教育・社会心理学研究
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8 巻, 2 号
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  • 分散学習における実験的研究
    三隅 二不二, 吉田 正敏, 佐藤 静一
    1969 年 8 巻 2 号 p. 147-158
    発行日: 1969/03/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, PM式指導条件が, 知覚-運動学習におけるパフォーマンスとレミニッセンスにおよぼす効果について, 特に分散学習する条件下において実験的に検討せんとするものである。
    課題は, 逆ひらがな書記課題。休止時間は10分, 休止前30試行, 休止後5試行 (何れも1試行30秒)。作業 (学習) 方式は, 分散学習方式で, 試行間休憩は30秒である。被験者は男子高校生。PM式指導条件は, PM類型 (PMI型, PMII型), P類型 (PI型, PII型), M類型 (MI型, MII型) そしてpm類型の7条件である。ここで, PMI, PIおよびMI型は, 作業 (学習) 方式との関連において, 適合性をもった指導類型群であるのに対し, PMII, PIIおよびMII型は適合性欠如の指導類型群である。
    結果は次の通りである。
    休止前試行におけるパフォーマンスの増加量は, PMI型を最高に, PI, pm, PII, MI, PMII型の順位であり, 最低はMII型であった。休止後試行におけるパフォーマンスの増加量は, PMI型を最高に, PI, pm, PMII, PII, MIの順位であり, 最低はMII型であった。
    レミニッセンスに関する結果では, PMI, 型においてのみ有意なレミニッセンス現象が見出され, 他の指導条件下においては, 有意な傾向は見出されなかった。なかでも, PII型, MII型においては, レミニッセンス現象とは逆の有意なパフォーマンスの低下 (休止後第1試行において) が見出された。
    PII型, MII型における休止後第1試試行におけるパフォーマンスの極端な低下, および, PMI型において有意なレミニッセンス現象が見出されたことは, レミニッセンス現象を反応性制止説のみで解釈することの限界を示すものである。
    以上の結果から, 被指導者のモーチベーションを最高度に高める指導類型は, P的機能に, M的機能が相乗された場合であり, かかる相乗作用は, 生活体に顕著な積極的, 内発的な動機づけを喚起するものとして解釈される。
  • 三隅 二不二, 武田 忠輔, 橋口 捷久
    1969 年 8 巻 2 号 p. 159-172
    発行日: 1969/03/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は補佐的集団の成員である看護婦が上位集団である医師に対してもつ看護婦自身の自己勢力を4類型に類型化し (Table 2), 各類型における看護婦の態度及び行動傾向を分析し, 吟味しようとしたものである。なお勢力の類型化は看護婦の認知にょって行った。
    調査対象はK病院の看護婦123名。調査は1966年10月に質問紙に留置調査法を用いて実施した。
    看護婦と医師との相互作用過程において, 看護婦と医師が認知する (1) 看護婦の現有の自己勢力と (2) 看護婦が獲得しょう期待する自己勢力を測定し, (1) 及び (2) のインデックスにもとずき看護婦の勢力認知に関する4類型をえた。
    かかる4類型についての結果は次のとおりである。
    (1) Hh型 ((1) も (2) も高く認知する): モチ天イター及びハィジーン・モラールが4類型のうち最も高く, 不安傾向が最も低い。同僚集団忠誠得点は最も高い。そして, 医師の監督行動はPM型であると見做し, 看護婦にとってプラスになる事柄のみならずマイナスになる事柄に関しても積極的に医師と接触しようとしている。従って, Hh型は最も安定し, 意欲的であり, 同僚及び医師に対して好意的であると考えられる。
    (2) Hl型 ((1) は高いが (2) は低い): モラール, 不安傾向及び同僚集団忠誠得点はHh型に次いで高い。また, 医師のリーダーシップ機能をPM型とみる点ではHh型と同様であるが, 医師とのコミュニケーションに対する態度の点でHh型と若干の相違がみられた。即ち, Hl型はHh型に較べて, 看護婦にとってプラスになる事柄に関して医師とより一層の接触を保とうとする傾向が強い。従って, Hl型は安定しているが, Hh型よりも消極的, 現状維持的行動傾向を示すと考えられる。
    (3) Lh型 ((1) は低いが (2) は高い): 仕事及び対人不安傾向が4類型のうち最も高い。モラール及び同僚集団忠誠得点はHh, Hl型に較べて著しく低い。また, 医師のリーダーシップ機能をpm型と極めて低く評価している。そして, 医師とのコミュニケーションに対して最もネガティブである。従って, この型はより多くの勢力を獲得しようと期待するが, 自己の現有の勢力が低いため, そのズレをうめることが困難であると感じ, 不安・葛藤の状態にある。従って, 勢力者である医師に対して著しく非好意的となり, また同僚集団からも逃避し, 自分自身のモチベィションも喪失した状態にあると解釈される。
    (4) Ll型 ((1) も (2) も低い): 二医師の監督行動をPM型であるとみているが, 不安傾向はLh型に次いで高く, モラール及び同僚集団忠誠得点は4類型申最も低い。Ll型は現有の勢力が低いにもかかわらず, 勢力を獲得しょうとする期待はない。従って, Ll型は勢力者である医師に強く依存することによって心理的安定感を得ようとしているのであろうと考えられる。
  • 三隅 二不二, 関 文恭, 篠原 弘章
    1969 年 8 巻 2 号 p. 173-191
    発行日: 1969/03/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, 討議集団におけるPM機能を, 集団成員による, 他者評定にもとづいて, 評定尺度の項目作成を試みた。第1研究から第4研究までの一連の因子分析による尺度項目の検討を行なった。その結果, 本研究で用いた評定尺度項目は, 討議におする2つの次元, すなわち討議の目標達成次元 (P次元) と討議の過程維持次元 (M次元) を測定していることが明確にされた。本研究で用いた討議集団のPM評定尺度にBurk (1967) の研究結果を加えると, P次元の項目には17項目, M次元の項目には14項目が含まるものとして考察された。
  • V. 不自由動作の体系的評価
    成瀬 悟策
    1969 年 8 巻 2 号 p. 193-223
    発行日: 1969/03/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    脳性マヒ者に現われる最も特徴的な動作を定型, 身体緊張勾配, 単位動作, および基本動作という相互に次元の異る4つの視点から捉えるために, それぞれについての体系的な評価基準を定め, これを道具として用いたとき, 動作改善のための訓練において, それがどのように役立ちうるのかを, 実際のケースについて検討したところ, おおよそ, つぎのようなことが明らかにされた。
    それら各評価の結果は, 個々の特徴を適切に示しうるけれども, さらに, それらを綜合的, 全体的に眺めることによって, いっそう, マヒ者の動作の特徴を浮きぼりにすることができる。とくに, 現状において, いかなる困難が認められ, それを困難にしている動作学的な因果関係 (たとえば過度緊張と困難との関係, 基本動作における困難と単位動作不全との関係など), 改善を要する訓練対象の発見などのためには, そうした綜合的評価が極めて重要なことが述べられた。
    また, 動作の困難度, 過度緊張と弛緩の状況, 当該動作と他の動作や緊張との関連などを知ることによって, 訓練方法の選択, 訓練条件の決定, 訓練効果の予測, 訓練過程の測定・記述, 訓練効果の評価, 訓練効果定着度の判断などが, ある程度まで適切にできることがわかる。さらに, 対象ごとの訓練方法の優劣, 効果効率などについて比較したり, 訓練者の側のマヒ者におよぼす個人的要因, 訓練目標の選択や転換についての妥当性などの検討というような, 動作訓練上の方法と効果について科学的な研究のためには, このtoolが重要な手掛りを与えることがわかってきた。
    また, ある動作の促進ないし進歩が, 他の動作を抑制ないし停滞させる現象とか, ある複雑な動作の進歩が必要な関連動作の習熟度とどのように関連するかの問題, どんな動作がいかなる学習曲線を描くか, どの身体部位がどの動作や身体部位といかなる関連性をもつか, など, いわゆる動作学的な法則性の認知, 定立のために, 有力な資料を提供しうることも推測された。
    もちろん, それらtoolは, これで完成されたわけでもなく, 必要, 十分な条件を満たすものとはいえず, その観点なり, 記述法, 評価の基準などについては, マヒ者の動作や不自由現象をいつそう適切に捉え, 表現できるようなものに改訂していくことが必要であるが, その端緒を拓くためのものとしては, いちおうの使用に耐えうるものといえるであろう。これをもとにして, さらに今後, より適切なtoolに仕上げられることが望まれる。
  • 前田 重治
    1969 年 8 巻 2 号 p. 225-233
    発行日: 1969/03/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
  • リーダーの信憑性, リーダーシップ・スタイル, 課題の要因から
    丹羽 劭昭, 安森 信子
    1969 年 8 巻 2 号 p. 235-248
    発行日: 1969/03/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
  • coacting groupにおけるcontingency modelの検討
    白樫 三四郎
    1969 年 8 巻 2 号 p. 249-267
    発行日: 1969/03/15
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    interacting groupにおけるリーダーシップ効果性理論として提出されたFiedlerのcontingency modelがcoacting groupにも妥当性をもつか否かを検討するために実験室的実験を行なった。被験者は男子中学生200名。1集団5名。作業はいわゆる平行作業形式。リーダーと成員の関係, 課題, リーダーの勢力の3個の要因を操作することにより, 相異なる8個の集団状況を作り出した。本実験の主要な結果をまとめると以下のとおり。
    1) contingency modelはcoacting groupにおいてもほぼ妥当する。しかし, その細部においてはinteracting groupの場合と相違する。
    2) LPC得点は達成動機親和動機のいずれとも有意な相関を示さない。
    3) LPC得点の低いリーダーは, 集団成員を統制することが困難となるにつれ, 課題遂行 (P) 的行動をより多く示し, 集団維持 (M) 的行動をより少なく示す傾向がある。
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