機械部品の多くに適用される表面改質処理として浸炭焼入れが知られている。著者らは今後もカーボンニュートラル社会の中で共存する次世代の浸炭手法としてインライン化を可能とする共晶温度以上における誘導加熱を用いた超高速浸炭処理を開発した。これまでにSCM420を用いて1523 K一定における炭素侵入挙動について報告している。しかし,種々の鋼材へ適用するためにはガス浸炭や真空浸炭とは異なる本処理の浸炭メカニズムの解明が必要である。本研究では,詳細メカニズム解明として温度領域を1473 Kと1573 Kに拡大し炭素侵入特性を調査した。その結果,炭素侵入特性の傾向は1523 Kと同様であることを示した。さらに,炭素侵入速度は浸炭温度に対して指数関数的に変化した。アレニウスプロットにより求めた超高速浸炭反応の活性化エネルギーは原料ガスであるメタンの分解反応と同等であり,本処理がメタンの分解反応に律速し炭素が侵入することを明らかとなった。
1層あたりの厚さおよび積層回数の異なる多層Si-DLC/DLC膜をオーステナイト系ステンレス鋼に成膜した。膜の密着性および耐摩耗性に及ぼす積層回数および膜厚比の影響を調査した。成膜した試料に対し,ナノインデンテーション,ロックウェル圧痕,スクラッチ,摩擦摩耗および剥離試験を行った。スクラッチ試験より,膜の密着性は積層数が2から4に増加するととともに改善したが,基材側の膜厚が薄い場合および積層数が8層の場合に密着性が低下した。剥離試験より,剥離距離は4層成膜した試料中で基材側に表面側よりも厚い膜が成膜された試料の方が,薄い膜が成膜された試料よりも増大した。
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