自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
Print ISSN : 0286-6021
40 巻, 1 号
自然災害科学
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
年間特集
報告
  • 髙岡 明美, 佐藤 昇
    2021 年40 巻1 号 p. 39-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー
    中学校3 年「理科」の「自然の恵みと災害」の単元で,GIS による地域情報を活用した防災学習を実践するとともに,保護者向けに学校での防災学習の概要を含む地域情報をインターネットにより公開した。今回の授業実践は,生徒の自然災害への関心・理解の向上に,GIS(地図情報)による地域情報の活用が有効であることを示した。保護者へのアンケート結果から,公開したコンテンツ自体の評価は高かった。また,このような試みが家庭で自然災害について話し合う機会の向上に寄与することが認められた。
  • 阪本 真由美, 中道 治久, 髙橋 若菜, 荒島 千鶴, 荒木田 勝
    2021 年40 巻1 号 p. 51-66
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー
    本論では,2010年にアイスランドで発生し, 欧州全体に被害をもたらしたエイヤフィヤトラヨークトル火山噴火をめぐる政策決定プロセスの分析から,欧州において越境火山災害ガバナンスがいかに形成されているのか,その特性とは何かを考察した。2010年のアイスランドの火山噴火では,噴火に先駆け住民が避難しており国内においては人的被害がみられなかった。その一方で,火山灰が欧州広域に拡散したことにより,欧州各国の空港が閉鎖・航空機が運休し,欧州の社会経済に大規模な被害がもたらされた。噴火に先駆け欧州では,越境火山災害に対応するために,「災害対応レジーム」と「航空交通管制レジーム」というレジームが構築されていたが,これらのレジームでは混乱を防ぐことが難しかった。これは,噴火後の国際的な政策決定において,火山活動の推移,火山灰の拡散予測,火山灰の濃度,ジェット・エンジンの耐久性などの詳細な科学技術情報に基づく「受容可能」基準の検討が迫られたものの,当時はそのための体制が十分に整備されていなかったことによる。このことは,越境火山災害対応においては,通常の災害対応とは異なりレジームを超えたガバナンスが求められるという特質を示すものでもある。欧州では,噴火後に問題解決に向け国・分野を越え科学者・行政実務者による科学的プラットフォーム(エピミスティック・コミュニティ)が自律的・分散的に発展している。すなわち,2010年の噴火を契機に欧州では越境火山災害に対応するためのグローバル・ガバナンスが芽生えていると捉えられる。
  • 笠井 武志, 野々村 敦子
    2021 年40 巻1 号 p. 67-79
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー
    最近, 防災・危機管理の分野では多極化する災害に対応するために今まで経験した知識や技 術の継承,また新しい知識や技術を学ぶ人材育成は重要である。その人材育成のほとんどが派 遣型の研修であるが,小さい自治体では派遣することが難しい。また,研修を受けたものが全 職員に伝達することも難しい。そこで, 1 年間かけて自分の組織で指導できるスペシャリスト を養成して,そのスペシャリストたちが全職員に指導する教育システムを開発した。
  • 牛山 素行, 本間 基寛, 横幕 早季, 杉村 晃一
    2021 年40 巻1 号 p. 81-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー
    筆頭著者らは近年の日本の風水害による死者・行方不明者(以下「犠牲者」)に関するデータ ベースを構築しており,これまでに1999~2018年の1259人について分類している(以下「1999- 2018」)。本報告では,2019年台風19号(令和元年東日本台風)による犠牲者(以下「台風19号)と 1999-2018の特徴を比較することを目的とする。台風19号では,東日本一帯で犠牲者88人(関連 死を除く)が生じた。台風19号による犠牲者の特徴としては以下が挙げられる。1 )犠牲者の 72%は洪水など水関連の犠牲者だった。水関連犠牲者の比率は,1999年以降の主な風水害事例 中では最も高くなった。2 )犠牲者の58%は屋外で生じ,その54%は自動車で移動中の遭難だっ た。この比率も1999年以降の主な風水害事例中では最も高い。3 )水関連犠牲者の66 %は浸水 想定区域付近で発生した。これは,1999-2018に比べ高い比率だった。水関連犠牲者の93%は低 地で発生し,これは1999-2018の結果と整合的だった。犠牲者軽減にはハザードマップ的情報が 重要であることがあらためて示された。
  • 山本 晴彦, 渡邉 祐香, 兼光 直樹, 坂本 京子, 岩谷 潔
    2021 年40 巻1 号 p. 103-122
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー
    梅雨前線豪雨により,2020年7月3日12時から翌4日12時までの24時間降水量は,熊本県の天草・芦北地方から球磨地方を中心に400mm以上を観測した。本豪雨により球磨川中流の球磨村の渡水位観測所では4日7時30分に12.88mを観測した後,水没により欠測となった。渡地区にある特別養護老人ホーム千寿園は氾濫平野の低平地に立地し,洪水ハザードマップ(計画規模)では浸水想定区域外であるが,想定最大規模のハザードマップでは10~20 mの浸水が 想定されている。急激な水位の上昇により2階への避難が間に合わず,入所者14人が亡くなった。渡地区の峯集落では最高760cmの浸水痕跡が確認され,国土地理院が作成した浸水推定図の8~ 9m とほぼ一致した。
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