最近,日本では2008年に「新学習指導要領」が,韓国では2007年に「2007年改訂教育課程」がほぼ同時期に告示された。これらの新しいナショナルカリキュラムにおけるダンスの内容とその変化の背景を把握するためには,これまでの両国における改訂の変遷を見直して検討することが必要である。そこで,本研究では,日本の学習指導要領と韓国の教育課程における小・中・高等学校のダンスの内容について,戦後(1945)から新カリキュラム前までの変遷をまとめ概観するとともに,その比較分析を通して新カリキュラムに至る過程とその背景を検討することを目的とした。
その結果,ダンスの内容は両国ともに体育の一領域として位置づけられており,領域の名称は,小学校では両国とも改訂に伴って何度も変化したが,中・高校では,日本では「ダンス」,韓国では「舞踊」が一貫して用いられていた。ダンスの主内容は,戦後両国ともに「表現・創作ダンス」と「フォークダンス」の2つを柱に構成されていたが,日本では平成10年(1998)に「リズム系のダンス」が導入され,現在の3つの内容となり,韓国では第5次教育課程(1987)から「ムーブメント教育による基本の動き」が導入され,近年において両国の内容に違いがみられた。さらに韓国では「芸術舞踊」が例示されていることが特徴として挙げられた。履修に関しては,両国ともにダンスは「女子」のみに教える領域であったが,日本では平成元年(1988),韓国では第5次教育課程(1987)から男女共修になった。以上の変遷の比較を通して,両国の新カリキュラムにみられるダンスの内容の顕著な違い(特に韓国における大きな変化)に至る過程とその背景となる要因が示唆された。
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