本研究では,「場所に根ざした教育(place-based education)」の構想する学校カリキュラムの検討を通して,その理論と実践の教育方法学的意義と課題を明らかにすることを目的とする。グローバル化の進行のなかで生じている経済的荒廃や文化的同質化,コミュニティーの生態学的破壊にたいして,「場所に根ざした教育」は,人間と周囲の環境との相互依存の関係が学ばれる必要性を論じている。その実践として,バーンハートの提唱する「場所の教育学」のもと構想された,アラスカの学校教育改革の事例に焦点をあてる。
ここで問われたのは,学校教育において周縁化されてきたネイティブの知識体系と,西洋由来の知識体系との接続可能性と相互補完性を示すことであった。そこで,二つの知識体系を統合した文化的応答性のあるカリキュラムが構想され,教師用ハンドブックやレッスンプランを通じた教師教育へと展開する。
ここでは,ネイティブの知識体系を有する年長者と学校教育とがいかに共同して経験的で探究的な学びを行うのか,その教育方法も含めた構想がみられる。
「場所」を視点とすることで,今日における地域と学校教育とのあり方を展望することに示唆が得られる。
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