自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
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巻頭言
報告
  • 安田 誠宏, 吉田 京香, 河野 達仁
    2021 年 39 巻 3 号 p. 191-206
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    平成30年7 月豪雨時には気象庁により特別警報が出され,自治体によって避難指示・避難勧告が出されたが,実際には多くの人が避難せず自宅に留まった。本調査の目的は,桂川の氾濫が懸念され,避難指示(緊急)が発令された京都市西京区を対象に,アンケート調査を実施し,住民の避難行動実態を把握するとともに,被害経験や災害に対する理解度といった個人属性と避難行動実態の関係を調べることである。その結果,河川氾濫に対する認識と避難行動には関係があることがわかった。避難情報の取得をした後でも,避難行動をした人の割合は低かった。避難できなかった理由についての集計結果から,天候や夜の避難といった周囲の状況が避難行動に影響を与えていることがわかった。自宅の浸水が予想されていたことを認知していたにもかかわらず,実際に避難した人は少なく,認知的不協和があったことが示された。
  • 梶谷 義雄, 杉浦 聡志, 畑山 満則, 高木 朗義
    2021 年 39 巻 3 号 p. 207-220
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,避難する意思の有無や行政からの情報への依存度を各個人の「避難態度」と定義し,避難態度の形成要因について統計的な分析を行った。一定程度必ず存在する逃げようとしない人や行政からの情報提供に頼らない方にはそれなりの理由があり,空振り避難や避難所経験の苦痛などの経験やその他の属性に大きく依存しているものと考えられる。平成30年7月豪雨災害による影響を受けた西日本地域の3000人を対象とした分析の結果,立地条件や空振りの影響などを含めた50近くの指標が態度分類に与える影響,避難発令情報と態度別の避難行動の関係,避難者数の予測結果の精度等が明らかとなった。
  • 山本 晴彦, 渡邉 祐香, 兼光 直樹, 宮川 雄太, 大谷 有紀, 坂本 京子, 岩谷 潔
    2021 年 39 巻 3 号 p. 221-251
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    2019年台風19号により,千曲川上流の佐久地方では10月12日の日降水量が300~400 mmの豪雨となり,中流の立ヶ花水位観測所では翌日の13日3 時20分に過去最高の12.46m の水位を観測した。これにより4 km 上流の長野市穂保地区では70m にわたり堤防が決壊して氾濫流が堤内地に流れ込み,住家が流失や全壊する被害が発生した。氾濫平野の低平地に開設された新幹線車両センターでは,氾濫流により10編成120車両が座席付近まで浸水して廃車となった。豊野地区では赤沼地区から千曲川支流の浅川の堤防を超えて流入してきた氾濫流により,旧町役場一帯や新興住宅地で100~400 cm の浸水被害が発生した。長野市北部(長沼,豊野,古里)の浸水面積は約934 haに及び,2 m以上の洪水浸水想定区域とほぼ一致し,全壊1,034棟,大規模半壊285棟,半壊360棟,一部損壊292棟の計1,971棟に達した。
  • 山本 晴彦, 大谷 有紀, 渡邉 祐香, 兼光 直樹, 宮川 雄太, 坂本 京子, 岩谷 潔
    2021 年 39 巻 3 号 p. 253-281
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    2019年8 月27日未明から秋雨前線の活動が活発になり,佐賀県西部の六角川上流の武雄では28日早朝までの24時間降水量が400mm 近くに達し,特に28日未明には最大3時間降水量が210mmを観測した。この結果,六角川の水位が上昇し,堤防の決壊や越水を防ぐためにポンプを止める「運転調整」を余儀なくされ,堤防内の市街地に溜まった雨水が排水できずに内水氾濫が発生した。六角川水系の牛津川でも,流域で降った豪雨により水位が上昇し,堤防からの越水により農地や市街地に浸水被害が発生した。また,佐賀市内でも内水氾濫が発生し,県内の住家被害は6,060棟にも及んだ。
論文
  • 藤井 弘章, 難波 明代, 西村 伸一
    2021 年 39 巻 3 号 p. 283-335
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,淡路島北部のため池の,地震被害・無被害を分けた要因とメカニズムを明らかにしょうと試みた。多変量解析(10ないし11アイテム)を,野島領域395(被害:112,無被害:283)個, 5 町領域1562(同じく348,1214)個につて行った。主なアイテムのカテゴリースコア(CS)のピークは,震央角度が6 個(野島領域:CS の大きさ順に,10,150,30,70,100,130度。5町領域:同じく,100,160,140,70,40,10度),断層角度が7 個(野島:同じく,100,80,20,160,40,140,120度),震央距離 が1 個(野島・5 町領域共10 km),断層距離2個(野島:-150,600m)あった。これらの結果は放射パターンから説明できた。CSのピーク角度と強調された地震波の放射角(理論値:P 波・SV 波:45度と135度,SH 波: 0 度と90度)との関係から,震央付近の第1 の強震点As と共に,第2の強震点As’があると言えた。
  • 中井 仁
    2021 年 39 巻 3 号 p. 337-353
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/22
    ジャーナル フリー
    1898年9 月6 日から7 日にかけて,台風によって長時間続いた豪雨が,山梨県全体に甚大な洪水被害をもたらした。特に八ヶ岳南麓では, 7 日午前1 時30分ごろ土石流が発生し,大泉村谷戸で55人が死亡,51人が負傷した。この災害から120年あまりが経過し,土石流があったことのみならず,災害があったこと自体が多くの地元住民の記憶から忘れ去られている。著者は,発災直後に発行された新聞の記事,ならびに明治時代に編纂され宮内庁に保管されていた「諸国災害実況写真」および「暴風雨被害取調表」などの歴史資料を詳細に検討し,災害を引き起こした土石流の流路を推定した。さらに,Hyper KANAKO システムを用いて,被災地区およびその周辺についての土石流シミュレーションを行い,予想される土石流の流路と歴史資料から推定される流路とを相互に比較検討した。それらを基に,過去の災害と同様の土石流災害の危険が,今もこの地区に存在することを示唆する。
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