日本女子体育連盟学術研究
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27 巻
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原著論文
  • ─捜真女学校時代の指導経緯を中心として─
    高橋 和子
    2011 年 27 巻 p. 1-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,世界最高齢の舞踏家大野一雄が38年間勤務した捜真女学校における「ダンス授業」や「クリスマス行事での聖劇」に着目し,どのようなダンス教育をしたのかを舞踏活動との関連も含めて探ることを目的とする。研究方法として,文献,大野一雄アーカイブ資料,および女学校関係者への半構造化面接法などにより得られた資料を,(1)経歴(教育・舞踊関連年表)の作成,(2)体育教科におけるダンス指導とマスゲーム『美と力』振付の点検評価,(3)聖劇とサンタクロース扮装の点検評価,などの観点から分類整理し,考察を行った。その結果,大野は半世紀以上にわたり捜真女学校に関わり,ダンスや聖劇を通して「形を教え込む」のではなく,「真剣な言葉かけ」によって自己の内面に対峙させ,「自由な表現を引き出した」ことが明らかになった。教育者であり舞踊家であった大野は,謙虚さと奉仕と愛情に満ち溢れた信仰心で子どもや生徒に接し,一連の教育法は世界的に活躍する舞踏家となっても変わることなく,人間の可能性を引き出し生と死のテーマを表現してきたといえる。大野の生き方は創作ダンスや教育の原点にも通じ,ダンス指導法への示唆を得ることができた。
  • ─実践を続けてきた4人の教諭に着目して─
    寺山 由美, 細川 江利子
    2011 年 27 巻 p. 21-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,小学校・中学校の表現運動・ダンス領域における「表現・創作ダンス」指導時の「即興表現」について,実践を続けてきた4人の教諭を対象とし,授業観察,質問紙調査,および面接(インタビュー)調査により,教諭それぞれの「即興表現」の指導とその捉え方を考察した。その結果,教諭が,指導の力点(学習者に身につけさせたい力の重点)を「身体イメージ能力」と「表現的動きを創出する能力」のどちらに比重を置くかにより,指導法に差異があることが明らかになった。また,いずれの教諭も学習者の即興的な動きが創出されるきっかけとしての「共通の手がかり」を設定していた。
  • ─日本の学習指導要領と韓国の教育課程を対象として─
    朴 京眞, 村田 芳子
    2011 年 27 巻 p. 39-53
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    最近,日本では2008年に「新学習指導要領」が,韓国では2007年に「2007年改訂教育課程」がほぼ同時期に告示された。これらの新しいナショナルカリキュラムにおけるダンスの内容とその変化の背景を把握するためには,これまでの両国における改訂の変遷を見直して検討することが必要である。そこで,本研究では,日本の学習指導要領と韓国の教育課程における小・中・高等学校のダンスの内容について,戦後(1945)から新カリキュラム前までの変遷をまとめ概観するとともに,その比較分析を通して新カリキュラムに至る過程とその背景を検討することを目的とした。
    その結果,ダンスの内容は両国ともに体育の一領域として位置づけられており,領域の名称は,小学校では両国とも改訂に伴って何度も変化したが,中・高校では,日本では「ダンス」,韓国では「舞踊」が一貫して用いられていた。ダンスの主内容は,戦後両国ともに「表現・創作ダンス」と「フォークダンス」の2つを柱に構成されていたが,日本では平成10年(1998)に「リズム系のダンス」が導入され,現在の3つの内容となり,韓国では第5次教育課程(1987)から「ムーブメント教育による基本の動き」が導入され,近年において両国の内容に違いがみられた。さらに韓国では「芸術舞踊」が例示されていることが特徴として挙げられた。履修に関しては,両国ともにダンスは「女子」のみに教える領域であったが,日本では平成元年(1988),韓国では第5次教育課程(1987)から男女共修になった。以上の変遷の比較を通して,両国の新カリキュラムにみられるダンスの内容の顕著な違い(特に韓国における大きな変化)に至る過程とその背景となる要因が示唆された。
事例報告
  • 大熊 玲子
    2011 年 27 巻 p. 55-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    本稿は,大学での授業実践の成果とその分析を通して,大学体育授業にピラーティスベースのボディコンディショニングを取り入れることの意義と,今後の課題について述べている。学生のレポートや授業観察から,ピラーティスベースのボディコンディショニングが,身体面における効果だけでなく,緊張の緩和や心に落ち着きをもたらすなど,リラクセーション効果が現れていることが見受けられた。更に,自身と向き合い,身体の調子を整えることの重要性を学生が認識し始めていることが窺えた。以上のことから,身体の調子を整える方法の1つとして,大学の体育授業においても重要なものとなりうることが示唆された。
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