昭和56年から63年までの間に, 大分県産素牛から肥育された黒毛和種去勢牛について, 肉量及び肉質に関する形質, ならびに経済性指標を解析した。全国各地の枝肉市場から集めた8, 968頭のデータを最小自乗分散分析及びBLUP (最良線形不偏予測量) 分析プログラムで解析した。その結果は次のとおりであった。
1.最小自乗分散分析において, 本研究で用いた分析対象形質は, いずれも有意性を示した。
2.出荷年次別の効果は大分県産牛に特有の傾向を示さず, すべての分析対象形質において, 主要な市場全体の枝肉の傾向とよく一致していた。
3.肥育終了日齢を延長すると枝肉単価は高くなったが, 肥育期間DG, 日齢増加額及び肥育期間日粗収益はいずれも低下した。肥育終了日齢の延長には十分な注意を要する。
4.分析対象形質の遺伝率は0.154~0.271の範囲にあった。肉量に関する形質と肉質に関する形質の遺伝相関は-0.267~-0.135となり, いずれも負の値を示したが, その値は小さかった。
5.後代牛20頭以上が得られた種雄牛30頭について, 期待後代差 (EPD) を計算した。福梅は日齢増加額で, 第6福久は肥育期間日粗収益で, 美桜は枝肉単価で, 第2賢晴は枝肉重量, 日齢枝肉量, 肥育期間DGで, 30頭の中で第一位のEPD値を示した。
6.広域 (県内全域) の種雄牛の評価値を各市町村域内で2頭以上の後代牛が得られた雌牛の評価値に取り込む方法を用いて, 雌牛の予測伝達能力 (ETA) を計算し, いずれかの形質において上位10頭に入ったものを示した。雌牛の中には育種価の相当高いものが存在することが明らかになった。
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