土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
ISSN-L : 1880-6058
62 巻, 4 号
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和文論文
  • 有村 幹治, 田村 亨, 井田 直人
    2006 年 62 巻 4 号 p. 505-518
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル フリー
     土木計画分野においては,遺伝的アルゴリズム(GA)は離散的最適化問題の解法として認識され,既に多くの適用研究が蓄積されている.本研究の目的は,土木計画分野におけるGAの適用研究の今後の方向性を検討することにある.そのために,現状のGAの適用状況と最適化アルゴリズムとしての課題を整理し,計算工学分野における応用分野を踏まえた上で,適応学習アルゴリズムとして戦略ゲーム型GAを提案する.ケーススタディから,適応学習アルゴリズム,また動学的相互作用系に対する思考実験装置としてのGAの今後の可能性について検討する.
  • 中山 晶一朗, 高山 純一, 長尾 一輝, 所 俊宏
    2006 年 62 巻 4 号 p. 526-536
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/20
    ジャーナル フリー
     現実の交通ネットワークでは,様々な要因によりその交通量や旅行時間は日々変動している.事故や災害などが生じていない通常の交通状況下では,交通量・旅行時間の変動の主要な原因の一つは,交通需要の変動である.本研究では,交通需要が正規分布に従って確率変動するとともに,配分された交通量も正規分布に従う確率的な交通ネットワーク均衡モデルを提案する.このモデルは現実の交通ネットワークの不確実性や時間信頼性の評価を可能とするものである.そして,そのモデルを金沢市の道路ネットワークに適用し,金沢道路ネットワークの旅行時間の不確実性・信頼性評価を行う.さらに,推定した金沢道路ネットワークの旅行時間の確率変動下で,緊急車両に情報提供を行うことの効果分析を行う.
  • 中山 晶一朗, 高山 純一
    2006 年 62 巻 4 号 p. 537-547
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/20
    ジャーナル フリー
     災害や事故が発生していない通常の交通状況下では,交通ネットワークの不確実性の主な原因として,交通需要や個々人の経路選択が日々変動することが挙げられる.これらの交通需要及び経路選択を確率事象として捉え,本研究では,交通需要が確率的に変動するとともに,経路選択が確率的に行われる場合の確率的ネットワーク均衡モデルを構築する.本モデルでは,交通需要と経路選択の両方が確率的であるため,交通量及び旅行時間が確率的に変動する.この提案したモデルを利用,そして発展することにより,交通ネットワークの不確実性や旅行時間信頼性の評価とともに,交通量や旅行時間の確率的な性質の理論的な解明が可能となると期待できる.
  • 中山 晶一朗, 高山 純一
    2006 年 62 巻 4 号 p. 548-557
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/20
    ジャーナル フリー
     交通ネットワーク均衡モデルのパラメータ推定では,データ入手の容易さの観点から,リンク交通量の利用が便利である.これまでは均衡モデルが算出する計算交通量と実際の交通量との二乗誤差が最小となるようにパラメータが推定されることが多かった.しかし,この最小二乗法では,各リンク交通量が独立であることが前提となる.しかし,現実のリンク交通量はリンク間で独立ではなく,近接するリンクでは相関がかなり高い.よって,最小二乗法は,リンク交通量の相関等の観点から理論上問題であり,推定したパラメータにバイアスが含まれる恐れもある.そこで,本研究では,最尤推定法によってリンク間の交通量の相関を考慮した交通ネットワーク均衡モデルのパラメータ推定法を提案するとともに,その推定量が真値となるための条件について考察する.
  • 加知 範康, 加藤 博和, 林 良嗣, 森杉 雅史
    2006 年 62 巻 4 号 p. 558-573
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,生活環境質(QOL)が高い都市空間構造を実現するための居住地立地誘導の方向性を見いだす指標として,都市内各地区における居住から得られる生活環境質の評価指標を「余命」を尺度として定義する.定義した指標を用いて財政的持続性および社会的公平性制約下での都市全体の生活環境質最大化問題を定式化し,さらに,これを都市の居住地立地施策に適用するために,生活環境質を市街地維持費用で除した社会的費用効率(S値)を用いた撤退・再集結地区選定の枠組みに展開する.本手法を実際の地方都市に適用した結果,生活環境質自体は中心部より郊外部の方が高いものの,S値は市街地が拡大する前の既存集落部で高くなり,分散集中型への誘導が望ましいことが示される.
  • 鈴木 春菜, 谷口 綾子, 藤井 聡
    2006 年 62 巻 4 号 p. 574-585
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
     持続可能な交通手段への自発的な行動変容を促すコミュニケーション施策として,近年モビリティ・マネジメント(MM)が注目されている.本研究では,MMの中でも特にTFPに着目し,2005年までに国内で実施された31事例を整理し,行動変容指標を一元化した上でこれまでのTFPの実施状況と効果をまとめた.この結果,居住者を対象としたTFPの実務的効果の平均は,自動車利用が約19%削減,公共交通利用が約32%増加というものであった.さらに,効果と各手法との関係を探索的に分析することにより,現在様々な手法が組み合わされて実施されているMM施策の中でどの手法がより効果的であるかを探り,現在使用されている手法の中では,“目標設定”が自動車行動削減に効果的であることが示された.
  • 石 磊, 大西 正光, 小林 潔司
    2006 年 62 巻 4 号 p. 586-604
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究ではPFI(Private Financial Initiative)事業におけるモラルハザードを克服するための保証金・モニタリングについて考察する.その際,モラルハザードのタイプとして,技術的・財務的モラルハザードが存在することを指摘する.事業権契約に保証金を導入することにより,技術的・財務的モラルハザードを抑制できるが,保証金の機会費用が発生する.一方,金融機関によるモニタリングにより,財務的モラルハザードを抑制することが可能である.しかし,モニタリングのみでは技術的モラルハザードを抑制できない.PFI事業によるモラルハザードを効率的に抑制するためには,モニタリングにより財務的モラルハザードを抑制しつつ,技術的モラルハザードを抑制するための保証金額を低減させるような方策が望ましいことを示す.
  • 赤松 隆, 佐藤 慎太郎, Nguyen Xuan Long
    2006 年 62 巻 4 号 p. 605-620
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
     混雑料金制は,理論的には,交通渋滞問題に対する優れた方策である.しかし,その制度の有効な実施に不可欠な(1)利用者情報(需要関数)の正確な推定や(2)渋滞メカニズム(ボトルネック混雑)を考慮した動的料金の設定は,実際には非常に難しい.そこで本稿では,混雑料金制度に代わるTDM施策として,“ボトルネック通行権取引制度”を提案する.そして,この制度の導入により,確実に渋滞が解消するのみならず,通行権取引市場で適切な通行権価格体系が実現し,社会的に最適な状態となることを示す.さらに,その証明を通じて,提案した通行権の設定・取引問題と住宅立地均衡問題の数理的同型性を明らかにする.
  • 屋井 鉄雄
    2006 年 62 巻 4 号 p. 621-637
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
     計画確定行為の正当性を確保するために依拠すべき要件を明確化することによって,近年実務的には広がりを見せてきた,パブリックインボルブメント(PI)の計画手続きにおける位置づけを明確化することを目的に本研究を構成した.そのため,従来の研究を背景に,計画確定行為の正当性が,目的設定の合理性と手段の合理性からなる計画自体の正当性と,合法性,手続き公正性,手続き客観性,手続き合理性,手続き誠実性,手続き妥当性の6要件で構成される計画手続きの正当性との2つで成立することを述べ,そのうち手続き妥当性がPIの要件に対応する概念であることを示した上で,その構成4要件を示すことによってPIと計画手続き全体の要件体系を明らかにしている.
  • 北野 喜正, 西田 純二, 小林 潔司, 松島 格也
    2006 年 62 巻 4 号 p. 638-656
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,事前・事後割引料金システムの経済厚生を比較する.事前割引料金システムでは,実際の交通サービスの利用に先立って,サービス対価の支払い額が確定している.一方,事後割引料金システムでは,事前に料金メニューのみが提示され,家計のサービス行動に応じて料金が事後的に決定される.このように,事前・事後割引料金システムでは家計と企業のリスク分担構造が異なる.本研究では,以上のリスク分担構造を考慮した3期間契約モデルを定式化し,事前・事後割引料金システムが企業の利潤,家計の厚生に及ぼす影響を理論的に分析する.その結果,既存の料金システムを併存しつつ,新しく割引料金システムを導入する場合,事後割引料金システムの方が社会的厚生の観点から望ましい結果をもたらすことが明らかになった.
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