本試験は, 亜熱帯地域における野草地の放牧利用に関する基礎的知見を得る目的で行った。
約5haのススキ優占の原野を3牧区に分け, 10~11か月齢の黒毛和種去勢牛3頭を放牧し, 放牧前, 放牧後, 火入れ後の植生を調べた。火入れ後播種したバピアグラスの定着数や放牧期間中の和牛の日増体量も調べた。また, 有用野草の検討も行った。なお, 不耕起造成は放牧, ススキ刈倒し, 火入れ, 播種の順に行った。
その結果, 放牧前の植生は, ススキとノアサガオが優占していた。放牧後, ノアサガオやクズは食べられ, 草丈の高いススキは残った。火入れ後の野草地は, カタバミやベニバノボロギクが優占した。火入れ区と無火入れ区におけるバビアグラスの定着数は類似していた。各牧区における日増体量は0.17~0.74kgの範囲であった。有用野草と思われるノアサガオ (
Ipomoe indioa Merr.) は, 化学分析の結果, 栄養価の高い草であることがわかった。
以上の事から, 前植生を抑圧する方法としての火入れが播種後のパヒアグラスの定着に及ぼす影響は小さいものと思われる。しかし, 今もなお, 至る所に不発弾が残っているため火入れは危険であり, むしろ蹄耕法のほうが安全かつ自然をそのまま利用するという点で有利である。また, 野草地には増体に貢献する有用野草があり, 野草のみで放牧利用することも可能である。しかしながら, 集約的な放牧利用を考えると野草地への牧草導入は必要である。
抄録全体を表示