本稿の目的は,動画配信サブスクリプションサービスを対象に,コンテンツの知覚多様性が同サービスに対する消費者のロイヤルティを高めることに寄与するかを検証することである。検証にあたり日本における主な動画配信サービスの利用者を対象に調査を行った。分析の結果,コンテンツの知覚多様性は,サービスの知覚された有用性および知覚された楽しさを介して,ロイヤルティに正の影響を及ぼすことが確認された。ただし,知覚された有用性および知覚された楽しさがロイヤルティに及ぼす影響は,知覚された使用容易性によって調整されることも確認された。この結果は,知覚された使用容易性の高まりに伴い,ロイヤルティ形成において重要な先行要因が知覚された有用性という功利的ベネフィットから知覚された楽しさという快楽的ベネフィットへとシフトするものと解釈できる。
本研究は,消費者行動におけるモノの処分(Disposition)が自己構築に果たす役割を検討する上でのアプローチと課題を検討する。モノの処分は,消費者行動研究において消費者行動の一部と位置づけられながら,その数は長年限定的なものに留まってきた。しかし近年,所有者の自己構築との関連のもとモノの処分の役割を問う研究の蓄積が進みつつある。本研究は,所有者の自己構築とモノの処分の関係を明らかにしてきた既存研究を整理し,今後の研究の方向性を示す。取得や所有の局面で付与された過去の意味の清算という役割に加え,処分の意思決定過程を儀礼と捉えてその過程の中での新たな自己構築の様相に照射する研究や,その作用を長期的に考察する研究の重要性を示す。
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