観光研究
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特集号: 観光研究
33 巻, 3 号
Vol.33 特集号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
論文
  • ―ブラックプール・トラムを事例に―
    藤井 秀登
    2021 年 33 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本稿はヘリテージ・ツーリズムについて、クロノトポスの視点から考察している。クロノトポスとは、時間と空間の統一的な認識を意味する。したがって、クロノトポスは表象対象の世界と表象された世界とを結びつける働きをする。ヘリテージ・ツーリズムは、相互に関連しあう文化的、場所的、ビジネス的な領域から構成されるヘリテージを、人文観光資源として商品化したものである。観光者は、商品化された人文観光資源であるヘリテージを訪れ、具体的な出来事を視知覚を通じて経験していく。観光者は自身のクロノトポスを介して、商品化された人文観光資源としてのヘリテージと対話している。ヘリテージ・ツーリズムにおけるクロノトポスの事例として、イギリスの海浜リゾートであるブラックプールを取り上げ、ヘリテージ・トラムと沿線の景観を考察した。その結果、両者が一体化するようにクロノトポスが組み込まれていることが明らかになった。

  • ―シリアスな観光に着目した Web アンケート調査をもとに―
    佐野 浩祥
    2021 年 33 巻 3 号 p. 11-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    ウィズコロナ時代の新たな観光スタイルとして提唱されたマイクロツーリズムの実態を明らかにするとともに、マイクロツーリズムと地域愛着、観光の真剣さとの関係について考察した。20~30 歳代の若者に対する Web アンケート調査によって収集された 700 サンプルをもとに分析を実施した結果、コロナ禍以前からマイクロツーリズムは実施されていたこと、普段真剣な観光を行っている観光客ほどマイクロツーリズムを実施していること、マイクロツーリズムを実施している観光客は当該地域に対する愛着が比較的高いこと、普段真剣な観光を行 っている観光客ほど関係人口になる傾向にあることなどが明らかになった。

  • 外山 昌樹
    2021 年 33 巻 3 号 p. 19-26
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本研究は、1960 年代の海外旅行市場におけるテレビ CM の内容分析を目的に実施した。「20 世紀のテレビ CM デ ータベース」に収録された CM を調査したところ、パッケージ・ツアーに関する CM では、日系航空会社(日本航空)は商品ラインアップの豊富さと添乗員やガイドがつく安心さをアピールしていたのに対し、外資系航空会社は、自社の伝統をアピールしていた傾向が見られた。航空サービスに関するCM では、初期の海外旅行市場に特徴的な内容として、現地で日本語対応が可能である安心さをアピールした CM が複数見られた。

  • 大室 聡志
    2021 年 33 巻 3 号 p. 27-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    日本の宿泊業における経営課題には、生産性の向上、従業員離職による労働者の減少、訪日外国人への多言語対応などが挙げられる。また、新型コロナウィルスの拡大により、非接触型サービスの提供という新しい課題も挙がっている。このような状況で、課題解決の一つの策として、宿泊業の IT・ロボット化が考えられ、実際に H.I.S. グループの「変なホテル」や、中国アリババグループの「FlyZoo ホテル」といったロボットホテルがオープンしている。日本の人口の 49%が人工知能やロボットで代替可能になると言われる今、宿泊業の組織モデルはどのように変化していくのか、代表的なホテル施設の運営事例をまとめ、組織モデルの類型化を図った。

  • 守屋 邦彦, 池知 貴大
    2021 年 33 巻 3 号 p. 37-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    ポストコロナ時代の地域の観光振興では、感染拡大リスク軽減の観点から同じ人に1日でも長く地域や施設に滞在してもらうことが重要な視点の1つと考えられる。業務と観光が融合した市場はこの視点に合致することから、本研究では、出張等の機会を活用し出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむ「ブレジャー」に着目し、日本人ブレジャー旅行者の特性を明らかにし、地域におけるブレジャー実施促進の取組みについて考察することを目的に実施した。その結果、宿泊を伴う旅行の経験や年齢、テレワークの実践状況、過去の訪問経験、更に仕事と私生活のバランスが取れていること等がブレジャー実施に関係することが明らかとなった。

  • 具 敏靖
    2021 年 33 巻 3 号 p. 47-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    ホテルマネジメント契約は、経済状況を背景に契約内容、オーナーとオペレーターの関係性などが変動してきた。その変遷の中で、CapEx を巡るオーナーとオペレーターの葛藤が生じ、ホテル経営における CapEx の議論が浮上した。本研究では、ホテルマネジメント契約において浮上したCapEx を巡る諸議論を整理することで、CapEx の役割や位置づけに関する考察を行った。その結果、ホテル経営における CapEx は、ホテルオペレーションにおいては長期的な計画を伴う戦略指標として、ホテルアセットマネジメントにおいては資産価値の可視化指標として位置づけられていると考えられる。

  • 室岡 祐司
    2021 年 33 巻 3 号 p. 55-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本論は、旅行業者の持続的な成長・発展の可能性の手がかりを掴むために、旅行業者の人的サービスの有用性に着目し、人的サービスを利用した理由、旅行先・旅行商品との関係および今後の利用と対価の支払いに対する意識を調査した。結果、「旅行便益の最大化」と「不確実な手配の不安」という利用理由があること、国内と海外、観光・食事付とフリープランによって人的サービス利用に対する意識が違うこと、人的サービスの今後の利用意向や旅行経験が高いほど、接客(旅行相談業務)に対する対価の支払いに肯定的であることが明らかになった。

  • 小原 満春
    2021 年 33 巻 3 号 p. 65-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    ワーケーションとは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語であり、旅先で仕事とレジャーの両方を行う働き方の一つである。コロナ禍によってテレワークが推奨され注目を浴びるようになった。本研究では、ワーケーション意向者に対して理想とする周辺環境に関する調査を行い、ワーケーション意向との関係について、探索的に研究を行った。その結果、ワーケーション意向者が理想とする周辺環境は自然、歴史、娯楽、寒冷、温暖、芸術、利便性、ワーケーション環境となり、理想とする周辺環境から、ワーケーション意向者は環境無関心、デジタルノマド、日本的ワーケーターの3 つの特徴を持った層に分類された。

  • ―東京都日野市における新選組の子孫が運営する資料館に着目して―
    海老沢 結, 川原 晋, 平田 徳恵
    2021 年 33 巻 3 号 p. 75-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    未指定文化財や文化財の周辺環境までを含む歴史文化資源を保全・活用していくためには,行政のみならず,地域全体での取り組みが必要とされる。本研究では,民間アーカイブズの担い手,かつ,未指定文化財等の所有者であり,文化財にふさわしい活用の担い手になる可能性が高い存在として偉人子孫に着目し,その全国の基礎的動向を把握した。また日野市新撰組の子孫をケーススタディとし,子孫が果たしてきた役割や特徴を行政の活動と比較しつつ明らかにした。偉人子孫は,歴史文化資源を伝承とともに継承してきた存在であり,個人史的解説をするなど,行政博物館と歴史の解説手法に違いがあることや,それが観光的魅力となっていることを示した。

  • - 親族以外が事業承継した銭湯に着目して-
    石井 萌美, 川原 晋
    2021 年 33 巻 3 号 p. 85-94
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    銭湯は,日本の生活文化体験を求める外国人等の需要や,文化的価値を評価する動きがある一方,家庭内浴槽の普及や,親族への事業承継の慣例化による後継者不足で減少傾向にある。本研究は生活文化資源として銭湯を継承する可能性を見出すため,親族以外が事業承継した事例に着目して次の 3 点を明らかにした。第一に,事業承継において必ず克服の必要な障壁を明らかにしたこと,第二に,レクリーション利用等の新たな需要獲得のための取り組みを把握したこと,第三に,銭湯独自の建築や設備,道具といった「銭湯資産」の意識的・無意識的な継承状況を把握し,今後の喪失リスクを検討したことである。

  • ―共用栓の現存状況とその意義―
    岡田 昌彰
    2021 年 33 巻 3 号 p. 95-100
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本研究では、共用水道遺産に焦点を当て、日本国内におけるこれらの現存状況ならびに保存に至るそれぞれの経緯と意義を明らかにすることを目的とする。現地調査及び関係機関に対するヒアリング調査を通して情報を収集・整理し、今後の地域資産としての可能性を示した。日本各地における共用水道遺産の現存状況ならびに地域的位置づけについて、各々の移設・復元の経緯をもとに明らかにした。いずれも日本における水道の近代化と各地域への普及過程を端的に示す重要な土木遺産であり、英国と同様の文化財的な価値づけ、あるいは観光資源としての可能性の議論の必要性を提示した。

  • 栗原 剛, 杉澤 奏
    2021 年 33 巻 3 号 p. 101-108
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    わが国の半島地域では、しばしば周遊型の観光振興政策が採用されている。しかしながら、果たして周遊の促進は半島の観光政策として有効なのだろうか。本研究では、半島観光における周遊の価値を明らかにすることを目的とし、三浦半島を対象に実証分析を行った。周遊の定義にあたり、三浦半島の現況の観光政策を反映した「緩やかな周遊」と、より強い制約を課した「厳格な周遊」の二つを設定した。検証の結果、半島の周遊は、観光客と観光地双方にとって価値があることが明らかになった。そして、厳格な周遊を促進することで、人々の交流を創造する等、さらに価値が高まることが示唆された。

  • ―沖縄やんばる地域東村のエコツアーガイドを事例として―
    加藤 麻理子
    2021 年 33 巻 3 号 p. 109-114
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    エコツアーガイドによる自然観光資源の保全に資する活動について、沖縄県東村の事例を対象に文献・ヒアリング調査を行い、活動の展開を分析し、活動の意義を持続可能な観光推進の観点から考察した。利用ルールの設定、環境協力金、フィールド管理を担う役割設定の取組が実施され、利用に伴う配慮として実施するものから、経済的な仕組みの構築やモニタリングを含むフィールド保全に資する活動の直接的な実施へ進展していることがわかった。地域に根ざした現場の生業の中でエコツアーガイドがフィールド管理の役割を担うことは、持続可能な観光の推進の面からも大きな意義があると考えられる。

  • ―都道府県庁の取り組み把握を通して―
    井手 拓郎
    2021 年 33 巻 3 号 p. 115-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    各地域において観光地域づくり人材の育成が必要な状況において、日本の観光地域づくり人材育成の実態はどのようなものか。本研究は、都道府県庁を対象としたアンケート調査を行い、その結果に基づいて観光地域づくり人材育成の現状と課題を明らかにした。40 の都道府県から回答が得られ、分析の結果、次のことが明らかになった。各都道府県においては近年、さまざまな人材育成の取り組みが実施されてきており、中でも観光地域づくりの核となる人材の育成が注目されている。また、取り組み内容は多岐にわたり、その中から複数を組み合わせることが多い傾向にある。さらに、研修の参加者を集めることや研修受講者の事後支援が課題となっている。

  • —鎌倉市を事例に—
    劉 聡聡, 武 正憲, 伊藤 弘
    2021 年 33 巻 3 号 p. 125-133
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本研究は,鎌倉市を事例に,中国人観光者の観光行動と行政による観光推奨ルートを比較し,共通点と相違点からそれぞれの特徴を把握した。中国人観光者の観光行動は旅行口コミサイトの旅行記をもとに,聖地訪問者は「鎌倉高校前」に集中すると同時に,海側へ偏る傾向が示された。非聖地訪問者は山側と海側の両方を観光している傾向が示された。鎌倉市行政推奨ルートは公式モデルコースとパンフレットをもとに,山側へ偏る傾向があることと,山側と海側の観光資源を別々に取り扱っていることが確認できた。山側と海側を結ぶ観光ルートの新設が,鎌倉市の地理的な特徴を活かしつつ,聖地訪問者による集中の回避策として期待される。

  • ―民俗芸能の保存団体の活動に着目して―
    先崎 智哉, 十代田 朗, 津々見 崇
    2021 年 33 巻 3 号 p. 135-143
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本研究では、インターネットホームページの調査及びアンケート、ヒアリング調査を行うことで、国の文化財指定を受けている日本各地の民俗芸能の保存団体が、いかに民俗芸能を公開し、継承と活用を両立させているかを明らかにした。保存団体の種類は、その特徴から 4 つに分類できた。民俗芸能の観光資源化に抵抗がある団体はほぼ見られないが、保存団体として積極的に広く公開する姿勢は見られなかった。保存団体が民俗芸能の活用を進めようとする際には、行政と連携をとることが一つの方策であると示唆された。

  • 足立 大育, 十代田 朗, 津々見 崇
    2021 年 33 巻 3 号 p. 145-151
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本研究は 1980 年代にブームとなったまちづくり運動である「ミニ独立国運動」の持続性について調査したものであり、インターネット検索にて現在活動が確認できたミニ独立国 40 か国を対象にアンケート、ヒアリングを行った。本研究の調査より、持続にはミニ独立国運動の特徴である「パロディで楽しくやること」と「地域の一体感を作ること」が重要であり、持続性のためには住民のやる気と自治体の人材・資金を組み合わせる方法が考えられる。ミニ独立国の活動の持続に初期の施策の充実度は関連しないが、活動の派生には施策の充実度が重要であると考えられることが分かった。

  • ―インドネシアの津波観光地から読み取る災難と神の英知―
    齋藤 千恵
    2021 年 33 巻 3 号 p. 153-162
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本論では、災害観光地を訪れるムスリムの観光のまなざしについて論じる。特に、災難と神の英知というイスラ ームの教えに基づいた考え方に注目し、2004 年インド洋津波被災地アチェ(インドネシア)で行われている津波観光において、何を災害の中に隠された英知として、観光者が見出すのかということを明らかにする。観光のまなざしは文化的に構築されるもので、観光者の日常の中で形成されているものの、災難の中の英知という考え方に根差した観光のまなざしは、観光地での経験とのディスクールを通して形成、再形成される。ムスリム観光者は、平和や経済発展、ムスリムとしての気づきといったものを、神の英知の現れとして観光地に見出す。

  • 野瀬 元子, 手嶋 潤一
    2021 年 33 巻 3 号 p. 163-172
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    19 世紀末の国際観光の特性を明らかにするため、親族間で共有された手紙(日記)に書かれたデータを対象として、同年完成した中禅寺湖畔別荘建設の時代的背景および位置、記録者の滞在生活の詳細な行動・評価の分析を行った。これにより、萌芽期の日本の国際観光が友好的な国際関係構築の一手段として機能していた特性を明らかにした。また、今まで知られていなかったドイツ人外交官トロイトラー別荘の存在、当時の別荘滞在者の情感豊かな筆致による主観的評価を把握した。

  • ―ヴェローナの旅行投稿を事例として―
    杜 国慶
    2021 年 33 巻 3 号 p. 173-182
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    ユーザー生成コンテンツ(UGC)は、スマート・ツーリズムの発展に伴って現れた新しい社会現象であり、団体が有料で作成したものではなく個々の観光者によって作られたものを指す。本研究は、イタリアのヴェローナ市を事例として、旅行サイトに掲載された各観光スポットの言語別投稿数を用いて、言語間の異同と観光スポットの分布を分析する。グラフ理論を援用し類似性を重視して、27 言語を 8 類型、主要スポットを人気観光スポットと都市空間スポットの 2 類型に区分する。各類型の構造と特徴を分析したうえで、言語類型別のスポット分布を考察し、両者の関係性を究明する。

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