航空図は海図が航海のための一主題図であるように, 航空機の航法に用いられる主題図と言える. 航空図の地図としての目的は, 航空従事者, 特にパイロット, 航空士等に対し, 安全な空の航行のための適切な航空情報を効率良く伝達することである. このことから, 航空図はその地図体系において, 歴史的な航空界の発達に応じた様様な利用上での検討が繰り返され, 地図の中で 「誤解を許されない, 主題性の高い地図体系」 として, 極めて合理的に整備されてきた図類といえるだろう. 特に, 第二次大戦後の航空界は, 国際民間航空時代の到来から新時代の国際航空交通の安全, かつ効率良い運行を計る必要性が生じ, 国際的な図式の標準化が民間航空の分野でスタートした. 1944年に成立したICAO (国際民間航空機関) は初の国際民間航空における航空法, 航空技術に関する国際的な標準化の作業を進めた国際機関である. 本稿では, 本誌Vol.20 No.21982, 太田によって紹介されたICAOの勧告する航空図類に関する 「図式規定」 である国際民間航空協定 (1974) の付属文書, 「国際標準及び勧告方式, 航空図, 付属文書4」 の歴史的な変遷を追うことによって, ICAO航空図類が利用者との対応の中で, どのように国際航空界の使用機種, 航法技術等の周辺環境の変化に応じて航空図類体系を整備したかということを概観することを目的としている. これは, さらに, その考察をICAO航空図の個々に於いて詳細に歴史的に考察することによって, 主題図としての航空図の持つ 「地図の特性」 を考察することになり, またひいては, 地図一般の坦う地図の情報伝達機能をつかさどる 「地図の言語」 としての特性を明らかにすることの一助ともなりうるものである.
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