土木学会論文集C
Online ISSN : 1880-604X
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63 巻, 4 号
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招待論文
  • 沖村 孝, 鳥居 宣之
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1001-1019
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     平成7(1995)年の兵庫県南部地震時に,神戸市内に生じた木造家屋被害分布,いわゆる「震災の帯」の発生原因を究明するため,また各種構造物の地震被災原因を究明するため,神戸市が所有するボーリングデータを活用した高密度地盤情報データベース「神戸 JIBANKUN」の構築を行った.この構築に際しては,神戸市のみならず,民間技術者や学術研究者も協力し,産官学の知識を活用した.本報では,「神戸 JIBANKUN」の構築の概要ならびに「神戸 JIBANKUN」を活用した研究事例を紹介した.さらに,地盤情報データベースの維持管理に際しての問題点ならびに今後の課題についても言及した.
委員会報告
和文論文
  • 水野 健太, 土田 孝, 小林 正樹, 渡部 要一
    2007 年 63 巻 4 号 p. 936-953
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     有限要素解析における地盤変形量の予測精度に関しては,鉛直変位(沈下)に比べて水平変位の解析精度が劣ることが従来から指摘されている.本研究では,地盤変形解析の予測精度を向上させることを目的に,粘土に対する構成モデルを新たに提案し,自然堆積粘土試料のK0圧密非排水三軸試験に対して提案モデルの適用性を調べた.さらに,大規模埋立工事の現地計測データを用いた再現解析を実施し,提案モデルの実地盤への適用性を検証した.その結果,提案した構成モデルは,自然堆積粘土の正規圧密状態における初期の非排水せん断挙動を要素レベルでよく表現することがわかった.また現地計測データとの比較においても,提案モデルは沈下と水平変位のいずれも精度よく予測できることがわかった.
  • 小林 晃, 山本 裕介, 岡 敬人, 青山 咸康
    2007 年 63 巻 4 号 p. 954-962
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     全国に20万個以上あるため池の維持管理は,数が多いためにアセットマネジメント手法を用いて計画することが必要である.そのために豪雨による決壊リスクを対象としたライフサイクルコストの算定法を提案する.まず,豪雨による決壊を対象としたリスク評価を平成16年の淡路島での決壊災害データをもとに,ため池データベース,衛星写真によるDEMデータとマルチスペクトル画像により行い,降雨データを用いて年破壊確率を算定する手法を提案する.また,決壊による損失予測をデータベースをもとに行う.これにより,個々のため池の豪雨による決壊リスクの年確率および経時変化を求めることができることを示す.そして,対策工の時期と手法を選択して,ライフサイクルコストが小さくなるように算定する例を示す.
  • 西田 浩太, 田中 洋行, 三田地 利之, 松田 圭大, 小原 隆志
    2007 年 63 巻 4 号 p. 981-992
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     試料の品質評価を行うことを目的として,サンプラーから抜き出した無拘束状態の試料に対しサクション(p'r)測定試験およびベンダーエレメント(BE)試験を実施した.その結果,乱れの程度が大きい試料ほど G およびp'rは低下し,両者の間には相関関係がみられた.さらに三軸試験機内で任意の応力まで圧密·膨潤させ,あるいは非排水状態で繰返し載荷を与えることにより有効拘束圧(p'm)を変化させ,G を測定した.その結果,Gp'mの変化過程によらずp'mの値によって決まり,さらに Gp'mの0.45∼0.50乗に比例することを示した.室内試験から得られた式を用いて原位置のGの推定を試みた結果,コーン貫入試験結果から推定したGf の70∼80%の値が得られた.
  • 相馬 宣和, 大野 哲二, 中島 貴弘, 中間 茂雄, 浅沼 宏
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1020-1034
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物地層処分の調査開発時の,作業振動を利用する地下構造推定法の活用実現を目標に,堆積岩質坑道内でのコア採取時掘削音の観測と地層構造イメージング法を検討した.室内模擬掘削音取得実験によるコア採取時の掘削音特性の評価も行い,従来の掘削音信号より低品質であり,周期性ノイズ抑圧の必要があることを明らかにした.適応フィルタ,周波数帯域を分割した放出モード評価,SCOT(Smoothed Coherence Transform)法による相関関数計算等を適用した3軸VSP(Vertical Seismic Profile)法により,地層構造と調和的な反射率分布を得ることができた.本報で述べる多成分信号処理法の活用により,様々な作業振動の活用が可能になり,地下情報の蓄積が低コストで実現する可能性が示された.
  • 段野 孝一郎, 木村 亮, 鈴木 雄吾
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1041-1053
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     杭基礎の性能規定型設計を可能にするためには,杭基礎の長期的な変形を適切に評価できる手法の開発が必要である.本研究では,複雑な地盤条件や杭∼地盤∼杭の相互作用,過剰間隙水圧の消散に伴う地盤の圧密沈下を適切に考慮する上で最も有力と考えられる土−水連成弾塑性有限要素法に対して,杭の体積を適切に表現できるモデルを導入し,実大載荷試験との比較によりその適用性を検証した.さらに同手法を用いて,実際に建設予定の杭基礎の長期安定性(長期変位,支持機構,杭配置による荷重分担メカニズム)を検証した.その結果,杭の配置により杭の支持機構や荷重分担機構が大きく異なること,またこれらの差異が過剰間隙水圧の発生∼消散過程に大きな影響を及ぼし,さらには各杭の荷重分担率の変化や不同沈下の発生として現れることを明らかにした.
  • 冨田 敦紀, 蛯名 孝仁, 戸井田 克, 白鷺 卓, 岸田 潔, 足立 紀尚
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1054-1064
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     堆積軟岩に掘削した余裕深度処分埋設施設の試験空洞掘削時に Spalling が確認された.この Spalling の発生要因 · 破壊メカニズムを検討するために,空洞掘削時の応力径路を模擬した要素試験および空洞掘削後の岩盤応力の測定を行った.応力径路模擬試験結果の破壊モードは,低拘束圧域では割裂破壊,高拘束圧域ではせん断破壊であり,これらを説明する破壊規準の検討を行った.一方,空洞掘削後の岩盤応力測定結果では,空洞周辺岩盤の応力場は岩盤掘削による応力解放に伴い空洞半径方向の応力が低下して一軸応力状態に移行しており,Spalling は低拘束圧状態での誘発応力に起因する割裂破壊あるいは引張破壊であることが確認された.
  • 小林 一三, 戸井田 克, 笹倉 剛, 太田 秀樹
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1065-1078
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     現行の放射性廃棄物地層処分概念では,処分施設は廃棄体を取り囲むベントナイト系人工バリア,セメント系人工バリアと処分坑道を囲む岩盤などの天然バリアから構成される.現行の地層処分概念の成立基盤を担保するためには,ベントナイト系人工バリアに高い止水性能が求められる.ベントナイトは,このような重要な役割を担っているため,これまで数多くの様々な室内要素試験に供されてきたが,これらの試験結果を力学に基づいて統一的にまとめた例は少ない.
     そこで本論文では,この締固めベントナイトの圧縮 · 膨潤挙動を e-lnσν' 平面における等含水比線と等飽和度線を用いて地盤力学に基づく統一的な解釈を行った.
  • 登坂 敏雄, 阿部 敏夫, 朝倉 俊弘
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1079-1090
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     NATMの導入以来,支保の考え方は大きく変わり,在来工法で主要な支保メンバーとした覆工コンクリートも,NATMでは,一部,膨張性を示す特殊な地山を除き,力学的機能を付加しない構造物として位置づけられている.したがって,条件さえ整えば,覆工コンクリートは省略することが可能であり,その経済的効果は大きいと考える.覆工コンクリートを除くためには,従来,仮設とした吹付けコンクリートを永久構造物として評価する簡便で確実な手法が必要となる.本研究では,日常管理として行われる現場計測を利用して,力学的な観点から永久構造物として評価しうる手法および適用する方法を提案している.そして,それを新幹線トンネル断面に適用して,具体的な適用範囲を示した.
  • 安原 英明, 木下 尚樹, 操上 広志, 中島 伸一郎, 岸田 潔
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1091-1100
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物処分坑道近傍では,廃棄体からの発熱により化学作用が活発化し,岩盤の力学 · 水理学特性に大きな影響を及ぼすことが考えられる.本論文では,圧力溶解現象を考慮した概念モデルを用いて,熱 · 水 · 応力下における化学作用を定量化し,珪質岩石の透水性評価を行った.特に,珪質岩石の構成主鉱物である石英,クリストバライト,アモルファスシリカの溶解 · 沈殿特性に着目し,深地層下における圧力,廃棄体からの発熱作用を考慮し,透水特性の変化を定量的に評価した.その結果,90 °Cの温度条件下で時間と共に透水性が低下する傾向が得られた.また,クリストバライト,アモルファスシリカを多く有する珪質岩石は,石英系岩石よりも透水性の変化がより顕著となることが確認された.
  • 石藏 良平, 落合 英俊, 大嶺 聖, 安福 規之, 小林 泰三
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1101-1112
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     浅層固化処理を併用した非着底型深層混合処理地盤は,深層改良体を支持層まで着底させる従来の着底型改良工法と比較して,大きな圧密沈下が発生するため,沈下量を定量的に評価することは重要である.
     本論文では,非着底型改良形式に特有の改良体周面摩擦抵抗を考慮した応力分担比を導入し,改良率や改良深さなどの改良パラメータと改良地盤の沈下特性を関連付けた沈下量推定方法を提案する.この推定方法の特色は,深層改良体と未改良土が一体化して圧縮される層厚と圧密沈下が卓越する層厚の割合を改良パラメータの変化に応じて定量的に評価できるところにある.一次元圧縮条件および平面ひずみ条件の模型実験との比較により推定方法の妥当性を検証した.
  • 山添 誠隆, 三田地 利之
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1113-1131
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     泥炭は,圧密係数が圧密圧力に強く依存しかつ高圧縮性を示すため,TerzaghiあるいはBarronの圧密理論の適用が難しい場合が多く,また,通常,せん断変形も無視できないほど発生する.本文の変形解析の対象は,この超軟弱な泥炭地盤上に真空圧密工法を適用して高盛土 · 急速施工(13.5m · 25cm/d)で築造された試験盛土である.圧密係数の圧密圧力依存性と幾何学的非線形性をも考慮した水-土連成弾塑性FEM により,不均質な泥炭地盤における初期条件および境界条件が複雑なこの試験盛土の変形挙動を,実務的に許容できる精度で予測可能であることを示している.また,施工過程を様々に変化させた一連の仮想解析を行い,最適な設計法についても考察を加えている.
  • 大野 進太郎, 河井 克之, 橘 伸也
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1132-1141
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     不飽和地盤の長期挙動を高精度に予測するためには,不飽和土の特徴である,乾燥時の収縮および剛性増加,湿潤時の剛性減少に伴うコラプス沈下,乾湿履歴の影響を,表現する必要がある.本論文では,実務への適用を見据え,剛性を表す状態量として,簡易に測定可能な有効飽和度を用いた,不飽和土弾塑性構成モデルを提案する.提案モデルは,降伏面の設定に関して軽部らのモデルを参考にし,水分特性曲線モデルを設定すれば,乾湿履歴が変形特性に及ぼす影響を,変形および水収支に関して矛盾なく表現できる.また,有効飽和度の剛性への影響量を2つのフィッティングパラメーターで表すため,従来のモデルよりも柔軟性に富む.本研究では,締固め土のコラプス挙動を提案モデルと比較し,モデルの妥当性を検証している.
  • 小西 義夫, 兵動 正幸, 伊東 周作
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1142-1152
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     塑性の異なる3種の細粒土と1種の珪砂を種々の割合で混合することで,種々の塑性と細粒分含有率からなる混合土を作製した.このような混合土に対して,一連の定ひずみ速度圧密試験及び非排水三軸圧縮試験を行った.その結果,圧密及びせん断特性において,混合土には砂骨格を主体とする挙動から細粒土主体の挙動に移行するまでの領域が存在し,その境界となる細粒分含有率Fc及び粘土分含有率Pcは,それぞれFc=30% 及びPc=15% 付近であることが分かった.また,細粒分含有率Fc=30% 程度以下においては,シルトと砂が骨格構造を形成するという考えのもと,砂 · シルト骨格間隙比の概念を用いてせん断強度に及ぼす影響要因について検討した.その結果,細粒土の種類によらず砂 · シルト骨格間隙比とせん断強度は良い相関性を示すことが明らかとなった.
  • 竹下 祐二, 諏訪 隼人, 森井 俊広
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1153-1162
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     不飽和砂質土地盤の表層部分における飽和 · 不飽和浸透特性値を簡便かつ迅速に算定する原位置透水試験方法を提案した.挿入型土中水分計を用いた簡易な透水試験装置により定水位透水試験と排水試験を連続して実施して,定常浸透流量により現場飽和透水係数を測定し,土中水分量の非定常挙動により不飽和浸透特性値を測定した.定水位透水試験過程と排水試験過程における土中水分量の変化を浸透流解析によって個々にシミュレートし,不飽和浸透特性の関数モデルの同定することにより,浸潤過程と排水過程によるヒステリシス現象を考慮した不飽和浸透特性値を算定した.本方法の妥当性は数値シミュレーションデータによって吟味し,その有用性は砂丘砂地盤による実測データを用いて確認した.
  • 藤森 雄一, 福江 正治, 加藤 義久, 増渕 和夫, 笹島 卓也
    2007 年 63 巻 4 号 p. 1163-1174
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/20
    ジャーナル フリー
     地盤形成時の環境を理解することを目的として,地層に含まれる炭酸カルシウムの変化から堆積環境の評価を試みた.まず始めに炭酸カルシウム含有量の深さ分布と古生物学分析による古環境変遷を比較したところ,炭酸カルシウム含有量は海水準の上昇に伴い増加し,海水準の停滞および下降によって減少することがわかった.また,海成層の炭酸カルシウム含有量は,汽水および淡水成層と比べ高い値を示す結果を得た.そこで炭酸カルシウム含有量の増減から堆積環境および地盤層序について検討した.その結果,炭酸カルシウム含有量の増減は層相の変化を正確に捉えており,堆積環境および地盤層序の推定が可能であることがわかった.
和文報告
  • 長谷川 憲孝, 松井 保, 田中 泰雄, 高橋 嘉樹, 南部 光広
    2007 年 63 巻 4 号 p. 923-935
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/19
    ジャーナル フリー
     神戸空港は神戸港沖に埋立造成して築造されたが,海底地盤には沖積粘土層が厚く堆積している.埋立造成にあたっては,これら沖積粘土層の圧密特性を把握する必要があり,その特性を把握するために事前土質調査と各種計測器による計測を行ってきた.その結果,沖積粘土層は擬似過圧密状態であり,その程度は西~北西域で高いことが明らかとなった.施工の進行に伴って,過圧密比の高いエリアにおいて,室内土質試験結果による解析値よりも大きな沈下実測値が得られ,圧密進行後の間隙比も室内土質試験結果より小さい値を示すことが分かった.このことより,これらエリアにおいては解析を行う際に過圧密比を低減する必要が生じた.見直し後の解析値は,その後の実測値とほぼ一致しており,見直しの妥当性が確認できた.
  • 風間 基樹, 清水 友子, 森 友宏, 仙頭 紀明, 渦岡 良介
    2007 年 63 巻 4 号 p. 963-980
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
     1964年新潟地震において,信濃川下流域では液状化に起因する数メートルに及ぶ流動変形が発生した.中には,両岸が20m も狭まった場所があったことも報告されている.著者らは,地盤変形の痕跡が地中にどのように残されているかを調査するため,昭和大橋上流の信濃川左岸河川敷において,地中の地層構造を目視で観察できる地層抜き取り調査を実施した.調査によって,液状化や流動変形に関係する特徴的な地質構造である,貫入した砂脈,水抜け構造,液状化したと考えられる砂層の直上に位置するシルト·砂互層の水平堆積構造の乱れなどが,地層中に残されていることが明らかとなった.また,得られた試料を用いて,物理試験および力学試験を行った結果を合せて報告している.
和文ノート
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