ガス窒化・軟窒化したSCM435鋼の回転曲げ疲労強度を評価した。化合物層形成材は化合物層無し材よりも高い疲労強度を示し,γ′相の場合において顕著であった。化合物層は,拡散層より高い降伏強さと大きな圧縮残留応力を示すことから,初期き裂抑制効果がある。ε相,γ′相いずれにおいても複数の微小き裂形成により,主き裂先端の応力集中を緩和し,疲労強度を高める。さらに,γ′化合物は,ε化合物よりも大きな表面圧縮残留応力に加え,塑性変形を示し,かつ微細結晶粒であることから,微小き裂成長の抑制に有効である。したがって,γ′化合物は,脆性的き裂成長を示すε化合物よりも表面き裂発生抵抗が大きく,高い疲労強度を示す。