自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
Print ISSN : 0286-6021
38 巻, 4 号
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巻頭言
速報
報告
  • 呉 修一, 千村 紘徳, 地引 泰人, 佐藤 翔輔, 森口 周二, 邑本 俊亮
    2020 年 38 巻 4 号 p. 449-467
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー
    日本では毎年のように台風や前線性の豪雨に起因する水害が生じており,その度に住民の事前避難の難しさが報告される。本報告では,宮城県および富山県の住民を対象としたアンケー ト調査を実施し,住民の防災情報の理解度などを調査した。さらに,複数市役所を対象とし,水害時に住民の避難を促進するための課題に関して,ヒアリング調査を行った。調査結果より,多くの地域住民が防災情報を正しく理解できていないことなどが明らかとなった。また,市役所は避難情報などの発令過程で多くの困難があり,特に,広域な市全域で最大限の対応を行うのは人・時間的に難しいことなどが明らかとなった。このような課題の対策例として,本報告では可能最大洪水氾濫を算定し,わかりやすい形式 で最悪の状況を提示する対策を提案した。これにより,住民の危機意識を高め避難を促進するとともに,行政側では水防地域を選定した水害対応等が検討可能となる。
  • 宮本 匠, 草郷 孝好
    2020 年 38 巻 4 号 p. 469-485
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー
    本論文は,2004年新潟県中越地震で被災した木沢地区の長期的な復興過程について,被災者が自らの復興への主体的なかかわりをどのように評価してきたのかを明らかにするものである。最初に,木沢地区の15年にわたる復興過程を,「生活・住宅再建期」,「復興の主体形成期」,「復興の課題解決期」,「 復興の主体再編期」の 4 つに区分し,それぞれの期間において,被災者がどのように外部支援者と協働したのかを示した。次に,木沢地区住民が自らの視点で復興をどのように評価しているのかを明らかにするために実施した地域生活改善プロセス評価手法の結果を紹介した。最後に,長期的な復興過程を扱うことの重要性,さらに,地域住民の内発性がどのように立ち上がっていくのか,それが地域コミュニティをどのように変容させるのかを評価することの意義を考察した。
  • 牛山 素行
    2020 年 38 巻 4 号 p. 487-502
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本の豪雨災害による犠牲者の発生位置と,災害リスク情報(ハザードマップや地形分類図等)の関係について解析することである。筆者は,1999~2018年の豪雨災害犠 牲者1259人分についてのデータベースを構築している。本研究ではこのうち,洪水や河川に接近などの水関係犠牲者と,土砂災害による犠牲者767人を解析対象とした。土砂災害犠牲者の 87%は,土砂災害危険箇所の付近で発生していた。一方,洪水等の水関係犠牲者で,浸水想定 区域付近で発生した者は42%だった。水関係犠牲者について地形分類図による情報との関係を 検討すると,犠牲者の85%は地形的の洪水の可能性がある低地で発生していた。洪水などの水 関係犠牲者や,土砂災害犠牲者のほとんどは,地形的に災害が起こりうるところで発生していると言っていい。ただし,ことに居住地付近の洪水の危険性を理解するためには,現在のハザー ドマップだけでは不十分である。地形分類図に関する分かりやすい情報の整備が重要である。
論文
  • 高崎 忠勝, 土屋 十圀
    2020 年 38 巻 4 号 p. 503-511
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本自然災害学会の著者らの報告 Vol.36.No.4(2018)をもとに,2016年の台風10 号による久慈川の洪水氾濫が流木による大きな被害であったことを述べている。この研究では,もしこの洪水において流木が橋梁に捕捉されていなければ被害は大規模にならなかったという仮説に基づいている。著者らはこの仮設を明らかにするため水文学的な河川の観測施設の資料,洪水時とその2年後の河川や橋梁の写真資料を調査した。これらの資料を岩手県および Google Earth を使い収集した。 更に,タンクモデルによる流出解析により St.1観測地点の2015年の流量の算定を行い,同時に,タンクモデルのパラメータを決定した。また,マニング式により算定した流量をもとに水位・流量関係を作成した。粗度係数は2016年の総流量を再現するためにマニングの逆解析により算定した。同様な方法で,堤防で越水のあった St.2観測地点の水位・流量関係を算定している。 著者らは流出解析を行い,堤防からの越水があったかどうか推察している。もし,流木が橋梁で捕捉されていなければ久慈川の洪水に伴う氾濫被害は発生しなかったか,被害は少なかったことを推測している。
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