害の子どもが共にダンスの特性を味わっている。3.練習日の子どもの日常生活が活発になる傾向がある。4.子どもが活動に夢中になっていることを印象深いと母親は感じている。5.母親はダンスを行うことに生きがいを感じると共に,グループの活動や運営を通じて自身の変化や仲間とのつながりを強く感じており,レジリエンスに繋がっているものと推察される。6.子どもが知的障害者であったことが母子の身体活動促進につながっていることが明らかとなった。
  • ─NJ体育大生における体操の受け止めからの検討─
    笹本 重子, 一戸 秀子
    2014 年 30 巻 p. 43-53
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,大学生が体操を心と体でどのように受け止めているかについて48名の女子学生の「自己肯定度(自己肯定度インベントリー)」と「受け止め(自由記述による)」から検討し,受講者が体操をどのように活用できるか,その可能性を探ることを目的とした。体操は「体ほぐしの運動」「ストレッチ体操」「トレーニング体操」「リズム体操」「手具(ボール)体操」「徒手体操」の6教材とした。その結果,徒手体操以外で自己肯定度は高くなり,中でも自己肯定度の高い者はそうでない者に比較して教材の特性を的確に捉えていることが示された。また,自己肯定度の高い者は「良い動きを身につけた」と自信をもち,体操を指導してみたいと希望していることが示された。
実践研究
  • ─グループ学習と行事「七夕まつり」を通して─
    福原 千枝
    2014 年 30 巻 p. 55-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,保育者養成校の学生を対象に,「幼児体育」の教材として伝承遊びを取り上げ,グループ学習を主体とする一連の実践的学習を通した学生の学びについて考察する。具体的には,学生1年生94名はグループ学習で伝承遊びを学び,教え合い,そのまとめとして,近隣の保育園の年長組22名と附属幼稚園の年長組23名の子ども達を招いて行う行事「七夕まつり」の中で,子どもと一緒に伝承遊びをする体験をした。学習する学生の様子の観察,学生への伝承遊びの学習の最初と「七夕まつり」終了後のアンケートを分析した。その結果,学生は実践の中から貴重な学びを得ていることが確認された。学生は,伝承遊びの価値と楽しさに気づき,伝承遊びを実践する意欲を持ったことが確認された。学生は学習を通して,伝承遊びの以下の価値に気づいた。
    1)皆で遊べる,大勢で一緒に遊べる楽しさがある
    2)スキンシップがあり,一体感,楽しさがある
研究資料
  • ~東京都における急増するダンス部の現状と課題
    中村 なおみ, 勢畑 多恵子, 布施 典子
    2014 年 30 巻 p. 69-79
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    平成20年度に全国すべての小中学校を対象に「全国体力・運動能力,運動習慣調査」が行われた。その結果,昭和60年の結果と比較し,かなりの体力低下が明らかとなった。特に女子は,1週間に体育の授業以外で30分以下しか運動をしていないものが,小学5年生で8万人,中学2年生で12万人という結果で,男子よりも運動への参加率がかなり低く,これは運動部への所属が少ないことによると分析されている。以後,5年間の調査でもこの傾向は変わらない。
    一方で,東京都女子体育連盟主催の体育実技研究発表会(以下ダンス発表会)への参加者数が平成8年からの15年間で5倍以上になっていることから,高等学校のダンス部員は増加していると推察できた。しかし,その実態に焦点を当てた調査や研究は充分に行われていない状況にある。
    そこで本研究では,ダンス部に関する基礎データを収集・分析し,部員数が増加傾向にあることを実証するとともに,活動の実態を明らかにするため,ダンス発表会に参加する生徒と顧問教員を対象にアンケート調査を行った。
    その結果,ダンス部員はかなりの増加傾向であることがわかった。また,増加という実態が先行しているが,教育機関としての学校の受け入れ態勢,つまり,指導体制や多数の部員に見合う施設面に課題があることが示された。
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