本試験は, 徹底した消毒や衛生管理下での疾病予防によって, 抗菌剤を含まない飼料による肉用鶏の健全な飼育の可能性を追求するため行ったものである.試験区として市販のブロイラー用飼料に抗菌剤を添加する有抗菌剤区, 添加しない無抗菌剤区の2区を設定した.各々の飼料を熊本県で開発された肉用鶏天草大王の雄, 雌に給与して, 育成率, 増体量, 飼料要求率および主な可食部の重量を調査した.試験は, 毎日の逆性石鹸系消毒薬による消毒に加え, オルソ剤, 塩素剤消毒および過酢酸系煙霧消毒を行った飼養環境のもとで実施した.その結果, 有抗菌剤区, 無抗菌剤区の全平均値でそれぞれ, 育成率が有抗菌剤区で97.0%, 無抗菌剤区で97.5%, 体重は有抗菌剤区で3, 612g, 無抗菌剤区で3, 582g, 飼料摂取量は有抗菌剤区で12, 677g, 無抗菌剤区で12, 309g, および飼料要求率は有抗菌剤区で3.5, 無抗菌剤区で3.5を示し, 抗菌剤の有無に有意な差は認められなかった.また, モモ肉, ムネ肉, 手羽, 可食内臓の重量, および腹腔内脂肪の割合についても抗菌剤の添加, 無添加にかかわらず, 同様の値が示された.
以上の結果より, 肉用鶏の生産において, 徹底的な鶏舎の消毒および衛生管理を組み合わせた疾病予防策の強化により, 育成率, 生産性が低下することはなく, 餌付けから出荷まで抗菌剤無添加飼料で飼育することが可能であると推察された.
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