令和3年8月の大雨では,西日本から東日本の広い範囲で大雨が続き,総降水量が多いところで1,400mm を超える記録的な降水量となり,全国での総降水量は平成30年7 月豪雨と匹敵する規模となった。筆者らが過去の豪雨事例の分析結果をもとに, 3 , 6 ,12,24,48,72時間の降雨継続時間降水量や土壌雨量指数といった7つの降雨指標の既往最大比最大値から犠牲者の発生数を推計した結果25人程度なり,実際に発生した犠牲者数はそれの約50%である13人で
あった。全国における総降水量が多かったにも関わらず,この大雨による犠牲者数は平成30年7月豪雨の1/20程度に抑えられた。今回の大雨では,各々の地点における48時間降水量や72時間降水量,土壌雨量指数がそれまでの観測値の150%超といった大幅に超えるような降り方とはならなかったために,土砂災害や河川氾濫の発生が限定的となり,犠牲者数の発生が抑えられたとみられる。
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