瀬戸内海備讃瀬戸に位置する新川河口域において海水試料を現場で培養し,Chl
a 濃度の比増殖速度と一次生産速度について年間を通じた測定を行った。培養海水中の栄養塩は,試験期間を通じて,培養終了時にも植物プランクトンの増殖を制限しない濃度で残存していた。また,調査海域は海底まで十分量の光が透過する上,浅海域の特徴である強光条件による一次生産速度の抑制も観察されなかった。これより,光強度も本調査域の一次生産速度を制限する主な要因ではなく,最も重要な環境因子は水温と考えられた。Chl
a 濃度は,低水温期には増加が認められなかったが,高水温期(7 月~9 月)は大きく増加し,比増殖速度として0.3-0.4/h を示した。一次生産速度も高水温期に高く,2015 年8 月には著しく高い460
μg C/l/h を記録した。一方,水温およびPAR から算出した月ごとの一次生産速度は0.01~1.13 g C/m
2/day と見積もられ,他の河口域や沿岸域と同様の範囲にあった。
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