情報メディア研究
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5 巻, 1 号
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原著論文
  • — 論文引用グラフの固有ベクトル解析 —
    角田 裕之, 小野寺 夏生
    2006 年 5 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/12
    ジャーナル フリー
    目的: 本論は,論文の引用関係をもとにして,研究者のインパクトを示す新たな計量書誌学的指標を提案することを目的とする.方法: 論文(Webページ等の資料を含む)とその論文から引用された論文との関係は,論文をノードとし,引用関係をエッジとする有向グラフで表すことができる.また,同一著者の論文,同一雑誌の論文等の論文集合体をノードとする引用関係グラフも考えることができる.これらの有向グラフに対応するグラフ行列の連立方程式や固有ベクトルを用いて,論文や著者のインパクトを示す指標を与えるいくつかのモデルを考案,検討する.結果と考察: 論文のインパクト評価モデルとして,次の2つを提案した: (1)引用元評価値配分モデル(DCM),(2)学術知識プールモデル(KPM),いずれのモデルも,引用が必ず過去への1方向であるという論文の特性を考慮して,インパクト評価指標としての連立方程式や固有ベクトルの解の存在を保証する工夫をしている.次に,著者のインパクト評価モデルとしてResearcherImpact(RI)を提案した.これは,グラフ行列の要素として,ある著者が引用した他の著者の論文数を用いる.計量書誌学の主要研究者15人に対し,この手法を適用した.結論: (1)ここで提案したDCM,KPM,RIでは,単純な被引用カウントに比べ,被引用数の多い論文/著者(ハブ)からよく引用される論文/著者が高い評価値を得る.すなわち,インパクトの高いコミュニティの抽出に有効である.(2)RIを用いてインパクトを計算する際には,同分野かつ同時代の研究者を対象とすること,自己引用及び同一所属機関内/同一研究グループ内の引用に注意することが必要である.
  • —S.Turkleの多重自己論にかんする考察を通して—
    河島 茂生
    2006 年 5 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/23
    ジャーナル フリー
    本稿は,システム論的視座,とくに基礎情報学的視座からTurkleの多重自己論を検討している.しばしば指摘されるように,Turkleは,インターネット上の経験によって多重な自己が喚起されることを報告している.しかしながら,システム論的視角からみると,Turkleの議論は,インターネット空間における多重な自己の考察にとどまってはいない.複数の自己それぞれは,社会構成的拘束や人格史的拘束を受けており,一貫性ある表現が求められている.また,心理は,それ独自の内的メカニズムをもっており,多重な自己の受け入れかたもその内的メカニズムに拠っている.システム論的視角からみれば,Turkleの多重自己論は,これらの点をきちんと踏まえて立論されていた.しかしながら,Turkleの個人ウェブページにかんする議論には疑義を挟まなければならなかった.Turkleの個人ウェブページにかんする言明は,いくつかの条件が満たされた場合にのみ妥当する.
  • —グラフィカルユーザインタフェースによる画面表示の法的保護について—
    松縄 正登
    2006 年 5 巻 1 号 p. 53-68
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/30
    ジャーナル フリー
    コンピュータ等の情報機器の画面表示を,知的財産法の保護対象とすることについて,さまざまな動きがみられる.アクティブで操作可能な画面表示を提供するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)は,1980年代後半から一般に使用され始めたが,ユーザと開発者の両者に利便性等の面でメリットがあることから,急速な広がりをみせ,今やコンピュータ・ソフトウェアにおいて不可欠の存在となっている.その一方で,GUIによる画面表示の法的保護には,さまざまな問題が山積している.一つは,GUIによる画面表示をどの法律で保護すればよいかという問題である.現状では,特許法や著作権法において多くの判例があるが,そのなかで,事例として「一太郎・花子」事件と「サイボウズ」事件を取りあげ,画面表示の保護の現状分析をするとともに,課題と展望を探ることが本稿の目的である.
解説・資料論文
  • —日本近代文学館の復刻を中心に—
    岡野 裕行
    2006 年 5 巻 1 号 p. 21-38
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/12
    ジャーナル フリー
    一般に文学館の機能には,「図書館的機能」と「博物館的機能」の二つがあるとされている.だが,図録,館報,目録,復刻などの発行物があるように,文学館には第三の機能として「出版者的機能」も含まれていると考えられる.その中でも復刻は,研究者に新たな事実の発見を促し,通時的な事実の確認を可能とするために,日本近代文学研究において重要な資料となっている.日本近代文学館の図書と雑誌の復刻を調べたところ,累計で2,056冊の発行冊数となっていることを確認した.また,1967年から1985年までの間に,そのうちの95%が作製されていたことが判明した.1986年以降に復刻がほとんど作製されなくなった理由として,復刻を望まれる資料の払底,他の出版者の参入,著作権,原本の未入手,復刻技術の消散,資金不足があったと推測される.
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