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第Ⅱ報:基本的知的活動・問題行動
三田 勝己, 三上 史哲, 三田 岳彦, 岡田 喜篤, 末光 茂, 江草 安彦
2013 年 38 巻 3 号 p.
401-412
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
ジャーナル
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本研究は1988年から22年間調査された「個人チェックリスト」の基本的知的活動(遊び1項目、コミュニケーション2項目)と問題行動(異常習慣6項目、対人関連行動6項目)を取り上げ、これら15項目の活動制限の横断的な実態と経年変化を明らかにすることを目的とした。分析対象者は大島の分類1~4に属する定義上の重症心身障害児(者)であった。「遊び」は、遊びが認められない人たちが17%、一人遊びが58%、他者との遊びが25%を占めた。「コミュニケーション」は理解能力あるいは表現能力が全くない人たちが20%存在した。一方、十分な理解ができなかったり、身ぶりなどで表現する人たちが70%、簡単な会話を理解したり、言語で表現できる人たちが約10%を占め、基本的知的活動の制限が多様であることを示した。「問題行動」は、異常習慣の3項目と対人関連行動の3項目で15~30%の人たちに認められた。これら6項目は比較的身体活動を伴わない問題行動であり、重度の運動機能障害が問題行動の表出に密接に関わっていたと推察された。
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水戸 敬, 高嶋 幸男, 末光 茂
2013 年 38 巻 3 号 p.
413-419
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
ジャーナル
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重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の在宅支援の一つである重症児(者)通園事業は20年余を経過して、全国に300カ所以上の事業所数になっているが、残念ながらまだまだ改善すべき課題も多い。そこで、それらの改善すべき点を明らかにするためにアンケート調査を行い、通園事業の利用状況、送迎手段、運営状況、通園事業所の担当地域における問題点およびその解決策について質問を行った。回答の中で、通園施行施設数の不足が通園関係者にとって一番の問題であり、続いて看護師不足、緊急時体制などの医療面、送迎の所要時間やその間の医療体制、送迎の費用などの問題、収支を含む運営、地域のシステム化などが続いた。NICU(新生児集中治療室)長期入院既往児の通園も多かった。これらの課題に対して、事業所間や行政との連携体制を強力にして様々な社会資源を活用し知恵を出し合って一つ一つ解決していくことが必要である。
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−26年の実態調査−
染谷 淳司, 矢野 悦子
2013 年 38 巻 3 号 p.
421-430
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
ジャーナル
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今回、重症心身障害児(2012年4月から療養介護)施設M園入所者122名全員を対象に、腹臥位、四つ這い位、体幹前傾の膝立ち位など顔面および胸腹部を下に向け支持した姿勢(以下、腹臥位系姿勢)の利用状況を身体、環境両面から実態をアンケート調査し検討した。腹臥位系姿勢を日常生活で一定時間利用している者は65名、超(準)重症分類で超重症児(者)は7名、準超重症児(者)は47名、その他の重症児(者)(以下、超準非該当児(者))は11名で、準超重症児(者)の利用が多かった。有効とされたのは呼吸・消化・運動器への効果と、感染の急性期活用などであった。また、気管切開、胃瘻・腸瘻、骨折、介護負担の対策や福祉(補装具)制度の活用実績が確認できた。非利用者は57名で超重症児(者)と超準非該当児(者)とが多く、身体的要因と環境要因の重複が非利用の理由であった。特に、人工呼吸器利用者では人的環境の制約が非利用の要因となっていた。今回、腹臥位系姿勢の利用状況が明確になったのでさらなる検討を加え、重症心身障害児(者)の健康増進に寄与したい。
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柳原 友美, 細木 興亜, 平石 静香, 林 友美, 篠澤 由香, 内藤 早那恵, 長田 文子, 樋廻 旬子, 村田 博昭, 高橋 純哉, ...
2013 年 38 巻 3 号 p.
431-434
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
ジャーナル
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当院における重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の体格・栄養状態調査を実施した。当院に入院中の20歳以上の重症児(者)34名、2000年~2011年の間に死亡退院した20歳以上の重症児(者)11名、計45名を対象とし、健常時のデータを比較・検討した。対象の平均年齢は41.4±12.3歳 (24-73歳)、男女比は5:4であった。各平均値は身長;148.8±13.5cm、体重;32.7±8.1kg、BMI;14.7±3.1、ローレル指数;100.2±23.5、血清総蛋白(以下、血清TP);7.1±0.9g/dl、血清アルブミン(以下、血清Alb);3.6±0.5g/dlで、血清Albは高齢者ほど低い傾向にあった。死亡群の血清TP、Albは平均年齢に有意差がなかったにもかかわらず、生存群に比べ有意に低値であり(血清TP;生存群7.2±0.7g/dl、死亡群6.8±0.5g/dl、血清Alb;生存群3.73±0.5g/dl、死亡群3.13±0.5g/dl)、血清TP、Alb低値は死亡のリスクファクターとなる可能性があると考えられた。
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林 友美, 細木 興亜, 坂井 友美, 小林 可奈, 内藤 早那恵, 長田 文子, 樋廻 旬子, 高橋 純哉, 村田 博昭, 庵原 俊昭
2013 年 38 巻 3 号 p.
435-438
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
ジャーナル
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重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の経管栄養時の適切な姿位を模索するため、重症児(者)11名(胃瘻5名、経鼻胃管栄養6名)を対象に脊椎レントゲン、上部消化管造影、アセトアミノフェン法を用い、脊椎側彎、胃食道逆流(gastroesophageal reflux; GER)、胃軸捻転、胃排出能等を評価した。対象の平均年齢は37.3±19.8歳、72.7%は超重症児(者)であった。72.7%に脊椎側彎を、54.5%にGERを、27.3%に胃長軸捻転もしくは胃短軸捻転を認めた。右側臥位は仰臥位、左側臥位と比較して、アセトアミノフェン血中濃度の立ち上がりが遅く、血中濃度のピーク時間は遅延した(右側臥位61.4±15.7分、左側臥位39.5±23.5分、仰臥位40.9±24.3分)。また胃長軸捻転はピーク時間を早める傾向にあった(長軸捻転有り群20.0±8.7分、なし群48.8±23.7分)。経管栄養時の姿位は個々に応じる必要があるが、右側臥位は胃排出能が悪い傾向にあり注意が必要である。
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−SD法による理学療法学生のイメージ変化−
吉田 勇一
2013 年 38 巻 3 号 p.
439-445
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
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本研究は、重症心身障害児(以下、重症児)の理学療法を題材としたビデオの有効性を検証した。対象は重症児の理学療法の見学経験がない理学療法専攻の学生21名とした。ビデオの視聴前後における重症児に対するイメージ変化を測定した。イメージ測定にはセマンティック・ディファレンシャル法(以下、SD法)を使用した。ビデオ視聴後に対象者のSD法の得点は有意に高い値を示した。21名中20名の得点が増加した。またビデオ視聴後にSD法68項目中31項目が有意に高い値を示した。学生の重症児に対するイメージ変化において、ビデオ教材の有効性が示唆された。
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宮崎 弘道, 小林 明男, 鈴木 郁子, 丸木 和子
2013 年 38 巻 3 号 p.
447-453
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
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M療育センター入所者251名(平均42.4±9.6歳)の歯科疾患調査を行った。そして、厚生労働省の平成17年歯科疾患実態調査(以下、厚労省調査)と比較検討した。また、2002〜2011年の10年間の喪失歯の原因を調査し、口腔保健活動を評価した。以下の結果を得た。1)DF歯率(現在歯数に対する未処置歯数と処置歯数の百分率;Dは未処置歯、Fは処置歯)は、対象者全体は35.7%であり厚労省調査の46.3%より有意に低値であった( p<0.01)。2) 一人平均DMF歯数(以下、DMFT;Dは未処置歯、Mは喪失歯、Fは処置歯)は、対象者の平均では14.6歯であり、厚労省調査の14.6歯と同数であった。3)一人平均未処置歯数は、対象者の平均が4.6歯で、厚労省調査の1.1歯より有意に多かった( p<0.01)。しかし、未処置歯の内訳はう蝕1度が68.3%と高値であり、う蝕2度が13.1%、う蝕3度が0.9%と少なかった。4)一人平均喪失歯数は、対象者の平均が6.4歯であり、厚労省調査の2.3歯と比べ有意に多かった( p<0.01)。5)喪失歯の原因は、対象者全体では歯周病が67.0%で最も多く、次いでう蝕が19.2%であった。6)一人平均年間喪失歯数は0.12歯であった。当施設のDF歯率とDMFTが、厚労省調査と比べ低値、または、同数であり、う蝕有病歯数は少なかった。これらの結果は、当施設における継続した歯科健診と歯科治療の口腔保健管理の効果が反映され、歯の喪失を抑制しているものと考えられた。
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浅野 一恵, 山倉 慎二
2013 年 38 巻 3 号 p.
455-461
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
ジャーナル
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当施設に入所している重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))63名の家族に終末期医療に対するアンケート調査を行った。アンケート回収率は80.9%であった。終末期医療に対する基本的姿勢の項目では、「回復が見込めない場合は施設で看取ってほしい」が64.7%、「家族が看取りたい」31.3%、「できるかぎりの集中治療を受けたい」3.9%であった。終末期の医療介入の項目では、「心肺蘇生術を希望する」54.9%、「人工呼吸器装着を希望する」11.8%、「人工透析や血漿交換を希望する」7.8%であった。今回終末期医療に対するアンケートを施行したことにより、必ず訪れる終末期を家族に意識してもらう効果があったと考えた。また家族全体で考え合ってもらったことにより、ご本人を主体として終末期のあり方を考える大きな一歩となった。
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−「表出」のスコア化と唾液アミラーゼ活性測定−
大澤 和子, 岡本 真奈美, 関 ひろみ, 小林 信や
2013 年 38 巻 3 号 p.
463-470
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
ジャーナル
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音楽療法が重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))に有効であることを証明するため、主観的方法と客観的方法で検討した。主観的方法として目・口の動き、表情、体の動きなどの「表出」をスコア化し、生化学的指標として唾液アミラーゼ活性を測定した。音楽療法後に、表情および視線等の「表出」において変化が見られた。唾液アミラーゼ活性は音楽療法後低下が予測されたが、有意な変動は見られなかった。ビデオ撮影を使った「表出」のスコア化、唾液アミラーゼ活性測定はいずれも非侵襲性で使用可能な方法であった。唾液アミラーゼ活性の測定は、重症心身障害医療の音楽療法における意義を明らかにするため、高揚する音楽と鎮静をもたらす音楽における療法の前・後の唾液アミラーゼ活性の違いを比較検討する必要があると考えた。
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小泉 麗
2013 年 38 巻 3 号 p.
471-478
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
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本研究の目的は、重症心身障害児(以下、重症児)が胃瘻造設を受けたことによるケアの負担の変化に関する親の認知を記述することである。過去5年以内に胃瘻造設を受け、在宅で生活する重症児の親に質問紙調査を行い、90名を分析対象とした。親のケアの負担の変化に関する自由記述内容を分析した結果、【子どもの体調】【子どもの生活】【医療的ケア】【受けられるサポート】【親の生活】【障害あるわが子への思い】の6つのカテゴリーを抽出した。胃瘻造設により親のケアの負担はおおむね軽減していたが、合併症の出現や受けられるサポートの減少等により負担が増大したケースも一部にみられた。100mmVASで親のケアの負担の程度に関する主観的認知を測定したところ、胃瘻造設前と比較して胃瘻造設後の現在のほうが有意にケアの負担が低いと認知されていた(t(89)= 8.4、p < 0.001)。胃瘻造設に関する意思決定過程において、看護師は情報提供を行い胃瘻造設が子どもと親の生活の質の向上につながるか、親とともに検討することが重要である。
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井手 秀平, 益山 龍雄, 岩崎 裕治, 有馬 正高
2013 年 38 巻 3 号 p.
479-485
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
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メラトニンは松果体より分泌される睡眠誘発作用を持つホルモンであり、重症心身障害児(者)(以下、重障児(者))の睡眠障害にも使用されるが、重障児(者)のメラトニン分泌に関する研究は今までに報告がない。われわれは入所中の重障児(者)13名(全例が経管栄養と気管切開術後、9名は人工呼吸器を使用)を対象に日中12時と夜間0時の唾液中メラトニン濃度を測定し、正常対照群5名と比較した。重障児(者)のメラトニン夜間濃度では異常低値は1名のみ、異常高値は7名、メラトニン昼間濃度の異常高値は12名、とほとんどの症例でメラトニン分泌は障害されておらずむしろ高値だった。また昼夜の濃度比は重障児(者)群で0.64±0.43と正常対照(0.18±0.06)よりも有意に高値だった( p = 0.02)。昼夜の濃度比が高いことと、追視がない、第三脳室が開大、という条件との間には有意な相関を認め、網膜から松果体に至るメラトニン分泌抑制系の障害のためと考えた。また日常的にてんかん発作があることもメラトニン濃度の昼夜比の高値と有意に相関していた。
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神田 ゆう子, 村田 尚道, 村田 麻美, 武田 明美, 堀 雅彦, 井上 英雄, 宮脇 卓也, 江草 正彦
2013 年 38 巻 3 号 p.
487-493
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
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本研究は、横地分類と摂食・嚥下機能との関連について検討した。横地分類の中でも知能レベルと移動機能レベルで重度に該当した者のうち、経口摂取を行っている重症心身障害者を対象とし、知能レベルと移動機能レベルのそれぞれについて、摂食機能獲得段階、口唇閉鎖の有無、口腔内の食物処理法の有無を評価した。その結果、摂食機能獲得段階における捕食は知能レベルと関連があり、安静時と処理時の口唇閉鎖の有無と口腔内での食物処理法の一部については、知能レベルと移動機能レベルの両者の影響があることがわかった。これらの結果から、横地分類の知能レベルと移動機能レベルの障害程度区分を応用することで、摂食・嚥下機能障害の予測に有用であることが示唆された。
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足立 昌夫, 常石 秀市, 河崎 洋子
2013 年 38 巻 3 号 p.
495-500
発行日: 2013年
公開日: 2021/08/25
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3施設62例の重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の難治性てんかんに対してlevetiracetam(以下、LEV)を投与し、10例(16.1%)に尿閉を認めた。尿閉の重症度は、軽症7例、中等症3例で、尿閉による早期の中止2例、継続後中止(効果不十分)3例の中止5例全例で尿閉は軽快した。要因分析では、LEV投与量、血中濃度、投与期間などと、尿閉の出現時期や重症度に明らかな相関はなし。全例が症候性の難治性てんかんのため、使用中の抗てんかん薬は3-5剤(平均3.0剤)と多く、その他にも抗コリン剤(総アルカロイド)、制酸剤、抗痙縮剤、筋弛緩剤、ボツリヌス毒素、抗うつ薬などの併用例が含まれ、併用総薬剤数は3-7剤(平均4.2剤)と多剤併用例ばかりであった。LEV関連の尿閉は、比較的軽症ではあるが、重症児(者)特有の要因(身体特性や併用薬剤)が関与した可能性が示唆され、今後、重症児(者)に同剤を投与する際には、丁寧な問診を含めた一定の留意が必要である。
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