日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第43回研究大会
選択された号の論文の250件中151~200を表示しています
個人発表
F会場  (5月30日)
個人発表
  • 中井 信介
    セッションID: F-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究ではタイ北部のナーン県における事例から、モン族の豚飼養の文化的な特性を示すことを目的とした。調査の結果、モン族の豚飼養の文化的な特性として、「ゆるやかな舎飼い」環境での飼養、地域の自然資源に拠る餌のシステム、儀礼などでの自家消費を中心とした利用形態、という点が指摘できた。また先行研究を参照すると、飼養環境において「放し飼い」程度が低下し、豚の飼養文化は変容しつつある可能性が示唆された。
  • 環境と資源管理の人類学に関する予備的考察
    関 恒樹
    セッションID: F-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    ネオリベラルな統治性の下での環境主義の浸透とエコ・ラショナルな主体形成に関しては、近年多くの研究がなされてきている。しかしながら、特定の資源管理レジームが内包する権力関係に位置付けられた資源利用者達のエイジェンシーによる実践の側面に関しては十分な考察が行われているとはいえない。本報告では、フィリピンの海域資源管理の事例に依拠しつつ、環境と資源管理の人類学の理論的枠組み構築のための予備的考察を行う。
  • マレーシア・サラワク州グヌン・ムル国立公園周辺のブラワンとプナンを事例に
    佐久間 香子
    セッションID: F-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    マレーシア・サラワク州北部のグヌン・ムル国立公園の玄関口周辺には、同国立公園の設置を契機に形成されたブラワンとプナンという異なる民族集団が生活する居住地(定住地)がある。本発表ではこの2つの居住地を一つの社会空間としてとらえ、そこでのブラワンとプナンの社会文化的な関係の変容過程を、外部社会の政治情勢や自然保護運動の動向と関連付けながら明かにする。
  • 生きられる歴史語りの人類学に向けて
    山口 裕子
    セッションID: F-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
     インドネシア・ブトン島のワブラ社会は、一年をサイクルとする農事暦儀礼をとおして、村の秩序、慣習、宗教を再生させ再確認する。その中の巡礼儀礼では、村の起源地を訪れる道中、年長者が起源来の祖先の歩みについて語る。それは、自らをブトン王国の中心に位置づける点で公定のブトン王国史と対立するが、ワブラ人は自らの語りこそが「真実の歴史」だと主張する。本発表では、ワブラ人にとって語りの「真実さ」を支える、語りと農事暦儀礼を一部とするワブラ村の生の時空間を明らかにする。
  • インドネシア共和国ランプン州における事例から
    金子 正徳
    セッションID: F-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
     インドネシア共和国ランプン州においても、行政によって、さまざまな「文化」振興プロジェクトが行われている。しかしながらそれらは、継続的な事業というよりは、数年以内で、計画の変更、縮小・頓挫・断絶を経験するものが多い。また、日本であればいわゆる「箱もの」と呼ばれるような建築物や、文化・民族象徴的要素を持つさまざまな像を建てるだけで内的な充実を図ることなく終わることも多い。ランプン州におけるこのようなプロジェクト(インドネシア語であれば、プロイェック(proyek))に注目し、新秩序期末期からの変化を概観することが、本発表のひとつの目的である。  このようなプロジェクトそのものの質的特徴に注目する時、プロジェクトは、完了させることではなく生み出すことこそが、異動が多い地方官僚(そして地方政治家にとって)のステップアップに欠かせないという事実である。このようなプロジェクトの立案に関わりながらしばしば意見の対立を口実として辞任する学者たちのすがたも見えてくる。発表者は、こうした地域社会におけるエリートたちが、プロジェクトという形で文化を消費している状況として捉えている。
  • インドネシア、メダン市の土地紛争にみるポスト・スハルト期の法と社会
    高野 さやか
    セッションID: F-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、インドネシア・北スマトラ州メダン市で進行中の土地紛争を事例として、ポスト・スハルト期における法と社会を分析する。ここで対立しているのは、慣習法(アダット)を旗印にした先住民団体と、国家法(フクム)によってたつ国家ではない。アダットをよりどころとする主張も対立を内包しており、それぞれの主張がアダットにもフクムにも依拠しているという、入り組んだ状況なのである。
  • 大久保 豊
    セッションID: F-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、フィリピンの「アーニス」と呼ばれる武術の実践活動の分析を通じて、様々な形態を持ったフィリピンの格闘的な技法が、どのような要素によって個々の差異を超えて「アーニス」として認識されているのかを、a.実践形態の分類、b.歴史的英雄の逸話を用いたアーニスの形成史の形成、c.師匠-弟子といった集団内の人々を結びつける、人間関係のありようといった観点から考察しようとする。
  • ―インドネシア・バリ島における鉄製ガムラン「スロンディン」の普及にみる民族意識の変化―
    野澤 暁子
    セッションID: F-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    21世紀初頭よりインドネシア共和国バリ島では、バリ先住民「バリ・アガ」の伝承する音楽「スロンディン」が、中南部を中心とした一般の村落で広まっている。本発表では現地での聞き取り調査や現代バリの社会的動向の実態から、この現象の要因となっている文化意識の動きを分析する。
  • 増野 亜子
    セッションID: F-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表はバリ島の伝統的な器楽合奏ガムランのパフォーマンスにおいて、身体の動きがいかに生み出され、またどのように知覚されているかを論じる。演奏者のガムラン合奏に携わる演奏者の身体は(1a)必要な音響を生み出す(2a)奏者間の相互作用を可能にする(3a)音響を可視化して表現する、の三つの機能をもち、各機能は(1b)個人的な技能の習得過程、(2b)他の演奏者との合奏、(3b)競技会など観客のいる演奏という演奏文脈において、顕著になる。三つの機能は連動しながら、演奏者の身体をつくりあげているが、その際に演奏者個々の身体はつねに他者に同調し、同時に他者の同調を誘うものとして形成されると考えられる。
  • 市場化・国際化するラオス社会のなかの染織文化
    伊藤 渚
    セッションID: F-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    ビエンチャン周辺の手織物工房オーナーも、工房や村の織手も、ラオスの歴史がもたらした様々な現実の中で織物をしてきた。ラオ=タイ系諸族の女性たちの間には母から娘へと受け継がれている手織物の技術があり、それが家族を支えてきたし、現在の手織物工房での生産をも支えている。こうした状況下に成立している手織物工房の経営には、経済的利益の追求とともに、社会関係が要求する相互扶助の慣行の実践が求められている。
  • ジャワ中部バティック労働者の事例
    佐藤 純子
    セッションID: F-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は生産労働が近代的な管理手法によらず組織・継続される成立状況を観察・分析する際のアプローチの試論であり、その中でも自律的な労働過程の成立要因として半製品に着目する可能性を検討したい。
  • ラオス南部チャンパサック県パクソン郡、コーヒー栽培農村を事例として
    箕曲 在弘
    セッションID: F-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
     フェアトレードは、コーヒーやカカオなどの一次産品の生産者に対して、技術支援や取引価格の公正化を目的として行われている。このような背景から人道的に好ましい経済的取引だと考えられているが、生産者にとって本当に望ましい取引なのだろうか。この問いをめぐって、ラオス南部のコーヒー栽培農村に行った聞き取り調査をもとに、フェアトレード生産組合の運営が住民の生活に及ぼした影響について検討する。  
  • ―カンボジア3つの地域における、子どもが生きる他者関係のクオリティ―
    西田 季里
    セッションID: F-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、発達学/教育学とは立場を異にする人類学としての、子ども研究の展開可能性を探るものである。2006年5月から2008年3月までの期間に行ったカンボジア3つの地域(農村、公立孤児院、スラム再定住地区)でのフィールドワークデータを用いて、子どもの日常生活における他者関係のバリエーション及び関係性を分析し、個人能力の発達という価値観に対する反定立及び人類学独自の子ども研究の視点を提示する。
  • 久保 忠行
    セッションID: F-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表の目的は、難民キャンプの諸相を明らかにすることである。従来の研究では、社会や文化の復興や再構築という視点から、キャンプ社会が分析されてきた。それに対して、本発表では故地とは異なる新しい社会形成の場として難民キャンプを分析する。また社会形成の場としてだけではなく、キャンプの周辺村や第三国定住との関連から、経由地としてのキャンプの側面についても明らかにする。
  • 広州、香港、バンコクを比較して
    栗田 和明
    セッションID: F-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    タンザニア人交易人が、広州、香港、バンコク、とアフリカ各地を結んで交易に従事している。この活動は、1990年代、あるいは広州では2000年以降にとくに顕著になっている。これらの交易を可能にする条件の一つは、東南アジア=アフリカでの価格差が非常に大きいことである。広州ではタンザニア人レストランを中心にしたタンザニア人の一種のコミュニティができていると判断される。しかし、その歴史は短く、継続性も不安定である。
  • ―親族ネットワークと福祉友の会の役割―
    伊藤 雅俊
    セッションID: F-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、インドネシアの北スマトラ地域と東海地方とを結ぶ、親族ネットワーク並びに日系人の親睦を兼ねた互助組織である福祉友の会・メダン支部が、日系インドネシア人の労働移動に及ぼす諸影響を考察するものである。具体的には、北スマトラ地域に残る人々の日本就労への意志決定や東海地方における日系インドネシア人の適応過程に顕著な影響力を持つことを明らかにする。
  • A Hakka Community in Sarawak, Malaysia and their Social History
    Elena Gregoria Chai
    セッションID: F-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    This paper describes a Hakka community and the identity affiliation of their past which is associated with a temple. In the 1960s during the communist insurgency, they were forced out of their original land, and were relocated to another place. The temple still remains in its original location, and has become an entity which the community attest high importance to, which they identify as the beginning of their origins, thus reaffirm their identity in present day life.
  • マレーシアの華人家族の事例から
    櫻田 涼子
    セッションID: F-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    マレーシア華人の生活空間は、都市部と田舎町という移動する複数の地点を巻き込みながら拡大し、人や場所との多面的な関係性を構築しながら形成される。移動しながら関係性のネットワークを張り巡らせることにより、彼らは複数の場所を移動しながらも安定的に生活すること、つまり移動しながら、根を下ろすことが可能となる。本発表では、この一見矛盾するように見える「移動しながら根を下ろす」プロセスを、あるマレーシア華人家族の事例から示したい。
  • 文化遺産保護に関するユネスコの「国際基準」とその批判
    田中 英資
    セッションID: F-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、国際的なレベルでの文化遺産の扱いをめぐる議論のなかで、文化遺産の概念がどのように形作られてきているのかについて検討する。特に、今日の文化遺産に関わる言説に大きな影響力を及ぼしているといえるユネスコにおいて、どのように文化遺産概念が形成されているかを分析する。それを通して、文化遺産の扱いをめぐる議論の共通の土台となっているものを明らかにする。
  • -日本における写真展開催の事例から-
    永吉 守
    セッションID: F-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/28
    会議録・要旨集 フリー
    2008年9月、文化庁は旧三池炭鉱の2つの坑口を含む遺産を「九州・山口の近代化産業遺産」のユネスコ世界文化遺産暫定一覧表掲載を内定したが、それ以外の三池炭鉱産業遺産の消失・解体が危惧されている。本発表では、2008年に発表者が中心となって「炭都の風景」を写真で提示する写真展を企画したので過程を提示し、大学や学問のフィールドに対する貢献の議論のきっかけとしたい。
F会場  (5月31日)
個人発表
G会場  (5月30日)
個人発表
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