異種家畜の採食行動特性の差異を利用した生態的な草地管理法の1つである先行・後追い放牧による掃除刈りの効果を追究するため, 牛先行放牧後の草地において, 引き続き牛を放牧した場合と馬を後追い放牧させた場合の両家畜の採食行動や放牧後の草地植生を比較した。先行放牧後に放牧圧がほぼ等しくなるよう黒毛和種妊娠牛4頭群とトカラ馬8頭群を別々に放牧した草地 (牛区および馬区各々約0.75ha) において, 放牧期間中に1回それぞれの日中 (7: 00~18: 30) の採食行動を観察するとともに, 退牧後に採食植物の草高および現存草量を測定した。先行放牧後の草地での主要植物出現頻度はオヒシバ (
Eleusine indica (L.) Gaertn) 47.2%, イヌビエ (
Echinochloa crus-galli (L.) Beauv.) 15.6%, キシュウスズメノヒエ (
Paspalum distichum L.) 7.5%であり, オヒシバ優占の植生であった。後追い放牧時における馬の日中の採食, 飲水, 横臥休息および排糞行動は牛と比べて有意に少なかったが, 佇立休息と移動は有意に多かった (P<0.05) 。後追い放牧期間中, 牛はオヒシバ, イヌビエおよびキシュウスズメノヒエの順に, 馬はオヒシバ, キシュウスズメノヒエおよびチカラシバ (
Pennisetum alopecuroides L.Spreng.) の順に多く採食し, 優占種であるオヒシバについては牛と比べて馬が有意に多く採食した (P<0.05) 。後追い放牧後の草高については, オヒシバ, イヌビエおよびキシュウスズメノヒエのいずれも牛区と比べ馬区で有意に低かった。現存草量も牛区と比べて馬区で有意に少なかった。以上の結果から, 先行・後追い放牧を行った場合, 馬は牛よりも採食時間が短かったものの, 効率的に牛の不食草を利用したものと推察され, 馬による掃除刈り効果が示唆された。
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