炭素を含まない18%Niマルテンサイト鋼(C-free鋼)およびそれに炭素を添加したマルテンサイト鋼(0.15C鋼)を用いて,DIC法によるマルチスケールでのひずみ分布解析を行い,マルテンサイトの不均一変形挙動に及ぼす炭素添加の影響を調査した。低倍率での観察では,両鋼ともに試験片形状に起因したマクロなひずみ分布が見られたのに対し,高倍率の観察では,0.15C鋼において特定のブロックにひずみが集中するというマルテンサイト組織に依存した顕著な不均一変形挙動が生じる傾向が認められた。18%Niマルテンサイト鋼では,炭素を添加するとラス面内すべり系による優先的なブロックの塑性変形が顕著となり,不均一変形が促進される傾向にあると結論される。
DLCの耐久性と密着性を向上させるため,DLCに金属元素を傾斜的に含有させたDLCを中間層として適用する研究が進められている。しかし,傾斜中間層を構成する各組成がDLC膜の諸特性に与える影響を評価した報告はない。そこで,本研究ではSi添加DLC(Si-DLC)を採用し,原料ガス組成の違いによる影響を調査した。Si-DLCは,メタンガスとテトラメチルシラン(TMS)の混合ガスを原料ガスとして,高周波プラズマ化学気相成長法によりオーステナイト系ステンレス鋼に成膜される。試料に対して,断面組織観察,X 線光電子分光(XPS)分析,ラマン分光分析,グロー放電発光分光(GD-OES)分析,ナノインデンテーション試験,ロックウェル圧痕試験,摩擦摩耗試験を行った。TMSの割合の増加とともに成膜速度が上昇し,sp3およびSi-C結合の割合も増加することがわかった。しかし,硬さと耐摩耗性はTMSの割合の増加とともに低下した。さらに,TMSの割合に関わらず,すべての条件で優れた密着性が得られた。
大気圧バリア放電技術を応用し,マスクレスで鉄鋼表面を局所窒化する手法に成功した。第一に,バリア放電の高温拡張化現象が換算電界の拡張に起因することを電界計算により理論的に示した。第二に,この理論的考察から印加電圧により高温拡張化を制御する手法を着想し,実験において実際にバリア放電の局所点火および点火面積制御に成功した。第三に,点火面積を制御したバリア放電を用いて鉄鋼表面を窒化処理した結果,窒化面積も同様に制御できることが分かった。結果として直径0.7 mmの点電極を用いた実験系では,マスキングや窒化防止剤を用いずに窒化面積を400 mm2から0.8 mm2まで局所化することに成功した。
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