ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
42 巻, 4 号
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報文
  • 大房 一樹, 橋本 直樹
    原稿種別: 報文
    2021 年 42 巻 4 号 p. 128-138
    発行日: 2021/07/10
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル 認証あり

    植物由来原料であるグリセリン,ソルビトールから合成した新規アクリラートを光硬化樹脂として評価した。グリセリンを直接アクリラート化したグリセリントリアクリラートは,従来の3 官能以上のアクリラートと比較して,低粘度,高硬度かつ高密着性という特長を有していた。グリセリンと炭酸エステルから得られたグリセリンカーボネートをアクリラート化したグリセリンカーボネートアクリラートは,従来の単官能アクリラートと比較して,高UV 硬化性,高Tg かつ低吸水率という特長を有していた。ソルビトールを原料としたエチレンオキサイド変性ソルビトールアクリラートは,高い水溶性を有する多官能アクリラートであり,UV 硬化性,塗膜硬度,水希釈性の点で従来の親水性アクリラートよりも優れた特性を有していた。グリセリントリアクリラートとグリセリンカーボネートアクリラートのバイオマス度はそれぞれ35%,50%と高く,環境負荷の低い光硬化樹脂として,インキや塗料,接着剤などへの応用が期待される。

  • 山本 紘希, 鈴木 祥仁, 松本 章一
    原稿種別: 報文
    2021 年 42 巻 4 号 p. 139-150
    発行日: 2021/07/10
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル 認証あり

    メルカプト基を含むランダム型シルセスキオキサンとN-アリルマレイミド共重合体間のチオール-エン反応を利用して有機無機ハイブリッド材料を作製した。まず,クロロホルム中60 ℃でN-アリルマレイミド,N-2- エチルヘキシルマレイミドおよびジイソブテンの組み合わせからなる3 元ラジカル共重合,あるいはN-アリルマレイミドとアクリル酸2- エチルヘキシルの組み合わせからなる2 元ラジカル共重合を行い,繰り返し構造ならびにアリル含量が異なるN-アリルマレイミド共重合体を合成した。続いて,イソシアヌル酸トリアリルの存在下,チオール変性ランダム型シルセスキオキサンを架橋剤として用いて,さまざまな反応条件で上記共重合体の熱硬化を行い,IR 分光法によってアリル基およびメルカプト基の反応の進行状況を追跡した。得られた有機無機ハイブリッドポリマー材料の熱的特性ならびに光学特性を評価し,いずれも優れた耐熱性と透明性を示すことを確認した。さらに,これら熱硬化系の仕込み組成中のアリル基とメルカプト基の比率や共重合体中のアリル基含有量が熱硬化物の機械特性に及ぼす影響の詳細を明らかにした。

  • トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液中でのゲル化と 低分子ドーパミンを利用した複合化の検討
    糸野 優弥, 松本 幸三
    原稿種別: 報文
    2021 年 42 巻 4 号 p. 151-157
    発行日: 2021/07/10
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル 認証あり

    ドーパミン置換度(DS)7 ~9%のドーパミン修飾カルボキシメチルセルロース(DOPA-CMC)を合成し,種々条件で調製したポリマー溶液の状態とそれらを用いた豚皮の接着性について検討した。DOPA-CMC(DS9%)のリン酸緩衝液(PBS,pH6.0,7.0,8.0)は無色の溶液であったが,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(Tris 緩衝液,pH8.0)は褐色のゲルになった。これらの材料を乾燥豚皮に塗布し別の豚皮を圧着して24 時間乾燥して調製し,試験片の引張せん断力を測定して乾燥接着強度を求めた。また,同様に調製した試験片を純水中に1時間浸漬した後,引張せん断力を測定して湿潤接着強度を求めた。pH6.0 ~8.0 のPBS 溶液を用いた場合,乾燥接着強度は0.71 MPa ~0.53 MPa でpH に関わらずほぼ一定で高い値を示した。湿潤接着強度は0.04 MPa ~0.07 MPa となり低い値であった。一方,pH8.0 のTris 緩衝液を用いた場合,乾燥接着強度は0.63 MPa でPBS と同程度であったが,湿潤接着強度は0.16 MPa でPBS 溶液に比べ明らかに高い接着強度と示した。 Tris 緩衝液において高い湿潤接着強度が発現した理由は,DOPA 基間で酸化カップリングが起こりDOPACMC が架橋されるためであると考察された。さらに,DOPA-CMC(DS7%)とDOPA の混合物にTris 緩衝液を加えて複合材料として用いた場合の湿潤接着強度は0.22 MPa となり,DOPA-CMC のみでTris 緩衝液を加えて調製した場合と比較して接着性が向上することが分かった。

  • 梶 正史, 甲斐 智美, 大神 浩一郎
    原稿種別: 報文
    2021 年 42 巻 4 号 p. 158-164
    発行日: 2021/07/10
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル 認証あり

    エポキシ樹脂の耐熱性を向上させるための一つの方向にエーテルエーテルケトン(EEK)構造を有するエポキシ樹脂がある。レゾルシノールと4,4’- ジフルオロベンゾフェノンとの反応によりフェノール性オリゴマー(HREEK)を得た後,エポキシ化反応を行うことで,軟化点が62-94 ℃のエポキシ樹脂(GREEK)を合成した。これを用いてフェノールノボラックを硬化剤とした硬化物の物性を評価した結果,ガラス転移温度は146 ℃とビスフェノールA 型エポキシ樹脂(DGBPA)に対して19 ℃高い値を示した。また,EEK 構造に起因して低熱膨張性と高い熱分解安定性が確認された。さらに,HREEK を硬化剤として用いることで,10 wt%重量減少温度が421 ℃,残炭率が53.7 wt%とエポキシ樹脂硬化物として極めて高い値を示した。

総説
  • 三村 研史
    原稿種別: 総説
    2021 年 42 巻 4 号 p. 165-171
    発行日: 2021/07/10
    公開日: 2021/12/04
    ジャーナル 認証あり

    パワーモジュール製品においては,高性能化,コンパクト化が進展し,それに用いられている絶縁材料には高耐熱・高放熱化が求められている。本稿では,高耐熱性に優れたシアネートエステル樹脂に高放熱性,かつ絶縁性を有する高熱伝導フィラーを配合した樹脂複合材料の研究内容を紹介する。シアネートエステル樹脂は高いガラス転移温度(Tg)を示すが,その特性を発現するのに高い硬化温度が必要である。そこで新規リン系硬化促進剤やフェノール化合物により200 ℃以下の硬化温度で高Tg を実現している。また,鱗片状のBN 粒子を凝集させたBN 凝集体を配合してBN 粒子の配向を制御することにより熱伝導率の飛躍的な向上が可能である。耐熱性の高いシアネートエステル樹脂にBN 凝集体を充填することで高い熱伝導率を保持しながら耐熱性と絶縁性に優れた樹脂複合材料を開発している。シアネートエステル樹脂は低粘度で成形性がよく,高耐熱・高熱伝導を実現できるため次世代パワーモジュールなどの絶縁材料として期待されている。

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