政府(行政),非営利組織(NPO),企業がセクター間の垣根を越えて資源を持ち寄り協働するクロスセクターのネットワーク組織について,マネジメントコントロールの観点から研究するために,その概念を整理し,研究の可能性について検討した。組織間マネジメントコントロールや戦略マネジメント等の知見に基づく研究の可能性がある一方で,必ずしも契約に基づかない緩い関係で結びついている組織の業績管理のあり方など,組織の特徴をふまえた研究が必要である。
本稿では,ビジネス・エコシステムの形成を目指す会員組織のマネジメントと会員企業のMCSの関係を検討する。会員は管理会計をはじめ経営知識を学ぶ一方,会員組織は景況調査の結果から政策提言や地域貢献を目指しており,両者は共進化の関係にあり,会員組織への参画と企業のMCSの進展は対立するものではないことが明らかになった。
本稿では産業クラスターを会計対象としたメゾ管理会計について論じる。メゾ管理会計には,マクロ会計からのアプローチと,ミクロ会計からのアプローチが考えられる。前者の例として,産業クラスターへの産業連関表の応用,後者の例として組織間管理会計や,バランス・スコアカードの拡張的適用などの可能性について論じた。
社会が複雑化するにつれて,共通の目標を持つ複数の組織がネットワークを形成し,財・サービスの提供を行う事例が多くみられる。既往の管理会計は,ネットワーク全体ではなく,ある特定の組織に焦点を当てて当該組織のパフォーマンスを最大化させる手段としての組織間協働の在り様について論じてきた。本稿では,ネットワークのパフォーマンス向上を企図したガバナンスのための管理会計の構築について検討する。
本研究では,中期経営計画で設定された利益目標を有する事業年度に注目し,当該事業年度の利益目標がコスト調整に与える影響について検証を行う。本研究の発見は,中期経営計画で設定された利益目標が利益ベンチマークとなり,これを達成するための利益調整インセンティブに基づいてコスト調整が行われることを示唆する。
本稿では,日本企業を対象にした質問票調査から得られたデータを用いて,リソース・ベースト・ビューの視点から,環境戦略,エココントロール,組織ケイパビリティ,環境パフォーマンスの関係を分析した。その結果,環境戦略の遂行を支援するエココントロールの活用は,組織ケイパビリティを強化し,さらに環境パフォーマンスを向上させるメカニズムが示された。
本研究は,環境管理会計の新たな課題である社内炭素価格(ICP)に着目し,ICPの導入が企業のCO2排出に与える影響について検証したものである。分析の結果,ICPの導入は必ずしもCO2排出削減をもたらさず,ICPの導入が資本的支出を増加させることでCO2排出量を削減する効果が確認された。本研究の成果はICPを資本予算ないしは投資意思決定に結びつける重要性を示唆している。
目標の期中調整の業績に対する効果は相反する理論的予測が存在し,先行研究の実証結果は一致していない。本研究は,目標の期中調整と業績の関係に関する研究について文献レビューを行い,援用する理論と媒介・調整変数の違いから異なる予測,また研究方法と測定尺度の違いから異なる結果が生じた可能性について考察する。
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