北海道のオホーツク沿海域にある能取湖は、冬期に全面凍結する海水湖である。4月中句から12月中旬までは、オホーツク海との海水交換がある一方で流入河川はごく少ないために、湖内水はオホーツク海水に等しいことが明らかになっている。しかし、結氷期の調査研究例はほとんどなく、冬期間の湖内環境は不明である。本研究では、2008年2月6日から3月18日までの結氷期間に、水柱中と海氷中のクロロフィル
a の経時変化と環境の変化を調査した。その結果、期間を通じて、海氷上面の太陽放射の1%に相当する光が海氷下6-10mまで到達し、水中には0.4-6.0mg/m
3のクロロフィル
a があり、水深18mまでの積算量は8.7-119.1mg/m
2に達することが分かった。この間、厚さ20-31cmの海氷中の積算クロロフィル
a 量は2.2-10.1mg/m
2であった。クロロフィル
a の積算量では、アイスアルジーの寄与度は小さいようにみえるが、平均濃度では海氷中の値は8.3-40.1mg/m
3と顕著に高く、その分布は海氷下部に集中しているため、海氷直下の水中の一次消費者にとって利用しやすいものと考えられた。さらに、期間の途中で大型サイズのアイスアルジーが海底に直接沈下している可能性が示唆された。
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