ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
41 巻, 2 号
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報文
  • 山田 尚史, 大村 昌己, 廣田 健, 大神 浩一郎, 中原 和彦, 梶 正史
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 2 号 p. 52-57
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/04/10
    ジャーナル フリー

    4,4’- ビフェノールと4,4’- ビスクロロメチルビフェニルとの反応により得られるビフェノール構造含有樹脂を用いてビフェニル構造を有する新規多官能エポキシ樹脂(BDP-E)を合成した。これを用いて硬化物を作製し,ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(BP-E)およびo- クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCN-E)の硬化物の物性と比較した。動的粘弾性測定の結果,フェノールノボラックを硬化剤として得られるBDP-E 硬化物のガラス転移点(Tg)は211 ℃であり,OCN-E 硬化物の186 ℃より高いTg を示した。また,示差熱重量測定の結果,BDP-E 硬化物の700 ℃での残炭率は41%であり,BP-E 硬化物の28%より高い値を示した。この結果は,BDP-E の剛直なビフェニル構造に基づき分子運動が抑制されたことに加え,熱分解安定性に優れるビフェニル構造の導入率が増加したことに起因すると考えられる。さらに,トリフェニルメタン型フェノール樹脂を硬化剤として得られる硬化物の200 ℃,1000 時間保持後における曲げ強度保持率は,BP-E 硬化物に対して11%向上した。この結果も,分子運動の抑制とビフェニル構造の導入率が増加したことに起因するものと考えられる。

  • 高倉 泰亮, 角田 貴洋, 生越 友樹, 山岸 忠明
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 2 号 p. 58-64
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/04/10
    ジャーナル フリー

    配位結合はその特徴として,使用する金属種や価数の違いによって,配位子との結合力や配位数が異なることから,金属種の選択によって材料の物性を容易に変化させることができる。2,5- ジメチルフェノールとテレフタルアルデヒド酸を原料としてカルボキシル基を有するフェノール誘導体を合成し,これをパラホルムアルデヒドと反応させることで,カルボキシ基が等間隔で導入された直鎖状ポリマーを合成した。この配位結合部位を持つポリマーは,DMF 中で金属硝酸塩と反応させることで,配位結合によって架橋したネットワーク構造を形成した。このネットワークは使用する金属イオンの種類や価数に応じて形態が変化した。加えて,塩酸添加による化学的刺激に応答して即座に架橋が切断する性質を示した。これにより,従来は共有結合による架橋形成後の構造の組み替えが困難だったフェノール系のネットワークに刺激応答性という新たな機能を与えることに成功した。

  • 工藤 宏人, 宮前 翼, 上田 正人, 村山 憲弘, 林 順一
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 2 号 p. 65-71
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/04/10
    ジャーナル フリー

    アセタール結合を介し,側鎖にスチリル残基を有するノーリア誘導体Noria-VES を合成し,それらのラジカル重合を,メチレン鎖長が異なるジメタクリルアミド化合物類DM[n]( n=3, 6, and 12)と行い,対応する架橋化合物類Gel(Noria-VES-co-DM[n])を得た。次に,得られたGel(Noria-VES-co-DM[n])の酸加水分解反応により,ノーリア部位が脱離した架橋化合物類Gel(VES-co-DM[n])(n=3 and 6)を得た。Gel(VES-co-DM [n])(n=3 and 6)は,多数の水酸基を有し,ノーリアをテンプレートとする内部空孔を有することが示唆され,それらは,アルカリ金属イオン類の高い包接性能を示した。

総説
  • 小池 常夫
    原稿種別: 総説
    2020 年 41 巻 2 号 p. 72-82
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/04/10
    ジャーナル フリー

    前報34)に引き続いて,エポキシ樹脂用硬化剤としてのシアネートエステルの特性につきレビューした。シアネートエステルが電気電子材料や先端複合材料用途へ適用されることを考慮した場合の欠点は,エポキシ樹脂/シアネートエステル硬化物が脆く靭性の点で劣る点と,難燃性が不十分な点である。この欠点改良のためのシアネートエステルの開発動向について,できるだけ多くの学術論文を調査しその概要を表の形にまとめ,いくつかの代表的な配合について掘り下げて解説した。靭性の改良は耐熱性などとの物性バランスの点で必ずしも十分には達成されてはいないが,難燃性についてはDOPO(9,10- ジヒドロ-9- オキサ-10- フォスファフェナントレン-10- オキサイド)を骨格中に導入することで,難燃性能が大幅に向上することが報告されている。更に,繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂/シアネートエステル硬化系の特性についても解説を加え,具体例として,国際熱核融合実験炉(ITER:イーター)に使用される複合材料絶縁部品を取り上げた。

総合論文
  • ──クレゾールノボラック樹脂編──
    山﨑 博人
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 41 巻 2 号 p. 83-95
    発行日: 2020/03/10
    公開日: 2020/04/10
    ジャーナル フリー

    ポジ型フォトレジストから形成されるドライフィルムは,膜質が脆く柔軟性に欠けるため,それをロール状の製品とすることに難点がある。これを解消するため,柔軟性と高精度なリソグラフィ性能を有するクレゾールノボラック樹脂についてまとめる。クレゾールノボラック樹脂に,柔軟性を付与するための分子構造をイメージすると,ⅰ)自由連結鎖をもつアルデヒド成分の導入,ⅱ)側鎖構造をもつアルデヒド成分の導入,ⅲ)嵩高いアルデヒド成分の導入などが考えられる。具体的には,ⅰ)グリオキザール(アルキル鎖長(x)=0),スクシンアルデヒド(x=2),グルタルアルデヒド(x=3),あるいはアジポアルデヒド(x=4)などのアルキル鎖をもつジアルデヒドの導入,ⅱ)ブタナールなどの導入,そして,ⅲ)単糖から誘導された5- ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)などの導入が挙げられる。これらの中で,剛直な複素環成分で嵩高い分子構造をもつHMF が,極めて高い柔軟性を示した。

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