日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第43回研究大会
選択された号の論文の250件中101~150を表示しています
個人発表
  • 岡 晋
    セッションID: D-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
     雲南省迪慶州東南部のナシ族村を事例にして、歴史的には「唄色」と表記されていた、清末から民国期の土司支配体制下の「村長」の家とその出自集団の親族組織と婚姻形態を、村内の他の集団との比較の中で詳らかにし、それらが当該地域の政治(支配構造)とどのように結び付き、その構造が近年どのように変化してきたのかを明らかにする。
  • 松岡 正子
    セッションID: D-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では、研究対象を中国四川モン川大地震(2008.5.12)で大きな被害を受けた羌族とその民族文化資源とし、中国政府が復興計画において羌族の生活と生産および民族文化資源の再建をどのように位置づけているのか、特に貧困からの脱出を目標として西部民族地区で進められてきた観光開発と地震後の復興計画がどのように関連づけられているのか、また被災者である羌族側の意見はどのように入れられているのか、考察する。
  • 西南中国の少数民族トン族の事例から
    兼重 努
    セッションID: D-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    人間に吉凶禍福をもたらす風水は「欲望の体系」といわれる。限られた幸福の源泉への競合は、ときに風水闘争につながる。本発表では、西南中国の少数民族トン族の事例にもとづき、村落風水をめぐる風水闘争がいかに生じるのか、地元民はいかに対処しているのかについて報告する。 トン族村落における風水闘争は村落風水(「コミュニティの風水」)と陰宅風水・住宅風水(「私(一族)の風水」)の間の競合である場合が多い。 キーワード:風水闘争、「コミュニティの風水」、「私(一族)の風水」、トン族
  • 客家地区における環境選択術の変遷
    河合 洋尚
    セッションID: D-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    東アジアを研究対象とする社会-文化人類学的研究にとって、風水は最も注目を集めるトピックとなっている。日本でも、特に1990年代以降、日本、韓国、中国などを舞台として、「生きた」風水の実態が人類学者らの手により研究されてきた。しかし、東アジア各地の風水にまつわる風水の思想や実践が明らかにされてきたにもかかわらず、風水そのものの範疇を問う研究は、さして問われてはこなかった。そこで本発表では、中国広東省の東北部に位置する梅州市を例にとり、現地の風水文化を「書く」所為が、もともと現地で風水とは考えられていなかった多様な環境選択術を、風水文化という単一の範疇に編入させてきた様相を描いてみたい。
  • 山歌の場をめぐって
    梶丸 岳
    セッションID: D-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、中国貴州省の歌掛け「山歌」に見られる変化について報告する。山歌の主要な面白さは言葉にあり、見た目や旋律は極めて単調で、言葉を聞き取れない者にとってアピールが非常に乏しい。だが近年歌詞付きのVCDの普及や演出上の工夫といった変化が見られる。こうした変化の意味を観光の持つ「まなざし」という視点から論ずる。
  • 中国福建省における「福建土楼」と視覚的記号の創出
    小林 宏至
    セッションID: D-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    2008年7月、中国福建省西部山岳地帯に点在している複数の建築群が「福建土楼」として世界文化遺産に登録された。このことで「福建土楼」は今後、多くのツーリストを呼び込むことが予想され、「消費される場所」として福建省西部山岳地帯を創出していく可能性を持っている。これらの地域や建築群に与えられたテーマである、「客家」と「風水」というキーワードをもとに消費されるものとしての世界文化遺産を考察していく。
  • 厦門における「帰僑之家」の調査から
    奈倉 京子
    セッションID: D-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表の目的の1つは、「帰華之家」(帰国華僑の家)を調査の拠点とし、最も規模が大きく活動の豊富なインドネシア帰国華僑聯誼会に焦点を当てて、活動の参与観察や、そこの役員が編集し、3ヶ月に1回内部発行している『印聯会訊』から、聯誼会の性質とその非公式的提携網の機能を探ることであるもう1つの目的は、「帰華之家」に集まるインドネシア帰国華僑やミャンマー帰国華僑、および一部泉州や福州でもインドネシア帰国華僑やフィリピン帰国華僑に対する聞き取りを通して、帰国の理由、帰国してからの体験などについて理解を深め、彼(彼女)らの経験から、なぜ帰国後50年以上経った今も「帰華之家」のような共通の場が必要なのか、彼(彼女)らの故郷意識について解明することである。
  • 安 成浩
    セッションID: D-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    かつて比較的に閉鎖された朝鮮族社会に激しい人口の移動もたらすきっかけとなるのが、改革開放政策の実施、韓国との親族ネットワークの回復である。海外への出稼ぎは、朝鮮族村落内における経済格差を縮小し、一攫千金することができる近道であった。初期の単純な出稼ぎから始まった人口の移動は、移動が更なる移動をもたらし、グローバルな展開となった。
  • 在米、在日、在露コリアン エスニック・フェスティバル比較研究
    パホモフ オレグ
    セッションID: D-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では3つのエスニック・フェスティバル、ロサンゼルス・コリアン・フェスティバル(アメリカ)、東九条マダン(京都)、ロシア・コリアン・フェスティバル“友好に国境なし”(ロシア)を比較検討する。まずフェスティバルの社会的コンテクストについて言及する。そして同じコミュニティに属する他の言説、主流社会に触れ、“構造的カップリング”が個々の実例でいかに実現されているかを見ていきたい。
  • 出稼ぎ者の増加がもたらした人々の生活の変化
    小坂 みゆき
    セッションID: D-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    都市化や出稼ぎ者の増加により急激に変化している中国朝鮮族の社会では、そこでの食生活に不可欠な唐辛子についても、農村を離れたことによる原料の入手、加工や保存の難しさが生じており、その影響が及んでいる。同社会の行方は不透明であり、そこの核の1つである唐辛子をめぐる情勢も、その影響を受けていくことは避けられない。
  • 中村 八重
    セッションID: D-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、韓国で児童福祉の観点から行われている国内での養子縁組を扱い理想とされる家族の姿を考察する。近年養子縁組の事実を養子本人や周囲に知らせる「公開入養」といわれる方法が広がっている。また、こうした方法の養子縁組を広報し、支援する団体の活動も目覚しい。かつて養子縁組の事実は隠されるべき個人的な出来事であったのが、社会的に広く認知される行為となりつつあり家族の形成に変化を与えている。
  • 台湾のブローカー婚の事例より
    横田 祥子
    セッションID: D-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本報告は、労働契約の一環として結婚を再考することを目的としている。結婚をめぐる定義はさまざまな論者が試みてきたが、各社会から反証が可能であったため、リーチによって普遍的定義を目指すこと自体が不可能かつ無意味であると指摘された。しかしながら、再生産労働のグローバル化に伴う女性の越境移動と、それによって誕生したブローカー婚(brokered marriage)は、結婚とはむしろ労働契約の一つに分類すべき関係性であることを提示している。本報告では、報告者が台湾で得られた調査データを元に、結婚という契約の再検討を行う。
  • 台湾・オーストロネシア語族系住民による地図作成運動の事例から
    石垣 直
    セッションID: D-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    人類学では近年、先住民のもつ知識やかれらが権利回復運動において展開するさまざまな主張に関し、肯定的あるいは否定的な議論が行われてきた。本発表では、台湾に住むオーストロネシア語族系住民によって進められている地図作成を用いた権利回復運動の事例を題材として、グローバルな運動言説と現地社会の現状との関係性、「近代/非近代」という問題設定、そして、こうした状況を対象とした人類学研究の可能性について検討する。
  • 歴史人類学の視点から
    宮崎 聖子
    セッションID: D-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では、日本植民地期台湾において、総督府が漢族系の女性に対して実施した「社会教育」のうち、未婚女性を対象とした女子青年団に着目する。これは「内地」において農村で働く未婚女性向け「社会教育」の組織である女子青年団を、台湾に移植したものである。政策が台湾の地域社会にもたらした変化や、そこに暮らす女性たちにとっての女子青年団の意味について、他集団との関係性にも着目しつつ、北部台湾A街を事例に考察する。
  • 観光にみる相互理解の差異
    上水流 久彦
    セッションID: D-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    先島諸島では経済活性化の方策の一つとして、台湾人観光客の受け入れているが、問題が生じている。先島諸島はこれまで国内の観光では八重山や宮古を売れば、それは国内の客のニーズを満たしていた。その成功例が逆に「大和」を求める台湾観光客の受け入れを失敗に導いている。グローバリゼーションの時代で、人やモノ、金、情報が国境を自由に越えているように見えるが、台湾と先島諸島においては限られた情報しか越えていない。
D会場  (5月31日)
個人発表
E会場  (5月30日)
個人発表
【分科会】 ヨーロッパのマイノリティ ―周辺から照射するEU社会―
個人発表
  • イタリアの精神医療実践からメルロ=ポンティの「制度化」概念を捉えなおす
    松嶋 健
    セッションID: E-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    20世紀後半に始まったイタリアにおける精神医療の変革は現在もその持続の中にあるが、それはいわゆる「精神の病」に対して、「身体」と「制度」という私たちの存在の二つの事実性の次元を問題にしている。しかしこれらは別々のものではなく、相互に交叉するキアスムの関係にある。メルロ=ポンティの「制度化」の概念を手掛かりとして、精神医療実践における「身体」と「制度」の問題について考察する。
  • ポスト社会主義期スロヴァキアの事例より
    神原 ゆうこ
    セッションID: E-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本報告は、スロヴァキアの村落地域において、社会主義時代から続く村落部のアソシエーション活動が、1989年以降「市民社会」の一員としての自覚を持ち始めた担い手によって変容したことについての分析を中心とする。中東欧の旧社会主義国において、言説としての「市民社会」の概念は、社会に一定の影響を与えてきたが、ここでは、個人の行動に注目し、「市民社会」の受容のあり方についての人類学的な検討を試みたい。
  • 森 明子
    セッションID: E-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    この発表では、アソシエーション的な集まりのなかで構築される共同性について報告し、このアソシエーション的活動を形容するソシアルという概念について検討する。このような共同性が、1960年代以降の経済的・政治的文脈のなかで構築されてきたことを明らかにしたい。こうした動きが同時期の社会科学の言説、とくにアドルノらの批判理論と、パラレルに展開していることにも留意する。
  • ハイパーインフレーション下のジンバブエにおける通貨の使われ方
    早川 真悠
    セッションID: E-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    超インフレーション下のジンバブエにおいて、通貨「ジンバブエドル(以下、 ZWD)」は、日々その価値を失う、銀行から現金をおろせない、お釣りがない、「使い物にならない、役に立たないカネ」である。ZWDをめぐる交換方法や扱われ方は、通常考えられる近代貨幣交換や扱いとは異なった様相を呈する。 使い物にならないはずの貨幣の使われ方について、事例をもとにジンバブエにおける特殊な通貨のあり方について考察する。
  • ガーナ南部における商品としての健康の複数性をめぐって
    浜田 明範
    セッションID: E-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、2004年にガーナ共和国に導入された国民健康保険の展開に注目しながら、商品としての健康の複数性を明らかにしようと試みる。健康保険の存在は、加入者と非加入者の医療費の拠出時期や拠出方法を差異化しているが、それに伴い医療費負担における社会関係のあり方も変化している。本発表は、上記の点に注目しながら健康保険の導入が当該地域で暮らす人々に与えた影響の一端を明らかにするものである。
  • エチオピアの都市住民による葬儀講活動の経験
    西 真如
    セッションID: E-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では、エチオピアの首都アジスアベバで葬儀講の活動に関わる人びとが、仲間ではない者、あるいは仲間と認めることが難しい者、たとえば行き倒れ、居候、仲間から離縁された妻、非嫡出子の死に、どのように対応してきたかを検討する。そして人びとが自らつくりだした境界線の向こう側にいる者たちに対して、どのような配慮をすることが可能なのか、またその配慮は、どのようにして正当化されるのか考えてみたい。
  • 北部ナイジェリア、ハウサ社会のリコを事例に
    梅津 綾子
    セッションID: E-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    西アフリカでは生みの親と同居しない子どもが多く、その原因解明が試みられてきた。しかし機能主義偏重によるエミックの欠如や、欧米的親子観を前提にした研究姿勢に対して、近年批判が見られる。発表者はその批判を支持しつつ、ナイジェリア・ハウサ社会における<養取・養育> (現地語でリコ) を、当事者の生活に即して分析する。そして生みの親と〈養(里)親〉と子の、流動的・持続的な相互扶助のあり方を考察する。
  • 牧畜文化研究からの視点
    若林 大我
    セッションID: E-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    中央アンデス高地における牧畜は、調査対象社会の多様な側面を理解するのに有効な視座を提供する。発表者が長期のフィールドワークを行なったペルー南部の先住民共同体において見られる牧畜活動の大きな特徴として、個々の要素をより大きな単位に「積み上げる」運動が挙げられる。この“前構造”概念は、同地域における神話・民話とも関連し、また構造主義的先行諸研究におけるいくつかの問題に対し、ひとつの解釈を与えうる。
  • アンデス農民による祭りのためのネットワーク構築の様態
    八木 百合子
    セッションID: E-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、アンデス農村で行われる聖人祭礼の主催者となった人物の営みに着目し、主催者がいかにして祭礼に係る経済的負担を補っていくのかについて検討する。主催者が多様な人びととの間に構築された関係性を利用することにより、祭礼の費用や労力の負担を補っている点を示すことで、従来、個人の経済的状況から判断されていた祭礼実現の可能性を関係性やネットワークとの関わりから捉えなおしていく。
  • 80年代以降の観光による生産・価格への影響
    平原 かおり
    セッションID: E-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
     メキシコ人類学では、国家資源ともいえる民芸品について様々な論点から議論されてきた。70年代以降はとくに資本主義との関連の議論が中心であった。  民芸品は民族の伝統文化として見なされ、特に90年代以降、オアハカ州では観光資源としても利用されている。しかし民芸品を取り巻く世界の実態は、観光により大きな影響を受けている。本発表はメキシコ人類学における民芸品研究の整理と観光と民芸品の相互関係について考察する。
  • 応用映像人類学の試み
    分藤 大翼
    セッションID: E-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    発表者はカメルーンの地域社会において映像メディア環境の開発に寄与する研究を計画している。その研究は、民族誌映画の制作と上映を通じて、映像メディアが先住民文化の普及に果たす役割を明らかにするというものである。本発表では、「映像メディア環境の開発」という研究課題を、近年盛んになっている応用映像人類学の議論に照らして検討する。
E会場  (5月31日)
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