特殊図 (Special purpose map and chart) は特殊な事象を単一もしくは多目的に資するために作成した地図である。元来の特殊図は単一事象をとらえたものが多かったが, 近年の社会様相の複雑性から単一目的に資する特殊図においても多事象を必要とする場合が多く, 近代科学の発展とともに範疇を超越してさらに発展されていくべき性質のものである。
この現象は道路, 交通に関する特殊図についても同様であり最近までの道路, 交通に関する特殊図をみても, 静または動的現象から択一したものを主題としてとりあげた例が多く, 現在の交通現象の特性, 特に都市地域における混雑性などに鑑み, これを定性的にあるいは定量的に表現するかは別問題としても, 静, 動の複合要素をたくみにふん合した特殊図 (このような特殊図をここでは道路交通図と定義しておく) の価値は極めて大であると思われる。
つぎに特殊図作成過程における思考の方法についてであるが, 地図のもつ因果関係は作成過程において因の追求に生起し, これが妥当性あるいは可能性の分析評価によって究極的には結論として意義づけられていくべき性質のものであることは至当の理である。したがってこの過程における思考の方法については当然方法論的解明が要求されなければならないし, 先覚諸氏の多くも強調している所以である。
本稿はこのような複合要素をもつ道路交道図の作成にあたり, その過程における思考の方法を方法論的に解明し, 特殊図作成過程における思考の方法は方法論的に成立しうることを実証しようとしたものである。
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