前報の研究においては,自己研摩型防汚塗料(SP型塗料)の採用が,船底の長期間にわたる清浄性保持にきわめて有効で,省エネルギー効果の高いことを実験的に確認している。この実験の途中で,プロペラの汚損が船底の汚損と同程度に燃料消費量に影響することが判明した。本報においては,プロペラ表面の長期間にわたる清浄性保持のため,プロペラ表面にSP型プロペラ塗料を塗布した場合の利点と欠点を,基礎実験と実船実験によって確かめ,船底に対するSP型A/Fの塗装効果と合せ,その省エネルギー性について考察した。実験は,1)静的,動的な室内基礎実験,2)実験船による海上実験にわけて行なわれ,次のような結論を得た。1)SP型プロペラ塗料はすぐれた密着性と研摩効果により,生物附着と金属腐蝕によるプロペラ表面の粗度増加が抑制され,ほぼ建造時のプロペラ効率を維持することができる。2)プロペラ塗装のための粗度増加によるプロペラ効率の減少は無視してよい。3)プロペラ塗装による船底鋼板の電蝕作用に対する悪影響は認あられない。4)SP型船底塗料と同じく,繋船中の防汚効果も十分期待できる。5)このSP型プロペラ塗料は,SP型船底塗料と併用すれば図1のG点に示したようなプロペラ汚損によう燃費係数Cの低下を防止することができ,漁船の燃料使用量の軽減,入渠回数の節減に寄与するものと考えられる。
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