教育・社会心理学研究
Online ISSN : 1884-5436
Print ISSN : 0387-852X
ISSN-L : 0387-852X
7 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 遠藤 辰雄
    1968 年 7 巻 2 号 p. 103-116
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    (1) 犯罪者と大学生との両群を構成因子法によって比較したところでは, 社会的要因すなわち年令に相応した社会生活の技術の身につけ方, 友人のタイプ, グループの一員あるいはリーダーとしての経験などの面, および教育・訓練の要因すなわち学校および家庭における「しつけ」の面に大きな差のあるものが多く, とくに自己洞察すなわち非行に対する自分自身の態度, 自分で自分の行為の責任をひきうける計画性と能力の面に著るしい差のあることが見出された。(2) 自己洞察は, 犯罪経歴が長いほど, すなわち非行が幼時に始められていればいるほど, 劣っている。従って, 安倍淳吉氏の指摘する非行深度と関係していると推測できる。(3) 自己洞察は, 犯罪の真の心理的動機とも平行していると考えられる。(4) 自己洞察は, 年少者では困難であるが, 洞察が可能な年令群に属し, 0以上ならば非指示的療法, 責任療法が可能であり, 年少者であり, -1以下では行動療法が可能であると考えられるが, なお今後の研究をまたねばならない。(5) また, この構成因子法は, 矯正的教育・治療のメドをつけるために, 可能な限度の資料を得るために, とくに心理学的検査が不可能な場合に, もっとも適切な方法であると考えられるが, 構成因子相互間のダイナミックスとくに自己洞察との関連における犯罪性の矯正の見通しの予測の問題についても, 多くの疑問が残されているので, 後日改めて論及することとしたい。
  • III 基本動作型の評価と訓練
    成瀬 悟策
    1968 年 7 巻 2 号 p. 117-148
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本稿においては, さきに述べた弛緩行動と基本動作に続いて, 脳性マヒ者の心理学的なリハビリテーションにおける重要な対象として基本動作という概念を設定し, それが目的行動における意義を検討するとともに, その最も代表的なものとしての歩行動作と書字動作, 発声動作のそれぞれについて, 分節的な下位動作のハイアラーキーと, 各動作型についての評価の方法, 訓練スケジュールについての一試案を提出した。
    また, それら基本動作を困難にし, あるいは妨害する諸要因と, それを軽減, ないし排除することに関する諸問題を, 従来の医学的立場, ことに整形外科的な立場や骨格や筋の微視的立場から離れて, 動作そのものを中心とした, いわば動作学的立場から検討してみた。
  • 大学における運動部集団の調査より
    蜂屋 良彦
    1968 年 7 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    集団機能に関して, つぎの諸点, 1) 集団機能の布置の把握と類型化, 2) 機能間の関係調整が集団生産性に及ぼす効果, 3) 成員の集団所属動機が集団機能の布置に及ぼす影響, 4) 成員の所属動機と各種リーダーへの社会情緒的支持との関係, を明らかにするため大学の運動部集団を対象とした調査が行なわれた。
    結果を要約すると, 1) 集団機能の布置に関しては集団差がかなり認められ, 分離型リーダーシップの集団と統合型リーダーシップの集団とその他とに分類された。2) 集団生産性の測定が試みられたが不成功に終り, この点の検討はできなかった。3) 統合型集団では成員は対人志向動機よりも課題志向動機が強いが, 分離型集団では両動機に有意差は認められない。4) 対人志向成員は情緒的次元で他のリーダーに対してよりも集団維持的リーダーと結合しやすい。
  • PM式監督行動類型を媒介としたモチベーションの効果
    佐藤 静一
    1968 年 7 巻 2 号 p. 159-167
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, パフォーマンスとレミニッセンスにおよぼす, タスク・モチベーションの効果について検討せんとするものである。モチベーションの要因としては, PM式監督行動類型 (PM型, P型, M型そしてpm型) を導入した。被験者は達成動機においてコントロールされた。
    課題は, 逆アルファベット文字の模写である。休止時間は10分で, 休止前30試行, 休止後5試行 (1試行30秒) の連続作業である。被験者は女子高校1年生, 実験者 (監督者) は熊本大学学生。
    結果は次の通りである。
    休止前試行におけるパフォーマンスでは, P型が最高で, 次いでM型, PM型そして最低はpm型であった。
    レミニッセンスは, PM型においてのみみられた。
    休止後試行におけるパフォーマンスは, PM型とP型のもとで最高を示し, 次いではM型そして最低はpm型であった。
    最後に, モチベーションとパフォーマンス, またモチベーションとレミニッセンスとの関連について考察するとともに, 脳波的手段によるモチベーション研究の可能性とその意義について若干考察した。
  • 1 呼吸運動の類型
    松本 蕃
    1968 年 7 巻 2 号 p. 169-193
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    CPの基本的な行動特徴として, 過度緊張が認められる, 呼吸運動も, 筋肉運動という行動水準から, 把えるとき, さまざまな異常運動型を示すことが明らかでこの型を呼吸曲線によって3つのタイプに分類して記述した。
    しかも, 条件下での呼吸運動はnormalのそれと比較して, 明らかに, 過呼吸・動揺のリズムが繰返えされたり, 運動の意図的コントロールが容易に表出されないことも, 明らかとなった, また, 過呼吸, クイック, 棒にぎりの運動パターンも, 安静時の呼吸パターンの圧縮あるいは, 拡大の傾向を示すことも確かめられた。
    CPの呼吸運動は, 胸部, 腹部, 肩の協応的運動が不全で, 幼児期のままの未発達の呼吸パターンを生起していることも検討された。
    CPの運動はframe-workを, 身体的感じにおいて判断基準を持つので, 坐位で閉眼胸式の場合, 呼吸頻数が多くなることも判明した, 更に, 呼吸にも, 呼吸の定型と定型化成が存在し, これが弛緩行動のためにも, 機能訓練にも, 重要なfactorとなることが述べられた。
  • 特に神学生と一般大学生の人生意識注1を中心とした調査を手がかりとして
    小助川 次雄
    1968 年 7 巻 2 号 p. 195-208
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    人間の心理学的研究で, いわゆる「人間らしさ」を見るために, 「実存」という側面に目を向けてきた。「実存」とは, 人生の意味, 生き甲斐, 喜びを持って生きることである。この研究のためのPurpose-In-Life Test (PIL) 日本語試訳を使用し, さらにこれまでの著者の他の研究を加味しながら, 実存的欲求の充足性について, 信仰者 (神学生) と一般群 (一般大学生) とを比較検討した。その結果, 信仰者の実存的欲求の充足牲は, 無作為抽出の一般群より高く, 一般群の最高得点者群とほとんど同等であることが分った。同時に一口に実存と云っても, キリスト教的実存と一般的実存とは質的に, また, 意識構造的に相違があるのではないかという仮説は支持された。ただ, PILの評定の表面的数的処理で得られた実存性は, そのままでは, この両者の区別を十分には表わしていない。このような両実存の相違は, PILの潜在的内容の分析によって明確にされた。このために, 手記や他のパーソナリティテストなどを併用してその内容の補足を行なった。この結果, 二つの実存は, この世に対するかかわり方, 生活意識の中心および指向方向, 自己の評価などにおいて異なることが分った。一口でいえば, 一一般的実存は自己実現であり, キリスト教的実存とは, 自己犠牲を含む, 神の価値の実現である。また, 宗教は, 人間の人格的成長をがめゆるという批判は, この実験群については当らない, むしろ逆の結果が事実であることをパーソナリティテストが示した。いずれにしても, PILは, 実存的欲求の充足性を大体において知るためには有効であると思われる。
    今後さらに対象を多くし, 資料の量的, 質的不十分さを補って実証性を吟味しながら, 残されている問題の解決に努めたい。なお, 本論文に関する神学的問題については, 別の機会に論ずることにする。
  • 情報呈示順序効果と印象変容について
    高橋 超
    1968 年 7 巻 2 号 p. 209-220
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, パーソナリティ要因としての認知的複雑性が印象形成過程に及ぼす影響を初頭-新近効果 (実験I), 印象変容 (実験II) の側面から検討するものである。
    小川 (1966) により修正されたRep testを女子大学生に実施し, Hi-Coの者と, Lo-Coの者を抽出した。1週間後に, 各Ssに社会的要求性で矛盾する内容を持つ一人の仮想人物についての情報をテープレコーダーで呈示し, 印象を形成させた。二つの実験より得られた主な結果は, つぎのとおりである。
    (1) 初頭-新近効果は, 認知的複雑性の要因以上に, 〔+〕の情報の呈示位置により規定された。すなわち, 〔+〕→〔-〕では初頭効果, 〔-〕→〔+〕では新近効果がみられる。
    (2) Lo-Coの者は, Hi-Coの者より, 〔+〕の情報に影響される度合が大きく, 結果的に, より一方にかたよった印象を形成する傾向がみられた。
    (3) Lo-Coの者は, Hi-Coの者にくらべて, より著るしい印象変容を示した。すなわち, Lo-Coの者においては, 第1情報で得られた印象は対立する第2情報によって変容し, かれらが, 仮想人物について得る最終的印象は第2情報に基づいたものになるのである。一方, Hi-Coの者では, 最終的印象は対立する2情報を統合した形で判断されたものであった。
    (4) 印象変容は, 情報の呈示順序効果によっても規定された。〔+〕→〔-〕に情報が示された場合, 〔-〕→〔+〕以上に大きな印象変容がみられた。
    (5) 判断の確信度は, 〔+〕→〔-〕において著るしく減少した。すなわち, 〔+〕→〔-〕では印象変容が生ずるとともに, 判断の確信度も減少するのである。なお確信度の減少で, Hi-Co, Lo-Coに差はみられなかった。
feedback
Top