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市野澤 潤平
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3
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
従来の人類学におけるリスク研究は、主に伝統社会における危険への人々の対応を調査してきたが、世界の「リスク社会」化という脈絡において伝統社会/近代社会といった単純な二分法が無化されていくなかで、リスクという問題系への新たな構えが求められている。本分科会は、そのような状況認識のもと、「リスク社会学」による時代診断を追認するにとどまらない、人類学的リスク研究の可能性を提示しようという試みである。
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動物と人間の連続性
田所 聖志, 奥野 克巳
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4
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
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本分科会では、動物と人間の連続性についての民族誌を踏まえて、文化人類学の観点から自然と社会のインターフェースについて議論する。私達の目的は、連続性の概念に注目し、自然-社会の分断に基づく二元論とは異なる視点から、自然と社会の関わりについて問題提起をすることである。発表では、神経生理学の実験室の活動、ボルネオ島狩猟民の動物と人間の関わり、チベットの動物のシンボリズム、ニューギニアの漁撈等が扱われる。
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永吉 守
p.
5
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本分科会では、日本のネイティヴ人類学において、「研究対象者/研究者」と
いった二分法ではなく、「当事者の声」や「当事者や当事者実践に関与する研究
者」あるいは「研究に参与・媒介する当事者」といった存在、さらには「隣人」
や「よそ者」としての研究者の存在などに注目する。そのことによって、こうし
た研究が単なる国内研究や自社会研究なのではなく、「国内や自社会における隣
人としての他者研究」や「当事者兼研究者による自省的な研究」といった可能性
へと広がることを提示したい。
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-ネイティヴ人類学の一形態として-
永吉 守
p.
6
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
ネイティヴ人類学の一形態として、地域のNPOを自ら運営する当事者として、地域住民とともに地域づくりを実施しながらそのこと自体を自省的に研究対象とするといった研究スタイルとその可能性について言及する。
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-『よそ者』との共有の可能性と不可能性-
野口 憲一
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7
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
研究者であると同時に、農業者、農村地域の振興のを目的とする任意NPOの会員という立場から、農村住民・農業者の実践において「よそ者」が共有できる「楽しみ」と共有できない「楽しみ」の存在を示す。これによって当事者の研究への参入と、研究者の当事者性の保持という二つの状況が平衡に行われることの重要性を示す。
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―他者の語りと自己の語りのはざまで―
川森 博司
p.
8
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
日本民俗学の成果をネイティヴ人類学という回路を通して普遍化(脱土着化)する作業の一環として、宮本常一の地域開発に関する実践と言説を取り上げ、その当事者の声に迫ろうとする方法の可能性を検討する。特に「有機的知識人」の役割と「共同作業的民族誌」の作成の議論に結びつけて、「当事者による自己の語り」を「当事者の声」として表現する方法の有効性と限界について、考察を進める。
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オーストラリアクイーンズランド南東部における日本人コミュニティ
長友 淳
p.
9
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
グローバル化が進展した現代における移民コミュニティとそのネットワークの最も新しい動向を示す例としてオーストラリアクイーンズランド州南東部の日本人コミュニティについて考察する。聞き取り調査および参与観察を通じて、現地の日本人移住者の間には日本人クラブなどの組織に依存せず、草の根型ネットワークを形成・維持する傾向や、人口の地理的集中に依存しない定住傾向があることを指摘する。
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インドのマハラシュトラ州ナーグプール市において「不可触民」解放運動に取り組む仏教徒たちとともに生きる日本人仏教僧
根本 達
p.
10
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
インドのマハラシュトラ州ナーグプール市では、仏教徒たちによる「不可触民」解放運動が行われている。この運動を始めたのは、「不可触民の父」と呼ばれるアンベードカル(1891-1956)であり、1956年、30万人以上とされる「不可触民」とともに、ヒンドゥー教から仏教へ集団改宗した。仏教徒たちは、アンベードカルの死後も解放運動に取り組み、1968年以降は、日本人仏教僧である佐々井秀嶺(1935-)が指導者として活動している。
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-フランス南西部におけるマヌーシュ共同体を事例として-
左地(野呂) 亮子
p.
11
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表は、近年のフランスにおける移動生活者/ジプシーの定住化という居住をめぐる文化的・社会的変容を背景に、フランス南西部に暮らすマヌーシュ(Manouches)が定着地域において形成していった地域共同体に着目する。社会組織や社会範疇の問題に焦点をあて、従来のマヌーシュの集団構成の原理がいかに対応し、共同体の境界を組み替えていったのかを考察し、移動生活者社会における共同性の変容と持続について検証する。
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共産党の政策と人々のいとなみの諸相
川口 幸大
p.
12
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
この分科会では、共産党による統治のもと60年を経た今日の中国社会において宗教がいかなる諸相にあるのかを、キリスト教、イスラーム教、チベット仏教、民間信仰についての共産党の政策と、人々の具体的ないとなみに着目しつつ議論する。
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水谷 裕佳
p.
13
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
発表者は、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市周辺地域の都市先住民が語る抽象的な生きづらさが、具体的にはどのような事象として理解できるのか、参与観察や聞き取り調査、文献調査を通じて検証することを試みた。都市先住民が、都市部や大学のような公共機関において先住民のための空間を確保することは、彼らの抽象的な不満や不安を緩和し、ひいては精神衛生の改善やアイデンティティー喪失の歯止めに役立つと考えられる。
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「ものがたり」の視点から
橋本 和也
p.
14
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
観光者が紡ぎ出す観光経験の「ものがたり」とみやげものに注目する。みやげものが観光地を「換喩的凍結化」するといわれるが、「みやげもの」が観光経験の「ものがたり」を再構築するプロセスに注目すると、凍結化されたイメージを「ものがたり」がいかに「解凍」し、観光者の観光経験を思い出深いものとして呼び起こすかが明らかになる。ものがたりがどのように構築され、みやげものが意味ある存在に仕上げられていくかを考察する。
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酒造・飲酒の研究史と日本国内所在資料の関係性を中心として
角南 聡一郎
p.
15
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
連杯という酒器を通じて、日本植民地時代から現在に至る台湾先住民の酒造、飲酒に用いられた物質文化についての研究史と、日本所在資料の来歴の関係について検討する。一見無関係な二つの問題検討するのは、研究者による成果などにより、台湾先住民に特徴的である連杯や、独特の飲酒形態に注目が集まり、連杯もコレクターによる収集の対象になり、この影響下に日本には多くの台湾先住民関連のモノが収蔵されたと考えられるからだ。
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山口 未花子
p.
16
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
カナダ先住民カスカの物語を分析すると、人間と動物というカテゴリーは時に曖昧であり、時系列が意味を持たないというカスカの世界観が浮かび上がる。こうしたカスカの物語は現在も社会の変化を取り入れて再生産され、意味を持ち続けている。特に動物との関係をどのように結ぶべきかという具体的な方法を示した物語は、狩猟など動物との実際の関わりが多いカスカの生活の中で伝統的世界観を伝承する役割を果たしている。
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山口 涼子
p.
17
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
ロシアにおいて葬礼の際に「泣き歌」と言われる挽歌が歌われます。興味深いのは、婚礼においても「泣き歌」が歌われると言う事です。発表者はこの葬礼と婚礼の泣き歌の類似点を研究しています。その中で共通する点は、泣き歌において歌われる主人公が「死」(花嫁の場合は仮の死)を迎えると言う事です。花嫁が持つ「過渡的特性」を軸に、花嫁がどのように過渡儀礼を迎え、それが終わるのか、今回の発表で述べたいと思います。
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ガーナ南部における複数の身体観の共存をめぐって
浜田 明範
p.
19
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
当該地域では、薬剤の使用による症状の緩和が求められる一方で、定期的な服用によって身体を強化することができると考えられている薬もある。本発表では、この薬剤使用の2つのモードがどのような身体観と関連しているのかを明らかにした上で、その共存が(1)特定の概念の曖昧さや(2)薬剤使用の2つのモードの身体を通じた関連を指摘することで、当該地域に特徴的な身体観の再生産を方向付けている布置を明らかにする。
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ラオス山地民社会における精霊
徳安 祐子
p.
20
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表では、ラオスに住むモンクメール系民族カタンの人びとの、精霊についての知のあり方について検討する。精霊に関する知識や実践は、職能者に独占されるものもあれば、一般住民に近い人びとにまで開かれたものもある。村のなかで偏在しつつ、かつ広く布置されているといえる。本発表では、精霊と濃厚に接触したり直接に交渉をおこなったりしない一般の村人が、精霊についてどのように「知る」のかということについて考察する。
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高野 さやか
p.
21
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
現在、従来の司法制度・裁判の在り方に対する問題意識から、新たな手法を選択肢として拡充するという目的を共有する試みが注目されている。具体的には、民事司法におけるADR、刑事司法における修復的司法、平和研究における真実委員会が含まれる。本分科会では、法学者と人類学者の協働作業を通じてこの「オルタナティブ・ジャスティス」について検討する。
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女性の権利と反DVをめぐって
馬場 淳
p.
22
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表は、ドメスティック・バイオレンス(以下、DV)をめぐるパプアニューギニアの現状(とくに法的対策)を踏まえて、マヌス州における女性の権利と反DVといった啓蒙主義的な概念(イデオスケープ)の浸透と変容を考察する。具体的には、グローバル化のエージェントとしてピヒ・マヌス協会に主たる焦点をあて、女性の権利や反DVに関する語りと態度を具体的に検討する。
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南インド・Karnataka州Bijapurでのはり・きゅうボランティアの分析から
足立 賢二
p.
23
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
国際協力活動(保健・医療分野)における「民間医療」の実態を把握し、今後の研究上の課題を検討する目的で、南インドKarnataka州Bijapurにおいて2000年以降実施されてきた、はり・きゅうを用いたボランティア活動を概観した。一連の活動は「観光」の観点から検討できるほか、参加鍼灸師にとって「治療実践」を主眼とする「医療専門職」としての自己規定を意識する重要な場面となっている点を指摘した。
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ジャマイカ、エチオピア・アフリカ黒人国際会議派ラスタファリアンにとっての救済と「アフリカ人」らしさについて
神本 秀爾
p.
24
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
ジャマイカのラスタファリ運動は、エチオピア皇帝ハイレ・セラシエを救世主とする「真のキリスト教」を自称する。運動は同時にアフリカ性の積極的肯定とともにアフリカ大陸への帰還を要求してもいる。本発表は、エチオピア・アフリカ黒人国際会議派ラスタファリアンを対象として、宗派内部において救済とアフリカ性の積極的肯定が「アフリカ回帰主義」「聖書主義」によって正当化される過程を明らかにする。
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藤原 惠洋
p.
25
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
発表者は、長期にわたり建築史学フィールドワーカーであるとともにまちづくりオルガナイザーとしても実績と研究を積み重ねてきた。そして、市民がまちづくりの当事者として参加することは、住民の主体化という自律的市民意識の成長と市民社会の成熟を促すものとしてその可能性が広がってきた。
本発表では、当事者参加のまちづくりと建築史の相互触発作用の可能性と不可能性を自省的に振りかえる。
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玉山 ともよ
p.
27
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
米国南西部ニューメキシコ州を中心とした、ウラン鉱山開発問題に対する、MASEという広域的な市民の環境正義運動について報告する。地下資源に頼らない自然再生エネルギーを基調とする社会を、どのように構築していくのか、その実践について分析する。事例として、ウラン資源が豊富な近隣先住民族より聖山とされるテーラー山が、2009年6月にニューメキシコ州の文化遺産として認定を受けたことについて考察する。
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奈倉 京子
p.
28
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
宇治市平盛地区における団地自治会や教育現場の取り組みの考察から、日本人と中国人の共生を考える。同時に、言葉だけでなく、文化を双方に伝え、架け橋的役割を担えるような草の根的な「翻訳者」として、外国人を受け入れる日本社会の問題(行政制度、政策、外国人に対する偏見など)に対し、人類学者がどのように介入し支援できるのかということについて議論する。
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フィリピン・マニラ貧困層地区の事例から
関 恒樹
p.
29
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
ネオリベラルな統治性が浸透する今日の都市空間において顕著になるのは、特定の合理性を内面化した「市民」によるコミュニティの形成と、一方で「市民」として認められない人々の排除のプロセスである。本報告は、フィリピン・マニラ首都圏の都市貧困層地区の事例から、そのような排除と包摂を通した都市統治のあり方を浮き彫りにし、ネオリベラルな都市空間の再編と人々の生活世界とハビトゥスの変容を明らかにする。
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横浜市鶴見区における沖縄・日系南米移民の食
安井 大輔
p.
31
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
接触領域における食を通じたエスニシティのあり様についてフードビジネスの観点から報告を行う。横浜市鶴見区の臨海地域は、現在、沖縄と南米の両文化が混じる接触領域となっている。多文化が混交する状況では、異なる文化や言語をもつものとの接触が必然的に発生する。発表では、そのような接触領域における諸問題を提示し、食に関わる実践者たちの日常的な実践の中に、共生および新たな文化創造の可能性を汲み出すことを試みる。
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山崎 幸治
p.
32
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表では、北海道(札幌市)においてアイヌ文化に関する博物館展示をおこなった事例をもとに、そこで得られた成果および文化人類学的課題について報告する。本発表は、先住民族(アイヌ民族)と教育研究機関(北海道大学)が、大学博物館という場所において協同で展示をおこなった場合の一事例と位置づけられる。
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「剪紙」をめぐる、芸術家と「フィールドの人々」の「流用」プロセスの考察
丹羽 朋子
p.
33
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
中国・陝北地域の剪紙(切り紙)は家庭の女性を作り手とする、窑洞(横穴式住居)生活に不可欠の装飾品である。20世紀前半より様々な歴史的背景から陝北に滞在した芸術家達は、剪紙に魅せられて収集や技術指導に取り組む一方、その経験を自身の芸術実践に反映させてきた。本発表は、彼らと農村女性の創作活動における相互的な「流用」プロセスを焦点化し、民族誌的手法を採る芸術実践の人類学的研究に新たな視角を提起する。
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パキスタン系イギリス女性の事例から
工藤 正子
p.
35
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表は、パキスタン系イギリス女性を事例に、ムスリム移民の就労実践にジェンダーとその他の差異がいかに交差するのかを明らかにしたうえで、近年増加する高学歴のパキスタン系女性に焦点をあて、彼女たちが就労をとおして主流社会やエスニック・コミュニティなどにおける重層的な関係性をいかに再構成し、多文化化するイギリス社会において、どのような位置を築こうとしているのかを検討するものである。
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フィリピン地方都市の無職者からリスク社会を考える
東 賢太朗
p.
36
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
リスクは、未来の不確実性への対処という人間の根本的な思考や行動とかかわっている。しかしながら、新自由主義的なリスク社会においては、強者と弱者の格差が増大し、社会的な信頼や連帯の可能性が奪われている。それが特に表れているのが、日本の若者の教育や労働に関する議論である。本発表では、フィリピン地方都市の無職者の若者たちの事例から、新自由主義的リスク社会へのオルタナティブを模索する。
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現代バングラデシュの青年期と社会変容
南出 和余
p.
37
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本研究は、現代バングラデシュ農村社会における青年期(10代後半)に焦点をあて、当該社会における「子ども」から「おとな」への移行の在り方と、そこに見られる社会変容を明らかにする。当該社会の青年期の現状は、1)就学、2)就労(とくに出稼ぎ)、3)結婚、に大別される。その進路選択を促す内的かつ外的力を、現代バングラデシュの社会状況と照らし合わせながら明らかにし、現代バングラデシュの特徴を検討する。
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人類学の拡張可能性を考える
伊藤 泰信
p.
42
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
「人類学で/を豊かにすること」が主題である。一方で、他領域の研究や実務活動等を、人類学「で」豊かにできないか(人類学が他領域(学・実践)に貢献しうるとすれば何か)という問いと、他方、領域の研究者や実務者らの知見、あるいはそれらの人々との協働(に伴う不調和・摩擦)の経験によって人類学「を」豊かにできないかという問いの、双方向を同時に対象化し、人類学の可能性や可変性・拡張可能性を考える。
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製作・着用・儀礼での使用における変化から
宮脇 千絵
p.
43
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表では、中国雲南省のミャオ族を事例に、彼らの衣装の素材となってきた麻が近年急速に減少している現象を取り上げ、そのことが製作と着用という服飾としての役割および葬儀を代表する儀礼にどのような変化をもたらしているのかを考察するものである。大きな負担となる衣装製作と、重量のある麻の衣装の着用から「解放」されたミャオ族だが、麻を完全に捨て捨て去らないのは、死者をみおくるために必要だからである。
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スリランカ伝統医療の診療現場から
梅村 絢美
p.
44
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表では、スリランカで実践されている伝統医療の診療において、医師が、患者による症状の訴えを聞くことを忌み嫌い、脈診だけをたよりに、患者の病状を診断する事例をとりあげながら、医療人類学における「病いの語り」研究において重要視されている語ることの重要性との関係から、「語らないこと」について考察していく。
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旧ソ連領中央アジア・クルグズ(キルギス)北部農村におけるイスラーム宗教職能者と体制転換
吉田 世津子
p.
45
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表ではクルグズスタン(キルギス)北部に位置するK村を対象に、「モルド」と呼ばれるイスラーム宗教職能者を特に取り上げる。どのような人びとがどこでどのように教育を受けてモルド/イスラーム宗教職能者となったのか。一地方農村のイスラーム信仰実践を支えるイスラーム宗教職能者に対し、ソヴィエト連邦の成立と崩壊という体制転換がどのような意味を持ち影響を与えてきたのか、世代交代に注目し考えてみたい。
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異質なモノとしての隣接・他領域に対峙する
後藤 晴子
p.
47
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表は、報告者がこれまで関わってきた老年学や高齢者向け事業起業のプロジェクトへの参与の経験から、異質な隣接・他領域との新たな議論の可能性を探ることにある。具体的には(1)老年学という学問のもつ志向性(望ましい高齢者像の前提や高齢者を社会問題として切り取る視点)と、(2)高齢者ビジネスに対峙することによってもたらされる「違和感」から共同の可能性とは少し違った可能性を提示する。
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人類学で/を豊かにしうるか
伊藤 泰信
p.
48
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
「人類学で/を豊かにすること」を主題にビジネスと人類学について論じる。人類学とは異質な、ビジネス界・企業の実務者らの論理を注意深く見ることによって、あるいはそれらと対話・対峙する経験を通じて、人類学「を」豊かにできないかを問い、人類学の可変性や拡張可能性に繋がりうるような端緒を見出したい。
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村上 忠良
p.
49
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
タイ北部のシャン系住民はタイ国への同化傾向が強いとされるが、その一方でシャン文字を使った独自の文字文化を有しており、様々なシャン文字文書が人々の間で流通している。特に、仏教儀礼の中で使われる仏教文書には高い価値が置かれている。このような文書の作成、流通、使用に重要な役割を果たしている高い文字運用能力を有した在家知識人の分析を通して、タイ国北部におけるシャンの文字文化の現状を分析する。
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北海道浦河赤十字病院精神科を中心に
浮ヶ谷 幸代
p.
50
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本報告は、精神の病いとともに生きる人との関わりの場から、「ケアの場所性」について考察する。具体的には、北海道浦河赤十字病院精神科の取り組みを中心に、(1) 退院予定患者を支援するピアサポーターをめぐるケアの連鎖、(2) 離院患者とのコミュニケーションをとる看護師の実践、(3) 爆発系若者に向き合う応援ミーティングを紹介し、そこに参与する人のケアという営みによって、いかに場が生成しているのかを検討する。
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オアフ島ワイアナエ地区における多様性
四條 真也
p.
52
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表では、ハワイ随一のハワイ人入植地であり、また多文化的性格を持つワイアナエ地区の住民が、「ハワイ人の土地」の住民としての意識を持つと同時に、どう多文化的状況を捉えているか考察を行う。発表では、同地区でハワイ文化継承に関わる活動参加者を例に、様々な文化背景を持つ参加者の土着文化への取り組みの様子、さらにはハワイ人住民が地域の諸文化をどうとらえているか、同地区における文化の多様性に焦点を当てる。
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近接の禁止と魂の連続性
奥野 克巳
p.
53
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
マレーシア・サラワク州(ボルネオ島)ブラガ川沿いの、人口約500人の狩猟民プナンは、動物と人間の近接の禁止と魂の連続性をつうじて、動物に対する生殺与奪をいわば反省なしに行う西洋とも、動物を殺生する宿命を認めながらも、動物の魂に感謝する日本とも異なる動物との関わり方を発達させてきた。本発表では、プナン社会における動物と人間の関係を民族誌的に記述した上で、自然と社会の二元論について再検討する。
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沖縄の2つの離島社会の比較から
加賀谷 真梨
p.
54
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本発表では、国民の幸福の達成を理念とする政府が、異種混淆なアクターに働きかけ、その理念を「翻訳」する過程で具象化される事象として「地域介護」を定置する。しかしながら、沖縄の離島における2つの地域介護組織に着目すると、「翻訳」の過程に「親密性」が介在し、政府の理念との間に「ズレ」が生じている。そのズレに着目することにより、当該社会のアクター間にいかなる関係性が形成されているのかを考察する。
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山崎 吾郎
p.
55
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本分科会では、薬剤の服用、ひきこもり、臓器移植、HIV/AIDS、糖尿病といったテーマをとりあげ、それぞれのフィールドにおける民族誌的な記述と、それらの相互比較を視野に入れて、身体のハイブリッドにアプローチする。そして、従来機械的な秩序とともにイメージされがちであったハイブリッドの概念が、今日の人間や社会、自然や文化について広く論じる上でいかなる有効性を持つのかを議論する。
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日本におけるMSM(Men who have Sex with Men)とHIV/AIDSをめぐる疫学研究
新ヶ江 章友
p.
56
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では、日本におけるMSM(Men who have Sex with Men、男性と性行為を行う男性)に対する性行動をめぐる疫学研究の実践に注目し、疫学研究者が何を、あるいは誰をHIV感染やAIDS流行の「リスク」として対象化し、その「リスク」がどのように数値化され、その数字がいかなる権力のネットワークを構築していくのかを見ていく。主に分析の対象とするものは、厚生(労働)省エイズ対策研究事業の「疫学研究班」の報告書等であり、また実際にこれらの疫学調査に関わってきた当時の疫学研究者へのインタビューなどである。
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杉本 洋
p.
57
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
本研究は、病気を持つ人々を生存者として捉え、「生きづらさ」を表現する活動からその生存の技法をみつめるものである。表現活動は、自助グループや、療法としての芸術とは趣を異にしながら、様々な世界へ作用を及ぼしうるものである。また、一般的には恥と考えられやすく秘匿されやすい性格を持つ内容を表現することは病気を経験しつくす営みの一環であり、「生きづらさ」から創造する生存者の手法を見いだしうる。
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「障害と開発」研究との対話
亀井 伸孝
p.
59
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
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文化人類学者が、異分野・異なるテーマと出会う経験は、「相手の分野に何らかの貢献をする」だけでなく、新しい民族誌の可能性をもたらすという意味で、「文化人類学それ自体を豊かにする」ことができるまたとないチャンスである。本報告では、4年間におよぶ日本貿易振興機構アジア経済研究所の「障害と開発」をテーマとした共同研究への関与を事例として紹介し、新たな民族誌の領域を開拓するための戦略について検討したい。
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西 真如
p.
60
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
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アフリカの農村では近年、HIV簡易検査キットの普及が著しい。このキットは高価な医療設備や高度な訓練を受けた技術者の配置を必要とせず、簡単に感染の可能性を確認できる。つまりそれは、あらゆる場所で「疫学的な他者」をつくりだす道具なのである。本報告ではエチオピアで生活する人びとの経験をもとに、HIV簡易検査キットの普及が、ウイルスに感染した者と感染していない者との関係をどのように変容させてきたか検討する。
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北インド農村社会における参加型開発を事例に
菅野 美佐子
p.
61
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
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本発表では、北インド農村社会で実施されている貧困女性の生活および地位向上を目的とした参加型開発プログラムに焦点を当て、プログラムの一環として実施されている村落議会議員の選挙活動を事例に、参加型開発というある種の「共同体」内部で参加者たちが選挙活動を通じてつくり上げている新たな関係性や共同性がどのような社会的意味をもち、既存の議論にどう位置づけられるのかを事例やデータの提示と分析を通じて考察する。
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神経生理学研究室の事例検討
池田 光穂
p.
63
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
フリー
この発表は、(1)動物を対象にする神経生理学者が研究的生活の中で意識する「自然」の概念と、(2)それが日々の実践にもたらすもの、さらには(3)その実践を通して「自然」の概念が維持され再構成されるに際にみられる具体的な諸相について、視覚情報の脳内での神経学的処理機構を実験動物を使って研究する日本の大学の実験室を事例にして検討する。
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解決方法の選択背景を探る
上原 周子
p.
64
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20
会議録・要旨集
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中国青海省海東地区にある4つの多民族集落は1つの灌漑用水管を共有している。しかし、水盗みや水路の破壊などを原因とする争いが、毎夏、近隣の集落間で勃発する。しかし、その解決方法は各集落間によって一様ではない。各集落間には様々な人間関係が形成されており、そこに付随する利害も異なる。人々はそれを考慮し、その状況に最も適した解決方法を選択するのである。
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