自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
Print ISSN : 0286-6021
37 巻, 1 号
自然災害科学
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巻頭言
特集
速報
  • 佐藤 翔輔, 今村 文彦
    2019 年 37 巻 1 号 p. 93-102
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル フリー
    本稿では,2017年7月九州北部豪雨災害を対象に,発災当時に発信されていた「#救助」ツイートについてその内容分析を行った。その結果はつぎのようにまとめられる。 1)「#救助」ツイートで,場所や人数等の具体的な状況を記述している「救助要請」のニーズを発信していたツイートは,分析対象の1,058件のうち,7.6 %とごくわずかであり,「救助要請」を実際に求めているツイートが埋没し,ハッシュタグ「#救助」による検索が困難であった状況が定量的に確認された。 2)「#救助」ツイートで,具体的な「救助要請」ニーズが記述されていないものは,分析対象ツイートの9割以上を占めていた。その内容は,「#救助」の存在や注意点を紹介するニュース記事とそのリンクや,一般ユーザーからの善意の投稿であった。被災地内から発信は,位置(場所)や具体的な内容を記述されており,SNSリテラシーが向上している傾向が見られるものの,被災地外の不急の発信は依然として多いことが明らかになった。
報告
  • 林 宗市, 福本 淳司, 米山 望
    2019 年 37 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル フリー
    大きい地震にともなう津波は海岸に押し寄せ海岸近くの町や人々に甚大な被害をもたらす。しかし,津波の被害を軽減するための巨大堤防の構築は養殖業や沿岸漁業に悪影響をもたらす。この研究の目的は,三次元数値解析シミュレーションにより,海岸に平行に設置された多重 防波堤の効果を評価するためである。多重防波堤の設置により,船の出入りができ,日々の生活の不便が少なく,自然環境の下で水産物を増やすことができる。結果として,最初の防波堤を通過した波は左右に分かれ次の防波堤に衝突することで,津波のエネルギーが減衰することを見出した。
論文
  • 竹之内 健介, 矢守 克也, 河田 慈人, 中北 英一, 田中 耕司, 小林 拓磨
    2019 年 37 巻 1 号 p. 109-124
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル フリー
    近年,災害対策における住民の視点に立ったソフト対策の重要性が改めて議論されている。一方で,その政策の多くは,従来の情報内容の高度化や既存ツールの利便性向上などトップダウン型の議論が中心となっており,ボトムアップ型の視点が不十分である。本研究では,住民が災害リスクを地域の表現として,どのように表現するのか確認した。 2016年2月20日から29日にかけて,気象警戒レベルを地域や住民の言葉でどのように表現するか,洪水・浸水・土砂災害・大雪の各災害を対象にWeb調査を実施した。調査結果について,地理表現,行動表現,状況・影響表現,過去表現の出現状況を分析した結果,様々な特徴が確認された。この結果を踏まえ,住民の表現傾向や課題を分析した。
  • 石橋 正信, 馬場 俊孝, 高橋 成実, 今井 健太郎
    2019 年 37 巻 1 号 p. 125-142
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/29
    ジャーナル フリー
    南海トラフの沈み込み帯において,M9クラス巨大地震とそれにともなう巨大津波の発生の可能性が内閣府により指摘されて久しい。この津波被害想定によると,地震域近傍の沿岸地域では地震発生から数分後に巨大な津波が到達してしまうため,津波防災に向けた行動計画の再構築や人的被害軽減のための迅速な対応策の検討が極めて重要になる。その対応策のひとつとして,高速かつ高精度な即時津波予測が有効と考えられる。本研究では,地震と津波観測に向けた稠密海底観測網(DONET)による沖合観測網を利用した即時津波予測システムを構築し,和歌山県沿岸6地域において実装を行い,その有効性の検討を行った。本システムにより,地震と津波の初動到達時間を即時評価できること,沿岸津波高や浸水域の即時予測が可能であることを示した。さらに,1944年昭和東南海地震の事例と内閣府のM9クラス巨大地震の波源シナリオを用いて本システムの予測精度を検証した。本システムで即時予測される沿岸津波高や浸水域面積はやや過大評価傾向にあるものの,おおむね安全側の予測結果となり,津波防災上有効なシステムであることを示した。
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