情報メディア研究
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3 巻, 1 号
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解説論文
  • 新藤 透
    2004 年 3 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/14
    ジャーナル フリー
    『新羅之記録』は,中世・近世初期の蝦夷地(北海道)の様子を今日に伝えている唯一の史料である.明治後期から北方領域を研究する歴史家は,必ず使用してきた史料であり,その重要性は今日でも変わらない.『新羅之記録』は,貴重な史料ではあるが,編纂者が近世期の蝦夷地の大名である松前氏の一族,景広であることから,松前氏の蝦夷地統治が歴史的に正統性を持つように,故意に史実を解釈しているのではないかと指摘されている.それ故,『新羅之記録』自身の史料研究が不可欠であるが,今まで行われてこなかった.小稿では,『新羅之記録』の写本を収集し,書誌事項を明らかにし,簡単ではあるが分類整理を行った.その結果,近代に写本が多く作られ,流布したことが判明した.また,簡略ではあるが写本の系統がみえてきた.更に内容まで踏み込んでの検討が必要ではあるが,その前段階の研究を行ったものである.
  • 河合 章男
    2004 年 3 巻 1 号 p. 11-24
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    本稿は,明治期の子ども向け投稿雑誌『穎才新誌』誌上に,明治20年に登場した俳句欄について考察する.まず,『穎才新誌』の概要をとらえ,19世紀末に子ども向けの投稿雑誌が刊行された意味を把握する.次に,明治20年におけるこの雑誌の俳句欄の参加者が,北海道,沖縄を除く全国に広がっていたことを確認し,その広がりの特徴を分析しつつ,この雑誌への参加者が個人という資格で参加していることから,そこに近代的な文化活動の萌芽があることを考察する.最後に,明治20年におけるその俳句欄の参加者から3人の俳人を推定し,それぞれが果たした文化的役割を調査することによって,『穎才新誌』の果たした役割を考察する.また雑誌というメディアが当時の人々に,地縁を超え,個人として文化に参加する場を提供していたことを論じる.
  • 佐々木 裕一
    2004 年 3 巻 1 号 p. 29-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/23
    ジャーナル フリー
    情報の発信コストを飛躍的に低下させたインターネット上には,消費者によって発信された商品評価情報を蓄積しているウェブサイト(評価サイト)が存在する.消費者の購買行動への影響力が注目される評価サイトと雑誌,口コミの有効度比較を評価サイトユーザーに対する2度のアンケート調査によって実施したところ,商品認知の情報を提供する情報源としても,購買の決め手となる情報を提供する情報源としても,評価サイトはその相対的有効度を上げていることが判明した.筆者は,この結果を個人の認知限界が情報量のみならず情報源量においても顕在化しており.評価サイトが(1)「マス的」な情報源特性,(2)「個人的」な情報源特性,(3)提供される情報の中立性,という3つの要因を全て持つゆえ評価サイトユーザーに選択され,その有効度を上げていると解釈した.
  • 山本 竜大
    2004 年 3 巻 1 号 p. 43-57
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/23
    ジャーナル フリー
    本稿は,東京都議会の広報と都議の情報意識の事例を検討する.90年代以降の議会は,既存の広報紙の発行に加えて,テレビ番組,ICT化への対応を順調に進めてきた.99年12月開設の議会ホームページへのアクセスも伸びている.アンケート調査から都議は,複数の日刊紙を購読し,人気ニュース番組を視聴しやすい一方で,客観性・公平性・公共性,時間配分,キャスターの発言内容に報道の問題性を他方で感じている.政治情報源(メディア)としてインターネットに注目するものの,個人ホームページ開設には支持者の要請が作用しており,PC利用時間やEメール発信数も多くないため受動的な情報発信の態度がある.今後も新情報通信技術は政治の情報公開,広報活動,選挙準備に影響すると考えている.今後は情報メディアを介した政治・政策の成果内容を都議が問われるため,東京都や各都市の政治過程や選挙へのその影響は一層深まるといえる.
原著論文
レター
  • 綿抜 豊昭
    2004 年 3 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/18
    ジャーナル フリー
    『源氏物語』は,後世の文学作品にとどまらず,その他,工芸,絵画といった美術作品など日本の文化に大きな影響を与えている.その一端は,和本の扉絵にもみることができる.『源氏物語』は,各巻の名場面がそれぞれ絵像化され,巻によっては名場面が複数あるため,複数の絵像が作成された.それが『源氏物語』の場面を描いた絵にとどまるのか,その場面をふまえた新たな絵が描かれるなどしたかが,享受の面からの一つの評価になる.「若菜上巻」は後者である点で注目される.この巻では,柏木が女三宮をみる場面が絵像化された.それが和本の扉絵に使用されるようになる.その扉絵が,全ての人に「若菜上巻」と認識されたかはともかく,『源氏物語』に興味を持つ者には理解されたと思われる.今日,その扉絵が「若菜上巻」の絵像をもとにしていることを識別できることは,和書を扱う者にとっての基礎的知識の一つと考える.
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