一国の貿易量はその国の港湾能力を超えることはないといわれているように,港湾計画においての適切なる規模の決定および管理,運営は国家貿易経済活動上から重要なことである。また同時に海陸輸送の物流拠点として国民福祉,流通経済上からもインフラストラクチャーの活動として重要なことである。本研究においては港湾を物流施設とみて,さらにこれを利用する船舶,貨物を含めた一つの待ち行列システム(港湾・船舶系)としてとらえ,まずこの系における利用者(船舶など)の到着や係岸荷役サービスの時間的分布特性をコントロールしたり,バース数をコントロールすることによる待ち損失時間の減少効果の程度を考察してみた。つぎに在来型港湾・船舶系(ランダム到着,k=6のアーランサービスに限定,本船の荷役装置使用)内の貨物流動に伴なう物的流通原価Physical Distribution Cost(沿岸荷役,本船荷役,上屋施設,岸壁施設,在港本船,船舶雑費および在港貨物金利の各コストの合計)の最小化基準を用いて,施設規模計画,運営状況(最適な取扱貨物量,バース数,バース能力,バース利用率など)のシステムズアナリシスをおこないつぎのことがらを得た。(1)到着時間間隔を規則化してゆくとランダム到着システムにくらべて待ち時間を50%以下に減らし得る。(2)係岸荷役サービス時間を規則化してゆくとランダムサービスシステムにくらべて待ち時間を50%まで減らし得る。(3)到着時間間隔と係岸荷役サービス時間の両方を同時に同程度の規則化をしてゆくと,ランダム到着,ランダムサービスシステムにくらべて待ち時間を20%以下に,ひいては皆無まで減らし得る。(4)単独バースの分離利用方式よりも複数バースの並列グループ利用方式の方がバース当りの能力が向上する。(5)最適な運営としてバース利用率は49〜79%(1〜16バースの場合)が望ましい。(6)本船荷役能力が向上するとバース当り能力が向上し,系のコストも低下し同一年間貨物量に対する設置バース数は少なくてすむ。(7)系のコスト中で二大要素は船舶費とバース施設費であり,これらのトレードオフ関係により最適規模が決定される。またさらに別の見方によると港湾荷役装置の最適能力決定は船舶費と港湾荷役装置費の相対比に依存し,船舶費が相対的に高いときは荷役能力を大きくし,また逆に港湾荷役装置費が相対的に高いときは荷役能力を小さく決定しなければならない。
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