ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
42 巻, 1 号
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報文
  • 田中 秀弥, 須藤 篤
    原稿種別: 報文
    2021 年 42 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2021/01/10
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    近年,可視光照射によって駆動される反応に関する研究が活発に行われており,可視光によって励起する光レドックス触媒を用いることで,さまざまな結合生成反応が開発されている。本研究では,これまで著者らが開発してきたイミン類の可視光駆動型還元的カップリングを用いることで,新たなネットワークポリマーの合成を検討した。具体的には,モノマーとしてベンズアルデヒドとトリアミンの脱水縮合により得られるトリイミンを用い,光レドックス触媒としてペリレン,電子ドナーとしてジイソプロピルエチルアミンを加えて可視光を照射した。その結果,イミノ基の還元的カップリングが効率よく進行し,対応するネットワークポリマーが得られた。

  • 松本 幸三, 橋本 光司, 関川 恵汰
    原稿種別: 報文
    2021 年 42 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2021/01/10
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    アセチルグルコサミン誘導基(AGA)を側鎖に持つポリカルボシラン(polyBMSB-AGA)をヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)で架橋してネットワークポリマーを合成し,その化学的,物理的性質について検討を行った。AGA とHMDI がモル比で1:1 もしくは1:0.5 になるようにpolyBMSB-AGA にHMDI を添加してN,N- ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調製し,テフロン型枠上にキャストして120 ℃まで加熱することでフィルム状の架橋体polyBMSB-AGA-HMDI-1.0,polyBMSB-AGA-HMDI-0.5 を合成した。得られた材料はウレタン構造を有することを赤外(IR)吸収スペクトルにより確認した。示差走査熱量分析(DSC)測定の結果,架橋ポリマーではAGA の結晶化が阻害されていることが示唆された。また,熱重量分析(TGA)測定によりこの材料は140 ℃以下で熱的に安定であることが示された。さらに,フィルム試料の引張試験の結果,polyBMSBAGA-HMDI-0.5 において,破断強度が155 MPa,破断伸びが0.16 となり,以前に報告されたグルコース由来基を持つポリカルボシランをHMDI で架橋して得られたネットワークポリマー(polyBMSB-Glucose-HMDI-0.5)と比較して強靭な材料であることが分かった。

  • 河辺 邦彦, 舘 秀樹, 岡村 晴之
    2021 年 42 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2021/01/10
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    リワーク型光硬化樹脂を用いて消去可能なホログラム材料を作製した。リワーク型光硬化樹脂は,第三級エステル結合を有する脂環型エポキシ含有メタクリレート,多官能アクリレート,532 nm 光に感光する光ラジカル開始剤,365 nm 光に感光する光酸発生剤の混合物から調製した。波長532 nm のNd-YAG レーザーを光源とした二光束干渉法により,厚さ100 μm のリワーク型光硬化樹脂に透過ホログラムを記録できた。ホログラムの記録は,532 nm 光照射により光ラジカル開始剤から発生するラジカルにより架橋反応が生じ,架橋部位の屈折率が増加したためだと考えた。記録したホログラムは,365 nm 光を照射した後,80 ℃で1 分間加熱することにより消去することができた。ホログラムの消去は,365 nm 光照射により光酸発生剤から酸が発生し,引き続く加熱によりリワーク型光硬化樹脂中におけるネットワークの分解により観察されたと考えた。本系の消去可能な記録材料への応用可能性が示唆された。

  • 梶 正史, 大神 浩一郎
    原稿種別: 報文
    2021 年 42 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2021/01/10
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    エポキシ樹脂の耐熱性を向上させるための一つの方向に芳香族ジケトン構造の導入がある。イソフタル酸ジフェニル(DPIH)のFries 転移反応によりビスフェノール化合物(BHBB)を得た後,エポキシ化反応を行うことで芳香族ジケトン構造を持つエポキシ樹脂(BGBB)を合成した。これを用いてフェノールノボラックを硬化剤とした硬化物の物性を評価した結果,ガラス転移温度(Tg)は159 ℃とビスフェノールA 型エポキシ樹脂(DGBPA)に対して32 ℃,フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(GPAR)に対して13 ℃高い値を示した。また,700 ℃での残炭率が35.7 wt%とGPAR の25.9 wt%に対して大幅に上昇するとともに,10 wt%重量減少温度(Td10)は410 ℃であり,BGBB 硬化物の高い熱分解安定性が確認された。

総合論文
  • 青木 大輔, 高嶋 力任, 大塚 英幸
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 42 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2021/01/10
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

    マレイミド基は,チオールとのクリック反応やフランとの可逆的なDiels-Alder 反応など反応性に富む官能基の一つである。そのため高分子骨格中に組み込むことでマレイミド骨格に由来する反応性や機能を汎用高分子に付与することができる。しかし,マレイミド基を簡便に高分子鎖に導入する手法は限られており,その多くは精密な高分子合成法に依存している。本総説では,汎用的な高分子鎖に簡便にマレイミド基を導入可能な分子骨格としてp- 位にマレイミド構造を持つフェニルイソシアネート(PMPI)に着目し,PMPI およびその類縁体の合成から,その反応性を用いた高分子修飾反応,さらには得られたマレイミド末端高分子を用いた応用展開について著者らの研究グループの成果を紹介する。

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