人工知能学会全国大会論文集
Online ISSN : 2758-7347
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  • 小畑 一真, 大沼 侑司, 土永 将慶
    セッションID: 1F4-OS-40b-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    基盤モデルの台頭に伴い、大規模言語モデルを複数台ロボットの行動決定に取り入れる研究が広がりつつある。しかし、多くの研究は環境情報が既知であることを前提としているか、ロボットが動的に環境情報を探索して取得することを考慮していない。また、複数のロボットを用いることで広範囲の環境情報を効率的に収集できるが、収集した情報量が膨大になるという課題も存在する。 本研究では、シーングラフとして記述された環境情報をGraphRAGを用いて処理し、semantic searchを適用することで、ロボットへの指示文に関連する環境情報を抽出する手法を提案する。 実験では、提案手法と従来手法による情報抽出の性能を評価する。また、これらの手法を用いた情報抽出の有無によって、ロボットへの指示文に基づくLLMによる行動計画の生成結果を比較した。実験結果から、提案手法はトークン数を最大約40%削減し、環境を抽出することで探索タスクの成功率を向上させることを示した。

  • 廣瀬 知弘, 久保田 文子, 竹内 裕久
    セッションID: 1F4-OS-40b-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    組合せ最適化問題に対する従来のアプローチは,問題の定式化,コードの実装,おより高速化のためのアルゴリズム改善という,3つのステップに分けることができる.大規模言語モデル(LLM)を使用すれば,上記「定式化」と「実装」をせずとも解を得られる可能性がある.本論文では,巡回セールスマン問題(TSP)のソルバーとして,LLMを使用した場合の性能を評価した結果について述べる.求解方法は,反復的に新しい解を生成する方法であるOPRO [Yang 2023]をベースとし,自然言語だけでなく,都市と経路を有向グラフで表現した画像もプロンプトとして利用した.最短経路長に対して,算出された経路長の比率である近似率を評価指標とした.Gemini-1.5-flashにより「att48」と呼ばれるTSPを解いた場合,近似率1.55の解が得られることが分かった.

  • 蓬田 綾香, 三谷 陽
    セッションID: 1F4-OS-40b-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    大規模言語モデル(LLM)の発展により,様々な自然言語処理タスクにおいて高い性能が達成され,適用範囲は日々広がっている.しかし,学習データに含まれていない知識への対応は不十分であり,精度低下やハルシネーションを引き起こす.この問題に対処するため,外部の知識リソースとして知識グラフ(KG)との連携が検討されている.KGの情報をすべてプロンプトに組み込むことは困難であるため,SPARQLなどの検索用クエリを用い,タスクに応じた必要な知識を抽出することが求められる.本研究では,LLMをエージェントとしてKGを探索させ,必要な知識にたどり着くまでの探索結果をSPARQLクエリに変換してText-to-SPARQLとして収集した.新規の質問に対し,類似する過去探索した質問に紐づくこれらのデータをfew-shot付与することで,質問を直接SPARQLに変換し,KGQAの効率化を試みた.JEMHopQAデータセットでWikidataの知識で回答可能な質問に対し評価を行い,zero-shotに対して回答精度が向上し,KGの探索で情報を抽出するより素早く回答できることを示した.

  • 牧野 寛也, 山口 喬弘, 堺 浩之
    セッションID: 1F4-OS-40b-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    本研究では,複数の参照画像間に共通あるいは相違する特徴を抽出し,それを別の画像に転移させる新しい画像生成手法 “Visual Concept Blending” を提案する.本手法は参照画像を複数用いることで転移させたい特徴をコントロールしながら,CLIP 埋め込み空間の活用により「形状変化」や「動き」などの高次の概念を転移することを可能にする.提案手法は既存の学習済みモデルをそのまま活用し,追加学習を必要としないシンプルでロバストなアプローチであり,アートやデザインの分野をはじめとする幅広い応用が期待される.

  • 小山 顕, 倉品 吏玖, 西脇 智哉, 橋本 勝文
    セッションID: 1F5-GS-10-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    鉄筋コンクリート構造とは、コンクリート内部に鉄筋を配置する主要な構造形式の1つである。この鉄筋コンクリート構造物に対する非破壊検査として、サブテラヘルツ波を用いた非破壊検査手法に関する研究が多く行われている。本論文では、当該技術に深層学習を適用することで、コンクリート内部に埋設した鋼板からコンクリート表面までの距離(かぶり厚さ)の推定を行い、当該技術の測定可能範囲の拡大を試みた。結果として、いずれのかぶり厚さでも平均して80%以上の再現率を示す結果となった。また、作成したモデルに対してSHAPを用いて解析を行った結果、かぶり厚さおよび測定に用いた周波数によって解析結果に差異が出る結果となった。

  • 内藤 孝雄, 武井 理美, 栗原 みゆき, 村上 麻里子, 三澤 成毅, 寺本 華奈江, 田部 陽子
    セッションID: 1F5-GS-10-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    本研究の目的は、臨床検査師が目視で行っていた微生物同定を、機械学習による自動推定システムで判定時間の短縮‧人手不足を解消することである。データセットとして寒天培地上で培養した10種類・418菌株の微生物を撮影した画像を基に、画像処理技術でほとんどを自動抽出したコロニー(10,048画像)を準備した。これをCNNの深層学習アーキテクチャである ResNetにおいて18層、50層、101層のモデルで検証用データを評価した。結果、微生物種の分類精度は ResNet-50 (50 層) モデルで 92.0% (69/75) に達し、経験の浅い臨床検査技師のパフォーマンスに近づいた。

  • コスロービアン ラズミックアルマン, 谷口 隆晴, 吉村 浩明, 松原 崇
    セッションID: 1F5-GS-10-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    深層学習は、支配方程式が未知の力学系のモデリングにおいて大きな成功を収めてきた。しかし、既存のモデルはシステムを一体的で不可分に扱う傾向があるため、連成系の高精度なモデル化が困難である。また、電気回路や油圧システムといった機械系以外の領域に適用できない。これらの制約に対処するため、ポート・ハミルトン形式とポアソン形式を統一するディラック構造に基づくPoisson-Dirac Neural Networks(PoDiNNs)を提案する。提案手法により、複数の領域にまたがる様々なシステムや、それらを構成する素子間の相互作用とそれによる退化を統一的に表現することが可能となる。実験の結果、提案手法は素子間の相互作用を適切に学習し,既存手法以上の長期予測性能を有することを示した。

  • 岡田 幸征, 渕本 壱真, 石川 文弥, 植野 真臣
    セッションID: 1F5-GS-10-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    適応型テストは,逐次的に推定した受検者の能力から情報量が最大となる問題を出題するテストである.これにより,従来型の試験よりも少ない問題数で高精度に測定できる.しかし,従来の適応型テストは,各問題への所要時間を考慮しておらず,所要時間の長い問題が出題されると試験時間が増加する.この問題を解決するため,所要時間を予測する確率的手法を用いた適応型テストが提案されてきた.しかし,近年では,確率的手法よりも深層学習手法の方が予測精度が高いことが知られている.そこで,本研究では,逐次的に推定した能力から最先端手法のMulti-Task DNNを用いて所要時間を予測する.この所要時間から,単位時間あたりに情報量が最大となる項目を出題する.さらに,本研究では,試験に制限時間がある状況を仮定し,各問題の予測所要時間の合計が制限時間内に収まり,単位時間あたりの情報量が最大化となる問題集合を整数計画法により求める.これにより,提案手法では,より単位時間あたりの情報量が高い問題を制限時間内に出題できるため,受検者の能力推定精度の向上が期待できる.提案手法の有効性は実データを用いたシミュレーションにより示した.

  • 佐久間 啓太, 竹村 慧, 松野 竜太, 廣川 暢一
    セッションID: 1F5-GS-10-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    実運用環境では、データの分布変化により機械学習モデルの性能が劣化することがある。この問題に対処するため、複数のモデルを動的な重みでアンサンブルする手法が提案されている。しかし、複数モデルの作成や再学習は高コストなため、学習済みモデルとそれを変調したモデルからなる変調モデルプールを用いる場合がある。このとき、従来手法では、単一の重みでアンサンブルを実施するため、特徴空間内の局所的な分布変化に対応できず、十分な運用性能を確保できない。そこで本研究では、局所的な変化に対応可能な動的アンサンブル手法 Two-Layer Conditional Dynamic Ensemble (TL-CDE)を提案する。TL-CDEは、第一層で多様な条件に基づき特徴空間を分割し、分割領域ごとの個別の重みでモデルをアンサンブルする。第二層では、入力特徴量が満たす条件に応じて、第一層のアンサンブル結果を統合して予測を行う。数値実験において、TL-CDEは、変調モデルプールを用いることで再学習を行わずとも高い運用性能を維持できることを示した。また、重みの更新履歴から分布変化の詳細が把握できることも確認した。

  • 橋本 慧海, 柳楽 浩平, 水本 武志, 白松 俊
    セッションID: 1H3-OS-8a-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    近年,多くの企業が人材の重要性を認識して人的資本に投資し,イノベーション創発を促すための組織活性化や組織内コミュニケーションの活性化を目指している.さらに,人的資本は2023年度から有価証券報告書上での開示が求められるなど定量化が要求されている.しかし,従来の定量化は男女賃金格差や管理職の女性比率など計測しやすい指標が中心で,人的資本に本質的な社内の会話に関する観点がなかった.これは,会話の定量化が困難であったからだと考えられる.そこで本研究では日常的に行われる会議に着目し,会議中の発話行動を用いた人的資本の可視化手法を提案する.具体的には,筆者らが開発している雑音環境下における会話可視化技術で会話を定量化し,会議における性別や役職等の属性ごとの発話量の差と,同席の有無による発話量の変化を定量化する.提案手法の有効性を検証するために,ある中小企業における週次ミーティングを対象に,性別・所属部署ごとに発話量を分析した.その結果,対象企業では男性の方が人数が多い一方で一人当たりの発話量の男女での偏りが少ない傾向と,営業チームが同席するときに開発チームの発話量が減る傾向が明らかになった.

  • 酒田 隼門, 植田 一博
    セッションID: 1H3-OS-8a-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    テクニカル分析は多くの投資家に使われている. その一つに、チャートの幾何学的特徴を用いるチャートパターン分析がある. パターンが生じる原理には幾つかの説明があるが, この研究では過去の様々な行動ファイナンス研究で触れられてきた自己成就的予言(self-fulfilling prophecy)に着目し, 多くの投資家がパターンの完成を期待した取引を行うことでパターンが作り出される, という仮説を新たに検証した. 代表的なチャートパターンであるヘッドアンドショルダーを対象とし, S&P500, BTC/USD, EUR/USDにおける分析を行った結果, (1)パターンの出現頻度が同様の価格分布から生成されたランダムウォークを一貫して上回ること, (2)多くの系列で, パターン形成前から出来高が増加傾向を示すことが確認された. いずれも仮説を支持しており, パターンの完成前に行われた取引が, パターンを作り出すよう値動きを誘導した可能性が示唆される. しかしこの検証だけでは, 出来高の変動と値動きの因果関係が明らかでない. これを解消するために, 今後は人工市場を用いたエージェントベースのアプローチを採用することが望ましい.

  • 小林 義正, 酒井 浩之, 高野 海斗
    セッションID: 1H3-OS-8a-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    各企業の意外性のある事業は,様々な意思決定の材料となり得る貴重な情報であるが,その検索が難しいことに課題がある.そこで本研究では,企業の事業内容文から一般には知られていない意外性のある事業を,深層学習モデルを活用した提案手法により推定することを目的とする.本手法では,有価証券報告書の事業内容文と企業の主力事業文との類似度に基づき順位付けを行うことで,意外性を推定するための学習データを自動生成する手法を提案する.そして,学習データを用いて主力事業か意外性のある事業かを推定する手法を複数提案し,評価実験を行うことで比較および有効な手法の検討を行う.具体的には,自動生成した学習データを用いてFine-tuningしたT5を用いた推定とCalm3を用いたFew Shot Learningによる推定をベースに,いくつかのフィルター機能などを組み合わせたいくつかの推定手法の比較により,意外性のある事業の推定において有効な手法を示す.

  • 平松 賢士, 伊藤 友貴
    セッションID: 1H3-OS-8a-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    企業価値評価,投融資の判断,ポートフォリオのリスク管理,事業推進時のパートナー選定,自社IR活動などの様々な金融実務の場において,企業間の類似性は分析の基礎となる重要情報である. ここで,「企業間類似度の算出」に関する有用なのがテキスト情報に対し BERT 等を活用することで獲得できる企業埋込表現である. このテキストデータをベースとする埋込表現は有効である一方,経済・金融分野においては株価や売上の推移やセグメント別売上等の数値データや株のや特定投資株式を始めとする株式保有情報等,企業間類似度を測る上で有用と考えられる数値データも多く存在し,これらの金融数値データとテキストデータを組み合わせることでより有用な「類似企業」を検索できることが期待される. そこで,本研究では,銘柄テキスト情報だけでなく,セグメント別売上や株価時系列データ,株式保有情報も活用した「テキスト情報」と「数値情報」をハイブリッドに活用した「類似企業」の検索手法を提案する.

  • LLM-Driven Sentiment Analysis of Japanese 10-K Reports
    中筋 萌, 岡田 克彦, 月岡 靖智, 山崎 高弘
    セッションID: 1H3-OS-8a-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    本稿は、有価証券報告書におけるリターン予測可能なセンチメントを大規模言語モデル(LLM)によって抽出する先行研究を発展させ、時価総額が大きい企業で構成されるTOPIX 100およびTOPIX 500に分析対象を絞っている。これらの銘柄は、投資家による注目度が高く、取引も活発であるため公開情報が効率的に価格に反映されていると考えられる。しかしながら、LLMによって抽出されたセンチメントは依然として将来リターンの予測力を持ち、センチメントに基づく投資戦略は東証一部上場全銘柄を対象とした場合よりも大きな異常リターンをもたらしている。これらの発見は、企業の開示情報に含まれる微細なシグナルを検出するうえでのLLMベースのアプローチの頑健性を示すとともに、高流動性銘柄においても利用可能な情報が完全には価格に反映されていない可能性を示している。自然言語処理技術の高度化が、効率的とされる株式市場のセグメントにおいても投資戦略の高度化に寄与し得ることが示唆されている。

  • 山本 健太, 早矢仕 晃章
    セッションID: 1H4-OS-8b-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    近年、分野横断的なデータ連携がますます一般的になり、データはイノベーションの重要な推進力となっています。その結果、データ取引市場に対する需要が高まっています。しかし、これらの市場は初期段階にとどまっており、不完全な規制枠組みや参加者の行動を規定する不明瞭なガイドラインが存在しています。さらに、多くのデータ取引市場には、低品質または利用が難しいデータがあふれており、その有効利用を妨げる要因となっています。本研究では、これらの市場におけるデータ提供者に焦点を当て、提供者の種類と、提供者自身の利益と市場全体の収益性および取引量を最大化できる戦略について調査しています。実験結果から、長期的な視点を持つデータ提供者は、個々の利益を上げながら、市場全体の収益性と取引活動を向上させることが明らかになりました。

  • 水田 孝信, 八木 勲
    セッションID: 1H4-OS-8b-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    同じ投資戦略をとる投資家が増えると利益の奪い合いとなり1人あたりの利益が減ると言われることがある.一方で,テクニカル分析を用いる投資家は同じパラメータを使いたがることがあり,他人と同じ移動平均を使った方が良い言う投資家も多い.これらは,同じ投資戦略を取る投資家が増えた方が利益が増えるのか減るのかでお互いに矛盾する主張であるが,どちらが正しいのかは検証されたことがない.そこで本研究では先行研究の人工市場モデルに,全く同じパラメータをもつファンダメンタル戦略またはテクニカル戦略の各追加エージェントを追加していったとき,利益が増えるかどうかを調べた.その結果,追加エージェントがファンダメンタル戦略の場合,市場価格の変動が小さくなり市場が安定化する一方,利益は低下した.追加エージェントがテクニカル戦略の場合,市場価格の変動は非常に大きくなり市場が不安定化する一方,利益は増加することが分かった.

  • 平野 正徳
    セッションID: 1H4-OS-8b-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    大規模言語モデル(LLM)の発展により、様々なタスクを人間の代わりに自動的に解くことが可能となってきている。 そこで、本研究では、人工市場シミュレーションのエージェントをLLMベースのエージェントに置き換えることにより、実際の取引行動を模したエージェントを作成し、実際の市場の挙動を再現できるか検証をする。 実験では、LLMエージェントとのノイズエージェントからなる人工市場を準備し、設定を変えて比較実験を行った。 複数のLLMのプロンプトを用意し、LLMエージェントの比率を変化させ、実験を行った。 実験の結果、LLMにのプロンプトによっては、実際の市場で観測できるStylized factsを再現できないことが確認できた。 一方で、特定の情報をプロンプトに追加することにより、実際の市場に近い挙動を再現できることも確認できた。

  • 高橋 友則, 水野 貴之
    セッションID: 1H4-OS-8b-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    金融市場におけるトレーダーの売買活動は注文板と呼ばれる場に集約され、注文間の付け合わせを通じて売り手と買い手の相互作用が行われる。注文板のモデル化はアルゴリズム取引戦略の構築などの実用的なニーズから重要性を増しており、近年では高頻度取引データを用いた生成モデルが従来のバックテストに代わるシミュレーション手法として注目されている。本研究では、トレーダーの注文流の系列をトークン系列へ変換し、Transformerモデルの一種であるGPTアーキテクチャと、状態空間モデルの一種であるMAMBAアーキテクチャをスクラッチから学習させた。これらのモデルが合成注文流を通して注文板を生成可能であることを示す。

  • 赤松 朋哉, 中川 慧
    セッションID: 1H4-OS-8b-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    ネットワーク構造を通じたプレイヤー間の関係性を把握することは,現代の社会・経済システムの理解において重要な役割を果たす.例えば株式保有ネットワークにおいては,各プレイヤーが他のプレイヤーに及ぼす影響力を定量的に評価することが支配関係や影響力の構造を分析する上で不可欠である.Shapley-Shubik投票力指数は投票力がプレイヤーに分配されたゲームにおける各プレイヤーの影響力を測る指標として広く知られているが,ネットワーク構造を明示的に考慮しておらず,プレイヤー間の関係性や影響力の伝播を十分に反映できていない点が課題として挙げられる.先行研究においては,Shapley-Shubik投票力指数をネットワークに拡張し,株式保有ネットワークを対象として,ある企業iから別の企業 j への支配力を表現するNetwork Power Index (NPI) が導入されている.本研究では,このNPIのアイデアおよび仕組みの,グラフ理論的な解釈・記述を与え,数学的立場からNPIを俯瞰することを試みる.

  • 高野 海斗, 山脇 大, 田村 光太郎, 中川 慧
    セッションID: 1H5-OS-8c-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    本研究では、推薦理由文から推定した取締役のスキル・マトリックスと企業の財務特性およびESGスコアとの関連を実証的に分析する。 近年、取締役会の機能強化を支える手段としてスキル・マトリックスが注目されており、その開示企業は増加傾向にある。 しかし、その作成は各企業に委ねられていることから客観性や標準化の欠如が課題となっている。 そこで、本研究では、まず最初に重要と考えられる役員のスキルを定義する。 そして、取締役推薦理由文とスキルセットが紐づいたデータセットを用いて学習したマルチラベル分類モデルを用いて、TOPIX100構成銘柄の企業を対象に、各社のスキル・マトリックス推定を行った。 推定したスキル・マトリックスの結果が妥当であるか判断するために、人手でスキル・マトリックスを確認し、その差の確認を行った. 最後に、TOPIX100企業のデータを用いて、これらの推定されたスキルマトリックスと企業の財務パフォーマンスおよびESGスコアとの関係を分析した。 分析の結果、財務、経営管理、国際的な経験を持つ取締役は、ROEやガバナンスのスコアと正の相関があることが示された。

  • 櫻井 慶悟, 小川 貴弘, 長谷山 美紀, 阿南 晏樹, 中川 慧
    セッションID: 1H5-OS-8c-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    本論文では,効用を考慮した行列分解に基づく株式推薦手法を提案する.従来の株式推薦手法は,協調フィルタリングと平均-分散最大化に基づき,投資家の嗜好およびリスク-リターンのバランスを考慮した株式推薦を実現している一方で,投資家のリスク-リターンに対する選好をポートフォリオに十分に反映することが困難であるという課題が存在する.さらに,平均-分散最大化の性能は,期待リターンなどの推定パラメータに大きく依存しているため,それらが不確実な場合には信頼性が低下する可能性が存在する.そこで,提案手法では,行列分解に基づく協調フィルタリング手法の一種であるWeighted Matrix Factorizationと任意の期待効用関数を用いた効用最大化基準により,投資家の嗜好に適合し,高い効用を与える株式の推薦を行う.このアプローチにより二次以降の高次モーメントや相関構造の非対称性を考慮可能となり,詳細に投資家の選好を推薦株式に反映可能である.実社会データを用いた実験により,提案手法が高い推薦性能,Shrpe Ratio,効用を達成する推薦を実現可能であることを確認する.

  • 真辺 幸喜, 中川 慧
    セッションID: 1H5-OS-8c-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    株価予測において,大量のファクターを同時に扱いそれらの非線形な関係を考慮できる深層マルチファクターモデルが提案され,応用が進んでいる.しかし,深層学習モデルは一般に出力結果の解釈が難しく,運用実務においては説明責任の観点から課題が残る.これに対し本研究では,解釈可能性を備えた深層学習モデルとして提案されたNeural Additive Models (NAM)に注目する. NAMは,各入力特徴量に対応する個別のサブネットワークを利用し,それらの出力を線形に結合して予測を行う構造を持つ.これにより,特定の特徴量と予測結果との関係の可視化,ひいては,モデルの解釈が比較的容易であるとされる.一方,サブネットワークの複雑性が高まるとやはり単純な線形モデルほどの解釈性は見込めない.本研究では,モデルが特定の特徴量の増減に対して一貫した挙動を示すための要件として符号制約,および,単調性制約(特徴量と出力の符号関係・単調関係の維持)に着目,これらを満たす正則化項をNAMに導入する手法を提案する.数値シミュレーションにより本研究の提案手法がNAMの解釈性を向上させることを確認した.

  • 加藤 真大, 井口 亮, 香西 史暁
    セッションID: 1H5-OS-8c-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    処置群と対照群の間の期待アウトカムの差として定義される平均処置効果(ATE:Average Treatment Effect)の推定は,因果推論における主たる課題の一つである.本研究では,処置群と,処置群と対照群のどちらへ割り当てられたのかが不明な未知群のみで構成されるデータセットが観測可能な設定において,セミパラメトリック効率なATEの推定量を開発する.この設定は,弱教師あり学習における正例データとラベルなしデータからの学習(PU学習)を因果推論に拡張したものであり,欠損データを含むATE推定の特別な事例と見なすことができる.最初に私たちは、本設定の元でセミパラメトリック効率下限を導出する.これは正則推定量の漸近分散の下限である.そして,この効率下限と一致する漸近分散を持つセミパラメトリック効率なATE推定量を提案する.我々の研究は,欠損データを用いた因果推論、および弱教師あり学習の分野に貢献するものである.

  • 坂本 充生, 陣内 佑, 森村 哲郎, 阿部 拳之, 蟻生 開人
    セッションID: 1L3-OS-34-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    大規模言語モデル (LLM) のアライメントは,モデルの出力を人間の選好に適合させるために不可欠である.しかし,高品質な選好データの収集は高コストで,LLMによるデータ合成が注目されている.既存研究の多くは英語中心で,非英語少データに対する合成手法はは明らかにされていない.本研究では,日本語のAnswer Carefullyデータセットを用い,自己学習 (self-improving learning) に基づく選好データの合成手法を比較した.実験の結果,CALM3を用いた自己合成手法は,報酬モデルを用いた合成手法と同等のアライメント効果を達成し,日本語少データ環境における有効性が示された.

  • 堀部 和也, 豊川 航
    セッションID: 1L3-OS-34-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    大規模言語モデルエージェントによる繰り返し寄付ゲームでの戦略進化アブストラクト:近年、大規模言語モデル(LLM)が社会に浸透しつつある。具体的には、LLMが人の行動に変容を引き起こし、行動変容した人間が生み出したデータでLLMが追加学習されるといった相互作用が生じ始めた。このような状況において、LLMの社会行動が社会に与える影響は無視できなくなりつつある。LLMの社会行動を調べるために、先行研究において、複数のLLMエージェントに寄付ゲームを行わせたところ、Claudeでは協力行動が進化し、GeminiとGPT4oでは進化しないことが示唆されている。本研究では、寄付ゲームでの、戦略多様性・協力行動の固定化プロセスを調べた。具体的には、戦略テキスト間類似度を指標とした多様性評価、戦略行動の時系列的変化の評価を行った。その結果、Claudeの戦略群は世代を重ねるほど協力戦略へ収束し、多様性が低下する一方、Geminiの戦略群では多様性が維持される傾向が見られた。以上の知見は、人間とLLMエージェントのハイブリッド社会における協力形成の理解やルール設計の指針になることが期待される。

  • 同期によるナッシュ均衡からの発散現象
    藤本 悠雅, 蟻生 開人, 阿部 拳之
    セッションID: 1L3-OS-34-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    ゼロ和ゲーム下でのマルチエージェント学習では、複数の個人が競争的に戦略を学習する状況が想定される。そこでは、全個人にとって利得の改善が不可能な戦略の組、すなわちナッシュ均衡を中心に戦略がサイクルを描くふるまいが一般に見られる。ゲームのルールが周期的に変化(periodic gameと呼ばれる)する場合、ナッシュ均衡は一般に時間変化する。このときに複数の個人が学習するとどのようなふるまいが起きるかは未解明な興味深い問題である。面白いことに、我々はそのふるまいがゲームが時間変化する速さと戦略が循環する速さの関係に大きく依存することを発見した。これら2つの速さが同期すると個人の戦略はナッシュ均衡から発散し、その時間平均も収束しない。そうでない場合、個人の戦略は複雑なサイクルを描くが、その時間平均は収束する。力学系解析のために導入した仮定の下で、このふるまいが一般に起こることを理論的に証明した。さらに、同じふるまいが周期的な2人ゼロ和ゲームにおいても見られることを実験によって確認した。本研究は周期的なゲームにおいて発生する同期による発散現象を新しく発見し、そこでの学習に広く応用できる知見を得た。

  • 宮岡 佑弥, 井上 正樹
    セッションID: 1L3-OS-34-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    本研究ではアライメントのための新しい手法を提案する.本手法では,既存の評価モデルを用いてアライメントフィルタを設計し,LLMのテキスト生成過程に組み込むことで,所望の目的に沿ったテキスト生成を可能にする. アライメントに関する先行研究では,強化学習などのLLMを再学習するアプローチが主流である.それに対し,本手法ではアライメントに関わる機構が外付けになっており,LLM自体を再学習することはない.本手法の強みは,任意の評価モデルをアライメントフィルタの設計に使用できること,同じアライメントフィルタを任意のLLMに適用できることである.その他,アライメントに関わる機構とLLMが分離されていることから,説明可能性の向上にも寄与している. 実験では、テキスト感情を分析するBERTモデルからアライメントフィルタを設計する.これをLlama 3に組み込み,常に肯定的なテキストが生成されることを可能とした.

  • 廣瀬 百葉, 谷口 忠大
    セッションID: 1L3-OS-34-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
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    大規模言語モデル(LLM)の人間の意思決定支援に関する研究が進む一方で, LLMと人間の相互作用を通じた意思決定の理論的枠組みは十分に検討されていない. 本研究では, LLMと人間が知識を統合し, 意思決定分布を動的に変化・収束させる過程を「共創的意思決定」と定義し, LLMの選択肢生成と人間の選好に基づく評価を繰り返す意思決定プロセスをSampling-Importance-Resampling(SIR)アルゴリズムとして見立て, モデル化する. さらに, 提案モデルの妥当性を検証するために, 2つの異なる意思決定タスクにおいて, 2エージェント間の知識統合の進行や意思決定の収束特性への影響を定量的に分析し, 提案モデルが意思決定の収束を適切に予測できるかを検証した. 本研究は, 分散的ベイズ推論に基づく共創的意思決定プロセスの理論モデルを提案し, 公正で民主的な意思決定の枠組みを提供することを目指す.

  • 村田 英理奈, 鳥海 不二夫
    セッションID: 1L4-GS-4-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,「令和の米騒動」がXやニュースを通じてどのように拡散し,収束していったのかを,感情の変化に着目して明らかにすることを目的とする。情報拡散と収束の特徴を分析するために,投稿数の推移,感情の推移,極性の強さの推移の3つの指標を用いて分析した。Xは即時性の高い反応を示しており,恐れと期待が最も早い段階で交差することが確認された。また,ニュースは記事数のピークに先立って極性が一時的に大幅に増加し,その後減少する傾向が見られた。これらの結果は,異なるメディアが情報伝達と感情表現において独自のタイミングを持つことを示唆している。

  • 藤後 英哲, 渡邉 一生
    セッションID: 1L4-GS-4-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    推薦システムは,ユーザの嗜好に応じたアイテムを提案することで,さまざまな分野において重要な役割を果たしている.近年では,精度と多様性,新規性のバランスをとる多目的推薦が注目されているが,特にコールドスタートユーザについて適用することが困難である.本研究では,コールドスタートユーザに多目的推薦を適用させるために,類似した既存ユーザの嗜好を活用するアプローチを目指している.その一環として,SVD,LightGCN,NCFについて,多目的推薦の指標である多様性と新規性をどの程度捉えることができているのかを調査した.その結果,SVDでは高次元空間において課題が見られたものの,SVDとLightGCNでは多様性と新規性を捉えることができている傾向を確認した.一方,NCFは一貫して,埋め込み表現において多様性と新規性を捉えることができなかった.これらの知見は,潜在空間における埋め込みが類似しているユーザは,多様性と新規性の値も類似しているという仮説を支持するものであり,コールドスタートユーザに対しても多目的推薦を行える可能性が示唆された.

  • 堤 優太, 村上 晴美
    セッションID: 1L4-GS-4-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    過去の出来事を思い出すことは自己理解や行動計画に重要である.しかし,過去の出来事を想起することは容易ではない.一方で,スマートフォンやタブレット等の普及により,日常生活においてSNSが広く利用されるようになっている.本研究の目的は,SNSへの投稿から有用な情報を取得して過去の出来事の想起を支援することである.本研究では,過去の出来事の想起を支援するために,Xの投稿のログを過去の出来事の想起に役立つ順に並び替える手法を提案する.提案手法は,投稿テキストの感情分析や投稿内容,他者の反応から,過去の出来事の想起に役立つ重要度スコアを計算する.評価実験を行い,提案手法の一定の有効性を確認した.

  • 奥 健太
    セッションID: 1L4-GS-4-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    推薦システムは評価履歴から学習されたユーザプロファイルに類似するアイテムを提示する.しかしながら,ユーザの嗜好も多様であり,評価履歴には多様な種別のアイテムが混在している.評価履歴全体から学習されたユーザプロファイルでは,ユーザプロファイルのどの部分が推薦に寄与しているのかがユーザにとって把握しにくい.そこで,本研究では,新たな推薦インタフェースとして空間型ユーザプロファイルを提案する.空間型ユーザプロファイルは,2次元のキャンバスで表現され,ユーザはそのキャンバス上にアイテムを配置することで,アイテムを直感的に整理することができる.ユーザにとって関連のあるアイテム同士を空間上に近くに集めることでコレクションを形成する.コレクションが形成されると,そのコレクションの特徴を自動的に抽出し,その特徴に関連するアイテムがそのコレクション内にリアルタイムに提示される.本発表では,試作した推薦インタフェースの挙動を分析し,空間型ユーザプロファイルに基づく新たな研究課題の方向性について議論する.

  • 山崎 綾一郎, 武石 悠希, 萩田 碧偉, 山岸 祐己, 高林 貴仁
    セッションID: 1L4-GS-4-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    現行のレビューサイトでは,レビュー点数の平均値を主な評価指標としており,アイテムやサービスの満足度として位置付けている.しかし,「ユーザごとの評価基準の差異」や「評価の変化の読み取りづらさ」が懸念される.また昨今では,個人情報を活用したレコメンド等が導入されつつあるが,GDPR等の法規制に触れる可能性があるため,個人情報を使わない評価指標が必要になると考える. レビュー点数を客観的に変換する方法として,IRTの段階反応モデルであるGRMが挙げられる.しかし,ユーザの評価基準を正確に算出するには,IRT の改良モデルであっても最低 300 のサンプルサイズを必要とし,全てのデータがその要件を満たすとは考えにくい. 本研究では,ユーザごとのレビュー点数確率分布の累積相対度数に基づく情報量を利用し,個人情報不使用の評価指標開発を試みた.提案手法はサンプルサイズの大小や点数の偏りによって,自動でユーザごとの評価基準を設定することが可能である.多くの人にとってはパラメータの設定がボトルネックになると考えられるため,その設定が不要である提案手法は汎用的かつ初学者でも扱いやすい指標であると考える.

  • 南雲 亮佑, 井岡 佑允, 野田 龍志, 易 銘, 嶺岸 瞳, 三浦 康史
    セッションID: 1L5-OS-15-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    電子部品を製造・販売する工場における製造・販売・在庫の計画策定の業務に機械学習技術を適用することで在庫の適正化を実現する.本稿では在庫を構成する要素のうち,販売計画の不確実性に対応するための安全在庫に着目する.従来の不確実性の推定においては状態空間モデルが使われてきたが,このモデルは不確実性を左右対称に推定すること,予測の残差データを完全には活用しないこと,という欠点が存在した.これらの欠点を克服するために我々は Sequential Predictive Conformal Inference (SPCI) を採用する.事業部の実データに対して本技術を適用することで,欠品リスクを増やさずに在庫数を削減する計画を立案できることを示した.

  • 松本 拓也, 天野 博史
    セッションID: 1L5-OS-15-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    製造現場では、自動運転維持のため人の作業が必要とされるケースが多く存在し、製造設備が異常などの影響で停止した際の復旧作業は人手で行われている場合が多い。この場合、事前に各製造設備を担当する作業者を割り当てておき、製造設備が停止した際はその担当作業者が復旧作業を行うという運用がされることがある。しかし、複数存在する製造設備に対し担当する作業者を割り当てるパターン数は膨大な数存在しており、その中から生産性を最大化する割当を作成することは、人手では困難である。そこで本研究では、設備割当の決定を最適化問題として定式化し、深層生成モデルを用いて最適な割当を作成する手法を提案する。割当に対して得られる生産性を表現する目的関数をエネルギー関数としたボルツマン分布からのサンプリングを深層生成モデルで行うことにより、最適に近い解を生成させる手法である。我々は、離散変数に対する拡散過程に基づく拡散モデルを生成モデルとして採用し、学習データを用いずにこれを学習させ、従来の手法で得られる解に近い近似解を生成する学習済みモデルの獲得に成功した。

  • 堺 貴彦, 平岡 あおい, 山口 知彦, 笹嶋 宗彦
    セッションID: 1L5-OS-15-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    筆者らの研究チームでは協働ロボットの普及を目標とし,機能分解木を用いた非専門家向け電子マニュアルについて研究を行っている.溶接を行う協働ロボットを題材とした先行研究では,非専門家向け電子マニュアルの作成方法論が示され,その有用性が確認された.一方で,マニュアルを作るための機能分解木構築方法論も必要であることが判明した. そこで本論文では,機能分解木の初学者が現場作業などの電子マニュアルの作成に必要な機能分解木の知識を習得することを目的として,機能分解木作成の初学者にあたる人が初めて作成した機能分解木を対象として観察と考察を行った.この観察から,初学者が陥りがちな様々な問題点が明らかとなった.これらの問題点を踏まえ,初学者に向けた機能分解木構築方法についての検討を行った.例えば,フローチャートのように,作業を木構造の上から下方向へと達成するように記述してしまうという問題点が確認された.この問題点から,作業は左から右へと達成していくことでその上位の作業が達成されるように記述をする,という内容を機能分解木構築方法の一つとして示した.

  • 島村 佳周, 飯田 都楓, 久保 里紗, 笹嶋 宗彦
    セッションID: 1L5-OS-15-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    自動車や時計などの機能を発揮する人工物は,使用するにつれて故障が発生する.そのため人工物の設計者は,対象となる部品が故障した際における他の部品への影響や,その人工物全体への影響を推論する必要がある. 筆者らは,人工物の機能と故障についてのモデルから,対象に起こりうる故障を推論する故障推論について研究している.先行研究では自動車のパワートレイン部についてモデル構築を行い,故障推論の有効性を確認した. 本研究では故障推論を自動車の灯火装置に適用し,モデル化と推論方式の定式化を進める.具体的には,自動車の灯火装置を例として,機能分解木とオントロジーを用いて構築した知識モデルの作成を行い,先行研究との比較を行うことで,故障推論に必要な概念定義の仕方に関する分析を行う. 本論文では,オントロジーを用いた知識モデルを作成し,分析した結果,故障推論に関するオントロジーを構築する際に必要な概念定義や,各部品で起こりうる不具合に関する概念定義の仕方などの知見が得られたことを示す.

  • 内平 直志, 伊集院 幸輝, 西村 拓一, 笹嶋 宗彦
    セッションID: 1L5-OS-15-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    本発表では、製造、医療、介護、農業、検査などの分野で熟練作業者が持つ形式的、潜在的、暗黙的現場知識の抽出、共有、活用の重要性と困難さに焦点を当てる。生成AIの登場により、文書化できる形式知のアクセスが容易になったが、AIが直接処理できない潜在的、暗黙的な現場知識の扱いには課題が残っている。その課題を解決するために「デジタルナレッジツイン」のコンセプトを説明する。本発表では、現場知識を音声、写真、センサーデータを統合して収集し、サイバー空間で構造化された知識と結合し、ワークショップを通じて現場のメンバーで知識を共有し、活用する。本発表ではコンセプトの提案とともに開発すべき技術項目について議論する。

  • 川原 圭博, 藤本 翔一, GILLINGHAM Matthew, 藤原 未雪, HAUTASAARI Ari
    セッションID: 1M3-OS-47a-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    不用品のリユースを促進するフリマアプリは、個人が不要な品を売却し、利用可能な商品や希少価値のある商品を購入できる市場を提供する。一方、従来のECサイトと異なり、売り手と買い手がともに個人が主体となるフリマアプリは、プラットフォームのサポート体制が大きく異なる。本稿では、文脈理解、自然言語処理、感情分析に優れる大規模言語モデルなどの最新AI技術が、商品説明の自動生成や交渉戦略の提案、効果的なコミュニケーション支援を実現し、取引時の不安軽減に寄与する可能性を検証する。さらに、メルカリと東京大学の共同プロジェクト「価値交換工学」における事例として、交渉支援のためのコミュニケーションスタイル提示と、音声入力に基づく感情的覚醒を視覚化する「EmoBalloon」の開発を紹介する。

  • 小泉 直子, 八角 潤一, 薮 紘明, 後藤 誠, 後藤田 達哉, 田中 和哉
    セッションID: 1M3-OS-47a-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、医療情報コンテンツの制作における人間中心のAIエコシステムの可能性を探求することを目的としている。現在、医療コミュニケーションには多様なステークホルダーが関わるが、規制遵守や品質保証に多くの時間が費やされるため、メディカルライターが価値創造に集中できる機会が減少している。この問題に対処するために、ルールベースの人工知能(AI)と大規模言語モデル(LLM)を採用した文書チェック・提案システムを開発した。その結果、PDFやWord形式の文書を整理し、各文書を意味、単位ごとに効率的に確認できるシステムが構築された。さらに、メディカルライターの暗黙知を統合した独自ルールを組み込むことで、リスク評価を効率的に実施する機能も備えている。本研究では、「AIはどのように効率性を超えて、メディカルライターの高度な能力開発を促進できるか」という問いを提起することで、人間中心のAIエコシステムを導入することの重要性を検証している。

  • 宮井 紫帆, 土田 修平, 益子 宗
    セッションID: 1M3-OS-47a-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    パフォーマンスを競うスポーツであるチアリーディングにおいて、シンクロ性は審査の重要な指標であり、動きを揃えるためには誰がどこでずれているのかを理解する必要がある。その手段として動画の視聴が広く利用されているが、ずれの発見までに時間がかかり、見落としの可能性もある。そこで練習動画内で選手の動きがずれている場面を検出し、動画上に反映させることでずれの発見の効率化を図る。動画の中の選手の姿勢を推定することで動きを定量化する。腕の動きからずれを判断するため、右肩、右手首、右腰の3点のキーポイントを用いて右脇の角度を計算し、すべての選手の平均値と中央値、それぞれを基準とし、閾値を30度、60度、90度と変化させた。また閾値を超えた選手と、そうでない選手の人物領域を描写する色を分けることにより、可視化を行った。この6パターンの動画に対してアンケートを行い、最適な指標の評価を行った。結果、ずれの発見に一定の効果はあるが最適な基準値を一概に決定することは難しいことがわかった。このことから、チアリーディングの動きのずれを発見することは可能であるが、精度の向上が課題として残った。

  • 中澤 満, ローハス メナンヅロ, 鳥見 晃平, 青木 義満
    セッションID: 1M3-OS-47a-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    ゴルファーの多くは自身のスイングスキルに課題を感じながらも,レッスンではなく独学でスキル改善に取り組んでいると言われている.ただ,独学によるスキル改善は,誤った技術やフォームを習得してしまい,それが悪い癖として定着してしまう可能性がある.そこで我々は,独学よりも確実でありレッスンよりも手軽なスイング診断の実現を目指し,ゴルフ知見者のノウハウとコンピュータビジョン技術を融合させたスイング診断システムを構築した.本機能は2024年11月にスマートフォンアプリケーションとして公開され,現在ユーザからのフィードバックに基づきさらなるユーザ体験の向上を目指して改良を検討している.

  • 岩井 皓暉, 熊谷 雄介, 馬場 雪乃
    セッションID: 1M3-OS-47a-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    大規模言語モデル(LLM)は指示文に応じて未知のタスクに高い精度を発揮したり,その振る舞いを柔軟に変えるという性質を持つ.この性質を利用し,LLM に仮想的な人物や性格を付与し,そのように振る舞わせる取り組みがある.その際,LLM の性能を意図的に制限できるならば,構築した仮想的な人物が確からしくなるだろう(例えば,幼稚園児が積分の計算ができないようにするなど).本研究ではそのような LLM の意図的な性能低下に取り組む.日本語ベンチマークを用いた実験の結果,指示文のみでは LLM の下流タスクにおける性能の低下が困難であることを報告する.また,性能低下の計測に必要なベンチマークについても検討する.

  • 大社 綾乃, 楊 明哲, 馬場 雪乃
    セッションID: 1M4-OS-47b-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    AIによる意思決定支援システムにおいて,説明はユーザがシステムの提案を評価するために重要な情報である.自然言語による説明は,大規模言語モデルの登場により,その表現方法を容易に調整できるようになった.しかしながら,説明の表現が人間の意思決定に及ぼす影響については十分に解明されていない.そこで本研究では,フォーマルやユーモラスなどといった説明のトーンが意思決定にどのような影響を及ぼすかを,AIの役割およびユーザ属性の観点で調査する.我々は,3つのAIの役割(アシスタント,セカンドオピニオン,専門家)に基づくシナリオを対象にユーザ実験を実施した.その結果,セカンドオピニオンのシナリオでは,ユーザ属性に関係なく説明のトーンが意思決定に有意な影響を及ぼすことが明らかになった.一方でアシスタントおよび専門家のシナリオでは,トーンの影響はユーザ属性によって異なることがわかった.高齢のユーザはトーンの影響を受けやすく,外向性が高いユーザは認知と意思決定に不一致が生じる傾向が示唆された.本研究は,AIシステムにおける効果的な説明表現の設計に向けた知見を提供する.

  • 淺原 彰規, 津田 香林, 刑部 好弘, 森田 秀和, 仲 強
    セッションID: 1M4-OS-47b-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    本発表では大規模言語モデル(LLM)を用い人の新発想を支援するシステムについて報告する.LLMを用いたチャットボットはアイディアを効率的に考案することにも用いられているが,例えば企業における他社差別化の検討などでは強い独自性が求められ,LLMにアイディア文を生成させるようにしても,誰が使っても同じ結果が得られることとなり,独自性が不足してしまう.そこで,本システムではHuman-in-the-loop的な方法で独自性の高い発想を作るアプローチをとる.本システムは,分野依存性を抑えた類似検索にもとづき,ユーザに着想のきっかけとなる単語を提示する.ユーザが独自の判断からアイディアを飛躍させるための単語を選択すると,本システムはそれを元にした入力をLLMに与えて新たなアイディアの文案を生成する.これにより,ユーザ独自の着想を取り入れつつもユーザ自身の作業負荷を抑えて新発想を行うことができる.本発表では特に本方式にもとづく発想文案の質のユーザ評価の結果について述べるとともに,本方式を用いた発想の発散と収束を支援するシステム実装の有効性について議論する.

  • 筒井 律稀, 小菅 雷太朗, 秋山 英三, 山本 仁志, 荒牧 大樹, 伊藤 千輝, 栗原 聡
    セッションID: 1M4-OS-47b-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    「人と共生するAI」が世の中で求められている現在、人とロボットのインタラクションの研究は重要な研究対象となっている。特に集団間でコミュニケーションの分断が生じるような環境において、ロボットの適切な介入により集団間のコミュニケーションを円滑化することはAIとの共生の先鞭となる事例といえる。そこで本研究では、集団内での個人の発言量・発言内容の情報を基に、自律走行型ロボットが参加者に適切な集団間移動提案を行うことで分断された集団間のコミュニケーション円滑化を目指す。また、LLMを介して生成される移動提案の声掛けの仕方による比較もした。結果、適切な移動提案を行うロボットの存在によって、人の移動が行われるだけでなく、各参加者が会話から取り残されることなく意見交換が行われ、ポジティブな感情を感じさせる事が分かった。

  • 窪田 大介, 岩本 拓也, 三好 遼, 岡藤 勇希, 益子 宗
    セッションID: 1M4-OS-47b-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    商品を売るという基本的な商業目的を達成するためには、顧客がストアでの買い物を快適に感じることが重要であると考えられる。快適さを提供することは、顧客の購買意欲を高め、結果的に売上向上につながると考えられる。 天井が高くなるとユーザーに良い影響を与えられると予測されるが、実際に天井の高さを変更することは難しい。 その為MRを用いて疑似的に天井の高さを認識させることでで、実際に天井の高さを変更した時と同等の効果があるか検証した。本研究ではHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使用する。予備実験では、「通常の天井」「単色:青の天井」「青空の天井」の3種類を比較し、「青空の天井」が最も開放感や快適性を高めることが示唆された。一方、「単色:青の天井」は不快感や圧迫感を与える傾向があった。本大学の生協での追加実験では、「青空の天井」が天井への注目度を高めるだけでなく、購買行動にもポジティブな影響を与える可能性が確認された。逆に「単色:青の天井」は食欲を減少させるなど、色彩が購買行動に影響を与える可能性が示唆された。

  • Subrata GHOSH
    セッションID: 1M4-OS-47b-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    The rise of financial technologies has transformed access to financial services, introducing diverse products such as microloans, personal loans, and insurance. While this progress enhances financial inclusion, it also presents a significant challenge: accurately assessing credit risk for individuals with limited credit histories and businesses managing complex data. To address this issue, we propose a novel transfer learning framework for credit risk prediction using minimal data. Our approach involves converting sparse tabular customer data into image format and fine-tuning pre-trained image classification models, including VGG-16, ResNet-50, and GoogleNet. Additionally, we explore training these models from scratch on source domain data, followed by fine-tuning with target domain data. Rigorous testing on public and specialized datasets demonstrates the robustness of our method in handling data scarcity. Our framework consistently outperforms benchmark transfer learning algorithms in prediction accuracy, showcasing its potential to bridge the gap in financial risk assessment and promote broader financial inclusion. This study highlights the innovative application of transfer learning in addressing critical challenges in the financial sector, offering a scalable and effective solution for credit risk evaluation in data-constrained environments.

  • 川田 琢磨, 奥野 圭亮, 小野澤 峻, 田中 悠祐, 稲葉 弘明, 大越 貫, 澤田 悠太, 石川 隆一, HARANG Romain, ...
    セッションID: 1M5-GS-10-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    CM好感度が消費者の購買行動に与える影響を、パーチェスファネルを用いて定量的に分析した。ビデオリサーチ社「クリエイティブカルテ」のCM調査データ(3,387本、有効回答数約180万件)に対しパス解析を実施し、CM好感度および説得力がファネル各段階(認知・興味関心・購買意向)に与える影響を検証した。結果、CM好感度の購買意向への総合効果は0.701と極めて高いことが示された。また、視聴者の自由回答を対象に、大規模言語モデルや主成分分析等を用いたテキストマイニングを行い、視覚的な魅力など「直感的な魅力」を高める表現が重要であること、および「表現の不足や不備」により効果が十分に発揮されない可能性が示唆された。本研究は、CM好感度が消費者の購買行動に与える影響を実証的に示すものである。

  • 松下 亮祐, 伊藤 孝太朗, 道下 良司
    セッションID: 1M5-GS-10-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/01
    会議録・要旨集 フリー

    小売業者にとって消費者の次回購買商品の予測は重要なタスクである。多くのアルゴリズムが開発されているなか、大規模言語モデル (LLM) の個人化による方法がゼロショット予測ができることから大きな注目を集めている。 本論文では、LLMに基づく次回購買予測を食料品の購買データに適用する。既存研究で使われているデータセットと比較し、食料品購買データではリピート購入の頻度が高く、かつ、商品名が商品内容をよく説明するものとなっている。我々は数値実験による検証結果から、LLMに基づく手法がこれらの性質をうまく利用できること、つまり、購買頻度の高い商品に高い予測スコアが付与されること、および、購買履歴内の商品と類似した商品が商品名から識別されることを示す。一方、我々が検証した予測手法では、購買履歴における lost in the middle 現象のためにリーセンシーを捉えることができないこと、および、商品の人気度を適切に予測に反映できないことが確認された。これらの原因により、LLMに基づく手法での予測精度は既存の機械学習による手法を下回っている。

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